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100年経過した都市計画法の課題を検討

 (公社)日本不動産学会は7日、シンポジウム「都市計画と不動産市場の対立と調和を探る ~都市計画法法制100年を記念して~」をすまい・るホール(東京都文京区)で開催した。

 都市計画制度は、国や自治体が設ける規制であり、市場動向に即したものではない。しかしその性質上、経済発展や都市への人口・機能の集積、少子高齢化の進展、環境への配慮といった現代の市場動向との調和が求められる。こうした認識をもとに、同シンポジウムでは、日本の将来動向予測、大都市、地方など地域ごとの課題を踏まえ、都市計画と不動産市場の関係性を検討した。

 横浜市都市計画課長の大友直樹氏は、「自治体都市計画行政の意義と限界」をテーマに、同市での都市計画行政の実態を報告。都市計画法に上乗せして独自の制限を設け開発をコントロールしていたが、人口減少やインフラの老朽化、財政のひっ迫等新たな都市問題が顕在化し、コントロールに限界が生じてきたと解説。現在は、地域課題解決に向け事業者や大学等との連携を強化するなど、民間との協力体制を強める方針を進めているとした。

 森ビル(株)常務執行役員の河野 雄一郎氏は、同社が手掛けた「六本木ヒルズ」の開発を振り返り、都市計画と事業者の相互関係について解説。「港区の都市計画の意向を汲んで開発を進めたが、同計画は行政のみの力では遂行できなかったはず。ならば、もう少し事業主体が融通を効かせられるようにしてほしいと思うこ ともあった。ただ、道路整備など民間だけでは成しえないプログラムを開発に盛り込めた点は事業者としても大きなメリットだった」などと話した。

 政策研究大学院大学特別教授の福井秀夫氏は、都市計画の機能と限界をテーマに講演。「100年経過した都市計画法や、それに則った規制に基づく開発では、土地利用の効率化を図ることは難しい」と、都市計画による開発規制が陳腐化している点を指摘した。


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