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「安心して高齢者に貸せる社会に」/HEAD研

会場には約150人の聴講者が集まった

 (一社)HEAD研究会不動産マネジメントTF(タスクフォース)は21日、明治記念館(東京都港区)にて「賃貸業界における高齢者問題を考えるシンポジウム」を開催。約150人が集まった。

 シンポジウムでは、1月9日に書籍「老後に住める家がない!~明日は我が身の“漂流老人”問題」(ポプラ社)を上梓した司法書士の太田垣 章子氏(章司法書士事務所代表)が講演。同氏はこれまでに携わってきた約2,300件におよぶ賃貸住宅トラブルの現場のエピソードを交えながら、現在の高齢者賃貸住宅市場の課題について語った。「賃貸住宅に住みたい高齢者と、空室に悩んでいるのに高齢者を入居させることで発生し得る孤独死やゴミ屋敷化といったトラブルを嫌忌する家主というギャップがある」とした上で、さまざまな制度面での問題を指摘。「賃借人が死亡すると、賃貸借契約が相続されてしまうことが大きな課題。個人情報保護法が壁になり相続人が見つかりにくい。対策として終身賃貸借契約が取り上げられることも多いが、これは『知事による認可』が必要で使いづらい。任意に選択できるように制度改正してもらいたい」(同氏)。

 また、現在の司法の考え方が賃借人保護に偏りすぎ、長期家賃滞納による強制執行が、高齢者の場合実施されないケースが多いことも弊害と指摘。「きちんと強制執行がなされなければ、家主はより高齢者入居に慎重な姿勢になる。強制執行後の受け皿を用意することで、強制執行がしっかり行なわれることが大切」(同氏)。最後に、「制度整備を進めることで、家主や管理会社が高齢者に安心して住宅を貸せる社会になってほしい」と締めくくった。

 その後、太田垣氏と、ベルデホーム(株)(埼玉県久喜市)で賃貸管理を担当する熊切伸英氏と、幅広い年代を受け入れる「高齢者向“き”アパート」の普及活動を行なっている不動産オーナー・赤尾宣幸氏が鼎談。熊切氏は管理会社の視点から、赤尾氏は不動産オーナーの視点から高齢者対策について語った。介護サービス事業者の活用による家主・管理会社の負担軽減や、多世代居住型の賃貸住宅の必要性、センサーによる見守りなど、多岐に渡るテーマで意見交換した。


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