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民法改正、紛争防止には「取引経過の記録」が重要

セミナーの模様

 (一財)不動産適正取引推進機構は20日、すまい・るホール(東京都文京区)で民法改正に関するセミナーを開催。岡本正治法律事務所の弁護士・岡本正治氏と宇仁美咲氏が「民法改正も踏まえた媒介契約のポイント-媒介契約に関する紛争と実務上の問題点-」をテーマに講演した。

 両氏は、近年の不動産媒介契約をめぐる苦情・紛争事例を紹介しつつ、2020年4月1日施行の改正民法が媒介業務にどのような影響を及ぼし、媒介業者はどのような点に留意すべきかを解説した。

 特に、瑕疵担保責任から契約不適合責任へと概念が変わることで、注意すべき点について重点的に説明。買い主が請求できる内容として、「追完請求(修補、代替物の引き渡し)」「代金減額請求」「損害賠償請求」「解除」の4つを挙げ、条文に沿って解説した。権利行使の期間制限については、「民法改正前は、買い主が損害賠償権を保存するためには、事実を知ってから1年以内に、売り主に対して具体的な瑕疵の内容など示し、担保責任を問う意思を明確に告げる必要があった。改正民法では、契約不適合を理由とする権利行使は1年以内に“通知”すれば足りることになった」(宇仁氏)。

 いわゆる商人間売買など、商法、民法に複数の適用条文があるケースについては、「適用排除の合意をしない限り、改正後も引き続き商法526条が適用される。しかし、過去には民法の規定が優先された判例もあるため、留意は必要」(宇仁氏)とした。

 同氏はまた、「相手がどういった不動産を購入しようとしていたのか、その土地または建物をどのように活用しようとしていたのか、などを契約書に事細かに記録することが、契約不適合を問われるリスクを回避する」と述べた。また岡本氏は「民事の事実認定は、書面の証拠が重視される。最近はメールでのやり取りが多い。お客さまに誤解を与えるような表現のメールは避け、押さえるポイントはきっちりと明記し、取引経過で過失がないように注意することが重要」などと指摘した。


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