国土交通省が18日に発表した「令和2年地価公示」について、業界団体・企業のトップから以下のようなコメントが発表された(以下、順不同)。
(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏
(公社)全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏
(一社)不動産流通経営協会 理事長 山代裕彦氏
(一社)不動産協会 理事長 菰田正信氏
三菱地所(株) 執行役社長 吉田淳一氏
東急不動産(株) 代表取締役社長 大隈郁仁氏
野村不動産(株) 代表取締役社長 宮嶋誠一氏
東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 野村 均氏
森トラスト(株)代表取締役社長 伊達 美和子氏
令和2年の全国の地価は、全国の全用途平均が5年連続上昇となった。用途別では住宅地が3年連続、商業地は5年連続と上昇基調を強めた。三大都市圏や地方四市の堅調な上昇基調に加えて、地方圏の全用途平均・商業地が28年ぶりに上昇となるなど全国的な回復傾向の広がりは歓迎したい。
併せて、国交省の地価LOOKレポートにおいても全国主要都市の地価の上昇基調は緩やかに継続している。本会が令和2年度税制改正で強く要望して実現した「低未利用地の適切な利用管理促進のための特別措置」の活用により、今後も地方圏の一層の回復に期待したい。
新型コロナウィルスの日本国内の感染拡大により、人、物などの移動が滞り経済の先行きに不透明感が増している。一部では住宅部材・設備品の供給の遅れなどにより、住宅・不動産業への影響も出始めている。感染拡大防止策や医療体制の強化のほか、一層の資金繰り支援、減税や機動的な財政出動など政府の総合的な経済対策に期待したい。
本会としては、傘下会員への影響を注視するとともに適宜必要な対策の要望を行っていく。
このたび発表された全国の地価動向を見ると、全国平均で全用途平均が5年連続の上昇、住宅地も3年連続の上昇となるなど各圏域においても着実な上昇基調が認められる。
殊に、東京オリンピック・パラリンピックの開催を目前に控えた東京圏では、これまでのインバウンド需要やインフラ整備、再開発の進展に伴う繁華性の向上等を基に地価は上昇基調を強めている。
全国的に見ても、良好な資金調達環境のもと、景気回復や所得環境の改善が続き、堅調な住宅需要やオフィス市場の活況はもとより、観光先進国の実現の観点から世界の需要を取り込むことによって、更なる訪日外国人の増加が見込まれることなどを背景に地価回復や上昇を堅持していると考えられる。このような傾向が一過性のものではなく安定的に持続することが望まれる。
一方で、今後、我が国は更に少子高齢化が加速し、人口が減少していくことは間違いない。そして地価は人口の増減と非常に相関性が高い。従って、将来に向かって少なくとも日本全国の平均的な地価は下がっていくことが懸念される。特に、将来を担う子供達の減少は国力低下にも繋がる深刻な問題であり、政府にはその対策と環境整備に尽力願うものである。
他方で、政府において、景気変動の安定化のために必要となる対策として、住宅ローン減税の拡充や、すまい給付金制度の拡充といった措置が講じられているが、これによって住宅取得に向けたハードルが下がり、一極化を緩和し、不動産購入に対する全国的な需要の維持と回復に繋がるかを我々は注視していかなければならない。
本会と致しましては、不動産市場の活性化のため、今後も引き続き社会経済情勢の急速な変化にも対応した政策提言等を積極的に行っていきたいと考える。そして、現在、世界各地にまで感染が拡大している新型コロナウィルスが我が国経済に影を落として始めており、これに対する政府の強い対応にも期待したい。
今回の地価公示では、全国全用途平均は5年連続、住宅地は3年連続、商業地は5年連続で上昇し、いずれも上昇基調を強めている。三大都市圏・地方圏でも、住宅地・商業地ともに上昇が継続し、地方四市を除くその他の地域においても、全用途平均・商業地が平成4年以来28年ぶりに上昇、住宅地は平成8年から続いた下落から横ばいとなった。このように地価上昇が全国的に継続し、都市圏から地方圏へと広がってきていることが確認された。
わが国経済は、雇用や所得環境の改善等に支えられ緩やかな回復基調を維持してきたものの、昨秋の台風による甚大な被害の発生に加え、日米貿易摩擦や、このところ日々深刻化する新型コロナウイルス感染症拡大の影響が懸念され、国内外にわたり先行き不透明な状況にある。既存住宅の流通市場においても、東日本不動産流通機構の成約統計では、昨年10月以降、価格は前年を上回って推移しているが、件数は対前年比で減少に転じており、営業現場の取引の動きにも鈍化傾向が見受けられる。今後の金融、価格、消費者動向などマーケットの変化には注意を払う必要がある。
地価の安定的な推移は、国民生活・経済活動の基盤である住宅・不動産市場の拡大を促し、わが国の経済成長を後押しする。当協会は、不動産流通の促進と消費者ニーズを踏まえた住宅ストックの有効活用の観点から意見具申と情報発信を行い、今後も不動産流通市場の活力を維持し、高めることができるよう鋭意取り組んでまいりたい。
・令和2年の地価公示は、全国平均で全用途平均が5年連続の上昇となり、地方圏では、地方四市を除くその他の地域でも全用途平均が28年ぶりに上昇に転じた。不動産に対する堅調な需要が持続していることが、全国的な地価の回復傾向の広がりとして反映されたものと評価している。
・新型コロナウイルスの感染が世界的な広がりを見せる中、日本を含む世界中のマーケットが動揺しており、世界経済の更なる落ち込みも懸念される。今後の経済動向を注意深く見極めながら、機動的かつ大胆な経済財政政策を間髪入れずに講じる必要がある。特に、内需の柱である住宅投資を活性化し、住宅市場を安定的に推移させる施策や、国内設備投資の安定的な促進によって企業の生産性を飛躍的に向上させ、成長力を強化する施策が不可欠だ。
・今後、日本経済を再び確かな成長軌道へと戻すとともに、人口減少・少子高齢化やデジタル・トランスフォーメーションの進行などの不動産業を取り巻く環境や都市のあり方を的確に捉えたまちづくりを通して、新たな価値を創造し、持続可能な経済社会の実現に貢献して参りたい。
・令和2年の地価公示は、三大都市圏では全用途平均・住宅地・商業地・工業地いずれも引き続き上昇するとともに、地方圏では全用途平均・住宅地が2年連続で上昇した。経済の先行きは国内外ともに新型肺炎の影響を受け非常に不透明な状況であるものの、今回の発表は景気回復、雇用・所得環境改善の下、堅調な住宅需要、オフィス市場の活況、国内外からの観光客の増加などを背景として、全国的に地価の回復傾向が広がっていたものと感じる。
・当社ビル事業においても、雇用拡大や働き方改革・生産性向上の為の集約・拡張、立地改善やレイアウト変更を伴う移転需要が継続しており、低水準の空室率、賃料の上昇が継続、本年3月に入居が始まった「CO・MO・RE YOTSUYA(コモレ四谷)」及び5月に竣工予定の「the ARGYLE aoyama(ジ アーガイル アオヤマ)」はともに全床契約済みとなった。旺盛なオフィス需要を受け、本年3月末時点の東京・丸の内の当社ビルにおける空室率は1.0%程度となる見込みである。
新たに展開した成長企業向けのコンパクトオフィスシリーズ「CIRCLES(サークルズ)」についても、汐留・銀座・日本橋馬喰町の第一弾3物件においてほぼ全床内定済みであり、強い引き合いを受けている。今後も様々なテナントニーズに対応する商品開発を継続していく。
・工業地においては、eコマース市場の成長による大型物流施設の需要が継続しており、当社においても首都圏の物流適地である海老名・蓮田・春日部・船橋・座間の5エリアに物流施設「ロジクロス」を開発中である。雇用確保の面で強みを持つ物件の引き合いが強く、就業者にとり通勤しやすく休憩室など充実したアメニティを備えた物件の開発を推進している。商業地においても、堅調な国内消費に加え好況なインバウンド市況を受け、「御殿場」「りんくう」等の施設で増設計画が進捗している。
・地方圏では、堅調な地元経済によってオフィスマーケットが支えられている広島県で「新広島ビルディング建替計画」が昨年10月に竣工、満床稼働した。経済の好況が継続する福岡では、福岡市内における当社として初のオフィスビル開発「(仮称)博多駅前4丁目計画」が着工、強い引き合いを受け順調にリーシングを進めている。リゾートホテル開発が進む沖縄県宮古島においては、トゥリバー地区で新たに「ヒルトン沖縄宮古島リゾート」計画を決定。既存の空港ターミナル事業と連携しつつ、周辺圏域振興への貢献も図っていく。
・住宅においては、共働き世帯やシニア世帯による交通至便立地でのマンション取得ニーズの高まり、低金利環境や住宅ローン減税などの施策によって、昨年10月からの消費増税後も堅調な販売市況が継続しており、特に駅近・複合開発など、好立地かつ魅力度が高い物件が好調である。個別物件では、首都圏においては「市ヶ谷」「三鷹」など、地方圏においては「鹿児島中央」などの物件が好調な販売状況である。
今回の2020年1月1日時点の地価の動向を調べた地価公示では、全国的に地価の上昇基調を強めているのが明らかになった。東京など三大都市圏で住宅地・商業地ともに上昇が継続していることに加え、地方圏では地方4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)を除くその他の地域でも全用途平均、そして商業地が28年ぶりの上昇となるなど地価の上昇傾向が全国に広がっている。これは景気回復や雇用・所得環境の改善、低金利の継続、外国人観光客の増加などを背景に地価の上昇基調が全国に波及しているものと捉えている。今後の地価動向に関しては新型コロナウイルスの流行を受けた世界経済の動向などを見極めていきたいと考えている。
住宅地については住宅ローン減税等の政策的支援などもあり、駅に近いなど交通利便性の高い地域や住環境の良い地域を中心に地価が上昇している。当社は需要の高い地域での分譲マンションへの厳選投資を進めており、首都圏の湾岸部で『ブランズタワー豊洲』の開発を進めるなど需要の高い東京都心部で物件を複数展開しているほか、共働き世帯の「時短」を意識した『ブランズ北千住』や、保育士が居住者家族の子育て支援をする『ブランズシティ調布』など、特徴のあるマンションの開発を進めている。関西では大阪市の中心部まで徒歩圏の大型高層タワーマンション『ブランズタワー梅田North』が3月に竣工したほか、JR「西宮」駅周辺などで大型再開発を計画している。
商業地では雇用・所得情勢の改善が続く中で、『働き方改革』に合わせたオフィス環境の改善、採用増によるオフィスの拡張を目的とした移転増加などにより、都心部を中心にオフィス需要は好調で、新規オフィスビルの竣工が相次ぐなかでも依然空室率は低水準であり、賃料の上昇傾向も続いている。特に渋谷ではオフィス需要が供給量を上回っており、オフィスに空室が出てもすぐ埋まる状況が続いている。当社はJR「渋谷」駅を中心とする「広域渋谷圏」でのオフィス開発を積極化しており、昨年開業した「渋谷ソラスタ」「渋谷フクラス」など新規の大型オフィスビルも満室で稼働を開始するなど需要は概ね好調だ。JR「渋谷」駅周辺では2023年度の竣工を目指し『渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業』の開発を進めるなど様々な新規案件を進行している。広域渋谷圏以外では浜松町・竹芝エリアで約20万平方メートルの大型開発を進めており、そのオフィスに入居するソフトバンクグループなどの企業と組み、IoTを活用した様々な社会実験を進めていく計画だ。東京メトロ「明治神宮」駅周辺では2022年の竣工予定として『神宮前六丁目地区第一種市街地再開発事業』も進めている。
外国人観光客の増加で商業施設、ホテルの需要も高止まりしている状況のなか、交通利便性が向上、あるいは国内外の観光客が増加しているエリアでは地価が大きく上昇している。当社がスキー事業などを手掛ける北海道・ニセコではインバウンドの増加に対応し、昨年12月にスキー用具の新レンタル施設「マウンテンセンターアネックス」を開業した。また、インバウンド人気の高い京都市内ではヒルトンと組み、ラグジュアリーホテル「LXR(エルエックスアール)ホテルズ&リゾーツ」の開発、そして2021年秋の開業を計画している。東急不動産ホールディングスグループの中長期滞在型ホテル『東急ステイ』ではインバウンドの動向もにらみ、展開エリアをこれまでの東京都心部から大阪、沖縄、飛騨高山など全国に広げている。今後については新型コロナウィルスの影響など不透明な情勢を全般的に見極めていく必要があると考えている。
今回の地価公示では、引き続き全国的に地価の回復傾向が広がっている。住宅地は3年連続、商業地および全用途平均は5年連続で上昇するなど、上昇基調を強めており、特に地方圏のうち地方4市を除いた地域において、全用途平均および商業地が28年ぶりに上昇に転じた。全国的に、利便性の高い地域における堅調な住宅需要、インバウンド需要、再開発事業の進展等によるオフィスやホテル、商業施設等への投資意欲が持続する状態が反映された結果と考えられる。
住宅市場に関しては、首都圏における新築分譲マンションの販売価格は引き続き高水準にあり、特に利便性に優れた都心立地や駅周辺再開発等は高水準が継続している。新築マンションの供給量には減少傾向が見られるものの、一部では中古マンションへのシフトも見られるなど、実需は引き続き堅調な印象である。この傾向は、首都圏のみならず近郊部や三大都市圏、地方中核都市へも波及が進んでいる。当社は福島市、岡山市などを始めとした地方中核都市においても、地元や行政のニーズに基づき、利便性に優れ多様な施設を集積させる再開発事業を引き続き展開する。また、昨今の単身世帯・DINKS・高齢世帯の増加等により、住まいに対するニーズやライフスタイルの多様化は、働き方の変化と合わせより加速していくものと捉えており、こうしたニーズに対応した商品やサービスの展開を通じて豊かなライフスタイルを提供し社会に貢献していく。
オフィスビル市場に関しては、安定した企業業績、人材確保等を目的とした雇用増を背景に、主要都市を中心に空室率の低下、賃料の上昇傾向が継続している。また、ワークスタイルの多様化に伴い、テレワークなどに対応するオフィス空間やサービスへのニーズが高まっている。商業施設・ホテルに関しては、外国人観光客をはじめとする国内外からの来街者の増加が堅調であったこともあり、主要都市を中心に、商業施設やホテルの進出意欲は持続している。物流施設に関しては、新規物件の満床稼働が見られるなど、先進的な大型物流施設への需要は今後も堅調に推移するものと想定される。当社は、社会や顧客ニーズの変化を的確に捉えた商品・サービスを提案するとともに、マーケットの動向を注視つつ、オフィスビル、商業施設、物流施設、ホテル等の開発を、引き続き積極的に展開していく。
今回発表された地価公示のトレンドは、本年1月1日時点の不動産取引動向を反映したものであり、不動産市場の中長期的な指標として重要視している。
今般の新型コロナウィルスの感染拡大を受け、足元では、商業施設・ホテルなど一部事業分野で影響が出始めており、中長期的な影響については引き続き注視する必要がある。
今年発表された地価公示は昨年同様、上昇基調が続いた。背景には、好調なオフィス市況、利便性の高いエリアでの底堅い住宅需要、再開発事業等の進展により繁華性向上が見られる地域における店舗等の旺盛な進出意欲、イーコマースの普及加速による大型物流施設の建設などにより、引き続き不動産市場の堅調さが反映されたことによる。
(商業地)
優良な開発用地、収益物件が減少しているなか、国内外投資家の収益物件への投資意欲は依然旺盛である。また、生産性の向上等を目的としたオフィス環境改善のための拡張・移転の動きも加わり、オフィス需要は底堅く、賃料は全般的に緩やかな上昇傾向が継続している。豊島区庁舎跡地で開発しているオフィスビル「ハレザタワー」もリーシングは概ね完了しており、「ハレザ池袋」全体のグランドオープンを迎える今夏には、周辺の賑わいも増し、一層のエリア価値向上に貢献するものと期待している。
また、地方中核都市でもオフィスマーケットは堅調で、仙台市内で当社2棟目となるオフォスビル「仙台花京院テラス」(2020年1月竣工)は、竣工前にリースアップした。
このように、オフィス・商業等のマーケットは堅調であり、商業地の地価は繁華性の高いエリアを中心に緩やかに上昇している。
(住宅地)
分譲マンションは、都心部や郊外、地方圏に拘わらず、駅近や大規模商業施設近接地などの利便性を重視するパワーカップル、パワーシニア層の需要は底堅い。加えて低金利の継続や住宅ローン控除等の政策支援によってマーケットは堅調に推移しており、住宅地の地価は利便性の高いエリアを中心に緩やかに上昇している。
なお、良質な住宅用地の取得競争は依然として過熱しており、当社では再開発・建替え案件の確保に注力している。昨年販売を開始した「白金ザ・スカイ」(総住戸数1,247戸)は、山手線内最大規模を誇る市街地再開発事業であり、白金高輪駅から徒歩3分という利便性、医療施設・子育て支援施設や商業施設の併設、周辺道路や歩行者空間の再整備による良好な居住環境、資産性等が評価され、販売は順調に進んでいる。
一方で、多発する自然災害や大国間の貿易問題に加え、新型コロナウィルスの世界的拡散の影響など、今後の景気動向には、より一層注視していく必要がある。
当社は、引き続き社会課題の解決を通じて安全・安心・快適なまちづくりを目指し、地域の更なる活性化に貢献していきたい。
(商業地の全体感)
商業地の地価は、全国平均で5年連続の上昇となり、上昇幅も4年連続で拡大し、上昇率は3.1%となった。東京23区の上昇率は全国平均を大きく上回る8.5%を示し、多くの区で上昇幅が昨年より拡大した。地価をけん引している銀座では一連の再開発事業が一巡したことにより上昇率は緩やかになった。一方で複数の大規模再開発が進捗する虎ノ門や高輪ゲートウェイ駅が開業した港南エリアを含む港区で、2桁増の高い上昇率を示した。また池袋駅や渋谷駅周辺などでも高い上昇率を示した。
地方圏は3年連続の上昇となり、上昇基調を強めており、地方四市だけでなく、その他の地域でも上昇となった。地点ごとでは、北海道倶知安町や長野県白馬村、静岡県熱海市、岐阜県高山市、沖縄県宮古島など、国内外の観光需要が高まっている地域で上昇が見られた。
(背景と具体的な現象)
オフィス賃貸市場では好調な企業業績を背景とした移転・拡張ニーズの高まりや、生産性や創造性の向上を目的としたコワーキングスペースやサテライトオフィスの新規開業なども多く見られ、オフィス需要は堅調に推移した。本年度竣工予定の大規模オフィスについては、テナント誘致がほぼ終了しており、東京都心5区の空室率は1%台半ばと低い水準で推移し、賃料は緩やかながらも長期的に上昇を続けた。
売買市場でも良好な資金調達環境を背景に、大規模再開発や新駅開業といったインフラ整備などによる都市機能の向上、オフィスマーケットの堅調な推移、観光業の活況に伴うホテル・店舗・住宅の需要増などにより、機関投資家を中心とした投資意欲は高い状態が続いた。特に、大規模再開発が活発な都心部では投資意欲が旺盛な一方で、収益用不動産は、物件が不足したことで低い利回りで推移した。
(今後の見通し)
東京都心部では今後も大規模オフィスビルの新規供給が続くものの、移転・拡張ニーズは高く、移転に伴う二次空室についても一定の需要が見込まれており、引き続き空室率は低水準を維持する見込みである。
今般の新型コロナウィルスの感染拡大に際し、期せずして日本の働き方は急激に多様化した。テレワークが進み IT を駆使したコワーキングスペースやサテライトオフィスなどの分散型のワークプレイスが浸透する一方で、残業時間の増加や業務効率の低下、コミュニケーション不足などの課題も見えてきた。人が集まることでコミュニケーションが活発化し、クリエイティビティが刺激されるような拠点型ワークプレイスの必要性が再認識されている。
投資面において、新型コロナウィルスの感染拡大が世界的に注目されているが、安全貨幣である円とともに、安全資産である日本の不動産への投資意欲は事態の収束につれ、改めて見直されるものと考えられる。
観光面において政府が掲げる観光目標の達成に逆風が吹いているが、日本の持つ観光ポテンシャルが消失するわけではない。事態終息後の反転攻勢を見据えた振興策として、日本のブランディングの推進とともに、二次交通、人材不足などの課題解決や、IT 社会における観光対応のあり方など、官民一体となり持続的な観光産業基盤の構築に取り組んでいく必要がある。