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総世帯の約23%が災害リスク地域に居住

 国土交通省は28日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会(分科会長:中井検裕氏(東京工業大学環境・社会理工学院長))の3回目となる勉強会を、コロナ禍に対応してオンラインで開催した。

 今回は「住生活関連産業や新技術」と「まちづくり」の視点から住生活基本計画見直しの方向性に向けた材料を探るべく、事務局から両テーマに関するデータが示された。住生活産業については「住宅のアセットマネジメント」「個人の生活に寄り添う包括的な支援」など住生活に関わる幅広い世帯・ニーズに応える新たな成長産業と位置付け、インスペクションや空き家管理、DIYサポートなどの成長が期待されているとした。新技術の活用については、ICTの進展に伴うシェアリングエコノミーの拡大、IoTやAIを活用したサービス、ドローン、自動運転、BIMなどを活用することで、住宅建設・点検の効率化や住生活の向上が期待できるとした。

 まちづくりに関連するデータでは、災害リスクと住まいの立地についての推計が初めて示された。土砂災害警戒区域に居住する世帯数は約157万世帯で、総世帯の約3%。津波浸水想定地域に居住する世帯数は約123万世帯で総世帯数の4.6%、浸水想定地域に居住する世帯は約991万世帯で総世帯数の19.1%となり、これらいずれかの災害リスク地域に居住する世帯数は約1,203万世帯で総世帯数の23.1%に達していた。こうした現状を踏まえ、委員からは災害リスク地域内に居住する場合は災害リスクを考慮した住まいにするか、安全なエリアに居住誘導を行なうべき、また災害発生時の共助・互助・避難体制の整備などを周知していくべきといった意見が出された。

 その後、臨時委員4名からも関連資料やデータが示された。(株)リクルート住まいカンパニーSUUMO編集長の池本洋一氏は、住宅ポイント制度をシンプルにして季節ごとのキャンペーン等で性能向上リフォームを誘発することやバラエティ番組や情報番組で性能向上リフォームをアピールすべきといった意見や、断熱性や遮音性、耐震性が劣る賃貸住宅や既存住宅の性能向上について「コロナ禍で不満が顕在化している今こそ機が熟しているといえる」とした。

 (一社)不動産協会理事長の菰田正信氏は、居住者ニーズと既存の住宅ストックとの間にミスマッチが顕在化していると指摘。旧耐震やバリアフリー・省エネなどを充たさず、除却・更新や建て替えが必要な住宅ストックが約2,400万戸、ストック総数の約4割に達していることから建て替え・再開発・まちづくりによる新規ストックの創出と優良なストックの維持保全・管理、流通の推進などによる「正のスパイラル」へ転換すべきとした。また、コロナによる社会構造・価値観の変化による「アフターコロナ」の住宅のあり方について、「住宅での在宅勤務には限界がある。在宅勤務が可能な住宅と、分散型オフィス、対面業務の生産性を高める拠点型オフィスという住宅とオフィスとの役割分担が必要となる」とした。


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