不動産ニュースと不動産業務のためのサポートサイト

「建築物の水災害対策」の重要性示す

 政策研究大学院大学と国立研究開発法人建築研究所は17日、オンラインシンポジウム「建築物の水災害対策」を開催した。

 近年、水災害の激甚化がみられる中で、高層マンションの受変電設備の冠水によるエレベーターや給水設備等のライフラインが使用不能となる被害、高齢者施設や市街地の広範囲にわたる浸水による甚大な人的被害や建物被害の発生など、建築物における水災害対策が重要となっている。同シンポジウムでは国内外の有識者を集め、建築物の水災害対策をテーマに講演会やパネルディスカッションを開催した。

 講演会では、国土交通省住宅局建築物防災対策室長の今村 敬氏が「近年の住宅・建築行政における水害対策の取り組み」として、「『水災害対策とまちづくりの連携のあり方検討会』の提言」や「水害リスク情報の重要事項説明への追加」のほか、今国会に提出している「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律案」について解説した。今後の取り組みとして、「増大する水災害リスクに対して、治水サイドのハード整備を待っているだけでは不十分。治水サイドからのリスク情報に基づき、まちづくり・建築サイドにおいてハード・ソフト両面のリスク軽減方策の実施が喫緊の課題」などと述べた。

 イギリスのTheEnvironmentalDesignStudio創設者で、建築における環境デザインの専門家のエドワード・バースリー氏は、「洪水にレジリエントな建築・都市への再生に向けて」をテーマに講演。「洪水に含まれる危険物質、洪水で発生するリスクの種類などを十分に理解する必要がある。レジリエンスの高い住宅とはさまざまなリスクを想定したもの」と述べた。また、「コンクリートジャングルではなく、水を浸透する緑のあるまちづくりを進めていくことも重要」と話した。

 パネルディスカッションでは、「水害に強い建築物の実現方法」をテーマに、「深く根入れした半地下空間を持つ高気密住宅で流水に耐えたケースがある」(建物修復支援ネットワーク代表・長谷川 順一氏)、「オーストラリアでは、戸建住宅の1階と2階で建材を変え洪水対策をしている」(エドワード氏)などの事例が挙がった。また、「建物自体の強化だけでなくライフラインが途絶えてもそのまま暮らし続けることができる仕組みが必要」(国土技術政策総合研究所シニアフェロー・山海敏弘氏)、「住まい手が変わった際に、建物にはどういった水害対策がなされているのか、その情報がきちんと引き継がれていかなければならない」(エドワード氏)といった意見もあった。


最新刊のお知らせ

2024年5月号

住宅確保要配慮者を支援しつつオーナーにも配慮するには? ご購読はこちら