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地域福利増進事業の検討、自治体の1割強にとどまる

 国土交通省は16日、第43回国土審議会土地政策分科会企画部会(部会長:中井検裕東京工業大学環境・社会理工学院長)を開催した。

 7月より、次期通常国会への提出する所有者不明土地法改正法案の作成に向け、部会とりまとめについて議論をスタートしている。今回は、参考資料として、所有者不明土地法の見直しに向けた地方公共団体へのアンケート調査結果について発表した。2月10日~3月10日に実施。47都道府県、1,262市町村から回答を得ている。

 調査の結果、登記簿上、所有者が不明な土地の存在を把握している市町村は76%。このうち、45%の市町村は、特段の調査等を行なっていないことが分かった。一方、公共事業の支障となっている等、自らの事業の関係で存在を把握している市町村は24%だった。

 所有者不明土地の存在を具体に把握している市町村のうち、地域福利増進事業の活用を検討したことがあるのは11%だった。「検討したが手続きを講じなかった理由」のうち、制度的な問題として、「適当な事業がない」「使用権10年の費用対効果が低い」が多く挙げられている。行ないたいと思ったことのある地域福利増進事業については、「土地の管理を行なう事業」が最も多く、次いで「災害応急対策に資する事業」「再生可能エネルギー発電施設の整備事業」だった。また、「その他に行ないたい事業があるか」という問に対しては、「コワーキングスペース等の新しい働き方を後押しする整備事業」が挙げられた。

 管理不全土地に対する新たな仕組みについて、固定資産課税台帳等を活用して所有者探索ができる仕組みや、指導・助言・勧告・命令等の措置を法律に規定することに対し、いずれも半数以上の地方公共団体が積極的な意向であることが分かった。管理不全土地対策に係る予算・助成措置や税制上の措置については、いずれも半数以上の地方公共団体が積極的な意向を示している。

 公有の低未利用土地の取り扱いについては、市町村・都道府県ともに「できるだけ早く売却する」が最も多い。一方で、市町村においては、「活用したいがニーズやツールがない」という回答も多い。民有の低未利用土地について行なってもらいたい業務については、「特になし」が最も多く、その理由としては「ニーズが不足しており活用見込みがないため」との回答が多かった。一方、行なってもらいたい業務があると回答した市町村について、希望する業務主体については、「一般社団法人」「一般財団法人」「NPO」が多く挙げられた。

 委員からは「地域福利増進事業の活用が進まない理由は何なのか、どういった支援策があるといいのか検討する必要がある」「空き家対策等と連動して取り組むべき。利活用の事例がほしい」「地域福利増進事業を活用するためには時間と労力がかかる。そこを円滑化するための仕組みが必要」「土地管理の事業への関心が高いことから、その分野を重点的に制度を拡充しては」などの意見があった。

 土地政策に関する概算要求についても発表。所有者不明土地等の発生の抑制に資する取り組みの推進に新規で1億円を要求し、所有者不明土地等対策のさらなる加速を図るため、次期通常国会において所有者不明土地法の見直しを行ない、所有者不明土地の発生の抑制・解消、円滑な利用および管理の確保に関する施策のほか、低未利用土地の利活用の促進等に関する施策を講ずることとしている。その一環で創設する「所有者不明土地等対策推進法人(仮称)」(いわゆるランドバンク)指定制度等の新たな仕組みを普及・定着するため、必要な知見の収集・共有、課題分析のほか、地域における普及活動等の支援を行なうとしている。

 今後は、10月に用地取得の現状と地域における再生可能エネルギー発電事業について、11月にとりまとめ(骨子)について検討する予定。2022年3月からは、土地基本方針の改定案についての議論を開始し、5月頃改定する予定。


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