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「九段会館テラス」、10月1日に開業/東急不他

「九段会館テラス」正面イメージ
「コンファレンス&バンケット」内のゲストルーム「葵」。寄木張りの床や絹織物の天井など創建時をできるだけ復原している

 東急不動産(株)と鹿島建設(株)は8日、両社で開発を進めてきた複合ビル「九段会館テラス(KUDAN-KAIKAN TERRACE)」(東京都千代田区)を10月1日に開業すると発表。報道陣に公開した。

 登録有形文化財である旧九段会館を一部保存・復原しながら、17階建ての新築オフィスビルと融合させるプロジェクト。東京メトロ半蔵門線・東西線、都営新宿線「九段下」駅徒歩1分に立地。敷地面積約8,765平方メートル、延床面積約6万8,036平方メートル、鉄骨造(CFT造)・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造地上17階地下3階建て。7月29日に竣工した。土地は70年の定期借地権。

 築約90年の旧九段会館部分(鉄骨鉄筋コンクリート造地上5階地下1階建て)は、特徴的な帝冠様式が最も残る建物北側と東側部分をL字状に保存。保存部分は、従前延床面積約1万4,000平方メートルの約5割に相当しており、戦前の絵葉書や写真など創建当時の資料をもとに、できるだけ創建時の姿を復原した。免震レトロフィット工法を採用し、保存部地下1階すべての柱に免震装置を設置したほか、中性化により劣化したコンクリートの補修対策も実施。大きな特徴の一つである外壁のスクラッチタイルは一つひとつ落下防止対策を講じ、安全性を保ちながら再現している。

 保存棟には、東急不動産の会員制シェアオフィス「ビジネスエアポート九段下」(地下1~1階の一部)や、意匠を維持・復原した2つの宴会場を含む「コンファレンス&バンケット」(2~3階)、旧九段会館の雰囲気を生かしながら大規模オフィスと同等のセキュリティシステムなどを導入した約20~80坪の小規模オフィス・ラウンジ「Classic Office& Classic Lounge」(2~4階)を備える。屋上には、ワーカー専用のルーフトップガーデン等の屋上庭園も設けた。

 新築ビルの2~17階は、IoTを活用したデータ連携基盤等の最新鋭の設備を備える1フロア約750坪のオフィスフロア。地下1階にオフィスワーカーの健康をサポートする内科や歯科などが入居するクリニックモール用意した。地下1階・地上1階に保存棟とつながる「ビジネスエアポート九段下」を開設し、地下1階のワーカー用のラウンジに「九段食堂 KUDAN-SHOKUDO for the Public Good」を併設。ランチタイムには一般にも開放する職域食堂として活用する。

 施設正面玄関前には、緑豊かな広場である「九段ひろば」を、広場からつながる西側の皇居外苑北の丸公園のお濠沿いには、景観を楽しみながら飲食や散歩できる「お濠沿いテラス」を設置。さらに南側には千代田区と共に遊歩道「九段こみち」を整備し、周辺エリアの回遊性向上に寄与する連続する歩行者空間を創出した。

 また、国内オフィスビルへの導入は初となるスマートガラス「View Smart Glass」を採用した。建物屋上に設置したセンサーとAIにより、太陽の位置や天候に合わせてガラスの透過率を4段階で自動調整し、室内に差し込む自然光・熱量を最適化。空調や照明によるエネルギー消費量を削減し、一般的な低放射ガラスと比べ、電力消費量を最大20%程度削減することが可能となる。遮光等で視界を塞ぐ必要がないことから、皇居外苑の緑を望むことができる玄関ホールから続くエントランス空間および地下1階に導入した。なお現在、オフィスフロアは9割、Classic Officeは5割が成約済。皇居外苑の緑豊かな景観や、歴史を感じるクラシカルな雰囲気が評価されているという。

 8日の記者発表会であいさつした東急不動産取締役常務執行役員都市事業ユニット長の榎戸明子氏は、「2019年の着工後、コロナ禍により事業環境の変化に対応することが求められた。開発事業者として“来る意味のあるオフィス”、“来たくなるオフィス”をつくるため、健康を意識した職域食堂やクリニックモールなどを導入。歴史的価値の高い建物を保存・復原するとともに、ワーカーが安心して健康的に働けるオフィスを実現した。今後は、90年という歴史の重みを受け止め、しっかりと運営していきたい」などと抱負を述べた。

Classic Office内観
ランチタイムは職域食堂として活用する「ビジネスエアポート九段下」ラウンジ


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