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大賀建設、東大とパッシブデザインの実証実験住宅

実証実験住宅の外観
2階窓際の天井には蓄熱材を貼り、その効果を測定している

 「アルネットホーム」のブランドで注文住宅事業を展開する大賀建設(株)(さいたま市大宮区、代表取締役社長:須賀 亮氏)は、東京大学、(株)M’s構造設計、YKK AP(株)と共に研究・開発を進めてきた「AL-pass(アルパス)プロジェクト」の実証実験住宅(埼玉県久喜市)を竣工。18日に現地説明会を開催した。

 JR東北本線、東武伊勢崎線「久喜」駅から徒歩約20分の立地。東京大学大学院大学院工学系研究科建築学専攻准教授・前 真之氏の研究室の学生による日射取得や通風、エアコン効率等のシミュレーション結果を反映したパッシブデザインを採用した。木造2階建て。

 前氏が学生の研究の一環としてパッシブデザインを反映した住宅の建築をYKK APに相談。同社と付き合いのあったM’s構造設計にその内容を共有し、同社は、木造住宅の構造計算、構造設計の最新情報や技術研修(講座)等を行なう「構造塾」会員の中から実績等が豊富だった大賀建設に打診した。2021年6月よりプロジェクトが本格始動し、複数回の設計プランの作成、シミュレーション等を経て、22年4月に着工している。

 大賀建設が展開する注文住宅で最も断熱性能の高い「極暖の家」の仕様をベースに、学生の研究結果を反映し、設計した。ウィンドキャッチの設置と小屋裏窓の開放によって通風による熱抜きを実現し、室内の温熱環境を向上。バルコニーの縮小等で冬の日射取得の増加を実現した。また、2階窓際天井の一部には、冬の昼間に日射熱を吸収し、夜に放熱する蓄熱材(PCM)を取り入れた。天井裏には空調室を設置。空調室から送られる冷暖房空気の吹き出し口を水回りにも分散させることで、居室間の温度ムラを解消している。これらの取り組みの結果、学生の研究結果を反映していない初期設計プランと比較して、年間で暖房費が約58.0%減、冷房費が28.2%減、光熱費が16.5%減となる見込み。

 当面は実証実験棟として運営し、将来的には建売住宅として販売する予定。18日に開催した現地見学会で須賀氏は「脱炭素に貢献したいという思いから、当プロジェクトを行なうことにした。設計の工夫で、太陽エネルギーを活用しながら、冷暖房費等を抑制できることが分かった。シミュレーションを用いた設計手法は、当社として学びになる部分も多く、今後の住宅づくりにおいても参考にしていきたい」などと話した。


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