4月1日付で東急不動産(株)の代表取締役社長に就任した田中辰明(たなか・たつあき)氏が13日、専門誌記者と会見し、今後の事業戦略の方向性等について語った。
冒頭、田中氏は20年を超えるリゾート・ホテル事業での経歴を踏まえ「ソフト(運営)を重視していく」と抱負を述べた。「リゾート運営業では、決まったハードの中で、常にお客さまに期待を超えるサービスを提供していかなければならなかった。現状維持は衰退、同じことを繰り返していては評価が下がる。デフレ時代からインフレ時代へ変化する中、常に進化しなければならないと実感している」(田中氏)。
ソフト重視の一例として、分譲マンション事業における「管理」を挙げ「引き渡した時点で一番価値が高いマンションではなく、住んでいくうちに価値が上がっていくマンション、管理しやすく作ることで、コストがかからず価値が維持しやすいマンションを作る。商品企画の段階から(管理会社の)(株)東急コミュニティーに参加してもらい、入居者の声も常にフィードバックしていく」(同氏)。
開発事業全般については、建築費の高騰と事業期間の長期化、金利上昇を織り込んだ上で「競争力の高い、高品質のハードを提供していく」とした。住宅事業では「分譲マンションは、これまで取り組んできた“環境先進”と、将来にわたり価値が向上していく“未来資産”を掛け合わせた物件を、年間1,200~1,500戸計上していく。より高品質なサービスが提供できる再開発事業については、引き続きしっかり取り組んでいく」とした。価格上昇・金利上昇が続いてはいるが「子育て層を中心とした支援策もあり、住宅に対するニーズは落ちてはいない。都心部だけでなく、郊外の一次取得者向け物件の供給にも取り組んでいく」(同氏)。一方、賃貸住宅については「顧客のライフスタイルの多様化に対応するため、ペット共生マンションや防音マンションなど趣味を充実させる物件に取り組んでいく」とした。
他社をリードしてきた再生可能エネルギー事業は「開発・売電・管理というバリューチェーンができ上がった。今後はこの再生可能エネルギー事業と他の事業を組み合わせ、地方創生や社会課題の解決に貢献していく。例えば、北海道の石狩市では、膨大な電力を消費するデータセンターを再生エネルギー100%で運営する事業を実施している」とした。
東急グループが全力を傾注する「広域渋谷圏」での取り組みについては「質の高い施設を継続的に開発していくのは重要だが、まちの魅力を高める、課題を解決するために重要なのはソフト。まちで働く人、訪れる人、住む人のため、まちの価値をさらに高めるコンテンツを増やす」(同氏)。また「渋谷はまだまだ宿泊施設が足りないので、再開発等に付加するほか、既存建物のリノベーションも駆使する」(同氏)とした。