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最先端スマートシティ、充実の環境・省エネ対策

千葉県柏の葉スマートシティの取り組み

 千葉県柏市。千葉県の北西に位置するこの都市で、最先端かつ大規模なまちづくりが進められている。三井不動産(株)が、つくばエクスプレス 「柏の葉キャンパス」駅を中心に進める「柏の葉スマートシティ」構想に基づくまちづくりだ。  先日、駅前に中核街区「ゲートスクエア」が完成したこの町で、どのようなスマート化が進められているのか。まち全体で進められているエネルギーを管理する取り組みについて紹介しよう。

柏の葉ゲートスクエア全景
「柏の葉スマートセンター」地域一帯のエネルギー管理・制御を行なう
国内最大級のリチウムイオン蓄電池などを備えたエネルギー棟
賃貸住宅「パークアクシス柏の葉」にはHEMSが設置されており、タブレットのほかテレビでもエネルギー状況や省エネアドバイスなどを確認することができる
HEMS画面。エネルギーの見える化に加え、ピークカットへの寄与によるポイント付与なども行なう
AEMS画面。テナントに向けて地域エネルギー情報や省エネアドバイスなどを表示する
電気自動車、電動バイク、自転車などを共同利用する「マルチ交通シェアリング」ポートも開設

AEMSでまち全体を管理

 7月8日、「柏の葉キャンパス」駅前に立地するゲートスクエア内に、「柏の葉スマートセンター」がオープンした。普段人の目に触れることはないこの場所だが、ここは、まち全体でエネルギー利用の最適化を行なう、いわばまちの心臓部ともいえる所だ。

 具体的に説明していこう。

 柏の葉エリアにあるオフィスや商業施設「ららぽーと柏の葉」、ホテル「三井ガーデンホテル柏の葉」、賃貸住宅「パークアクシス柏の葉」などにはHEMSやBEMSが設置されている。そこからの情報によりエネルギーの需給状況を見える化し、エリア全体のエネルギー情報を一元管理している。管理するエネルギーは電力だけではない。水やガスなどの需給状況も管理し、省エネ、省CO2のアドバイスを行なう。

 併わせて、ららぽーと柏の葉に500kW、ゲートスクエアに220kWの太陽光発電施設を設置。さらに小型風力発電、太陽熱供給、地中熱ヒートポンプ、そして非常用のガス発電機も含めて再生可能エネルギーを活用する技術を導入している。

 またショップ&オフィス棟に隣接して設けられた「エネルギー棟」には、太陽光発電やリチウムイオン蓄電池、特高圧受電設備、電力融通装置を設置しており、柏の葉スマートセンターから効果的な省エネの情報を配信すると共に、災害発生時には街区内への電力の融通も行なう。

 電力の融通と言葉で言うのはたやすいが、公道をまたいで街区間の電力融通は法律で認められておらず、基本的には不可能だ。今回は太陽光発電設備が電気事業法上の特定供給における「発電設備」として許可を受けたことで実現に至った。これは国内では初のケースだという。

 太陽光発電や蓄電池などの分散電源エネルギーを街区感で相互に融通するスマートグリッドの運用により、電力会社の電力と分散電源を併用。電力を街区間で融通しあうことで、まち全体の電力ピークカットを実現する。
 例えば、平日は電力需要の高いオフィスに電気を供給し、休日には電力需要が高い商業施設「ららぽーと柏の葉」に電気を供給する…といった具合である。
 こうしたエネルギー情報を一元管理するのが、前記の「柏の葉スマートセンター」である。エネルギー需給をコントロール、省エネ・省CO2を後押しすることで、約26%の電力ピークカットを実現するという。

省エネ寄与でポイントゲットも

 賃貸住宅「パークアクシス柏の葉」に設置したHEMSでは、居室内の電力消費量を表示するほか、生活する人の生活パターンやワークスタイルに応じた具体的な省エネ方法をアドバイスする。さらにHEMSを通じて商業施設の情報やイベント情報等も発信することで、「外出して、コミュニティに参加することでの省エネ」誘導も行なう。

 なお、年間のCO2排出量の削減・電力ピークカットへの寄与に応じて「柏の葉ポイント」を付与。ポイントは地域で開催されるマルシェでの買い物やイベント参加などの際の割引に利用できる。さらにはインターネット家電の導入により、スマートフォンを使って外出先から照明や空調を制御できるようにしており、こうした工夫により各戸あたり約5%の水道光熱費削減が期待できるという。

 また各棟では、自然の熱や空気を生かす「サスティナブルデザイン」を導入。このデザインとAEMSの組み合わせにより、ショップ&オフィス棟・ホテル&レジデンス棟の2棟で、約40%の排出量削減を達成するという。

 エリア内には電気自動車、電動バイク、自転車などを地域で共同利用するマルチ交通シェアリングのポートも新設。これにより市内計6ヵ所のポートで自由に車両の貸出返却ができる。このシェアシステムの活用でも、CO2排出量削減につなげる。災害発生時にはシェアリングの電気自動車を「街の非常用電源」として活用する防災エネルギーボックスも用意。非常時には電源コンセントや照明などが使用できるという。

 このようにまち全体で環境対策に取り組む仕組みが完成しているのが、柏の葉スマートシティなのである。

 ちなみに柏の葉スマートシティは、まだ開発の道半ば。2030年に向けて約300万平方メートルもの一大スマートシティ開発が進められていくという。
 世界でも最先端のスマートシティ完成へ、柏の葉がどのように変貌を遂げていくのか、今後もレポートしていきたい。(NO)

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