一般社団法人不動産流通経営協会(FRK)は18日、「『流通新時代』における望ましい住宅・不動産税制のあり方に関する研究会」(座長:岩崎政明横浜国立大学大学院国際社会科学研究科・法科大学院教授)のとりまとめを発表した。
同研究会は、既存住宅流通が住宅市場の中心的な役割を担う、いわば「流通新時代」の到来に対応した住宅税制のあり方という観点から、「平成24年度税制改正」に対して提言するために、2011年2月に発足。「住宅取得資金の贈与の特例」および「住宅ローン減税制度」を中心に、既存住宅流通の促進に有効な税制策を研究するべく、2~6月、計5回の研究会を開催。その内容をとりまとめたもの。
とりまとめでは、「住宅取得資金の贈与の特例」において、「相続時精算課税制度」よりも、「直系尊属の特例」を維持・拡充することが、世代間における資産の移転を促し、経済効果や住宅政策にも資する効果が発揮できると分析。住宅投資額の増額を分析したところ、世帯主が35歳で年収500~700万円と想定した際、「直系尊属の特例」のみを利用した場合でのみ、新築796万~815万円、既存967万~983万円と、既存の投資額が上回った。購入までの期間も、新築・既存双方で「非贈与」の場合よりも約2年間短い結果が出た。
岩崎教授は「平成24年度税制改正では、直系尊属の特例について、向こう3年間の制度延長が行なわれたものの、非課税制度額は段階的に下がる。住宅取得を促すため、非課税限度額は1,500万円で固定したまま、10年程度の長期にわたる安定的な制度として確立が必要」と指摘した。
また「住宅ローン減税制度」については、「耐震改修なども含め、住宅購入後のリフォームについても一定の条件を踏まえたものはローン減税の適用が認められるようにするべき」(同氏)とし、高齢者によるワンルーム物件などへの住み替え需要などに対応すべく、床面積要件を現状の50平方メートル以上から40平方メートルに緩和することや、ストック活用を進めるため、新築後20年以内(耐火建築物25年以内)の築後要件を緩和することなどを示した。
また、将来消費増税がなされ、軽減税率や税制還付など給付制度の導入が考慮されない場合は、流通関連税制や住宅ローン減税を総合的に緩和し、消費者の取引時の負担を軽減すべきとした。