記者の目 / 開発・分譲

2008/6/20

ちょっと贅沢な「宿泊特化型ホテル」

住友不動産、15番目の「ホテルヴィラフォンテーヌ」を新宿に開業

 ビジネスマンの心強い味方として、近年急速にシェアを拡大してきたのが、「宿泊特化型ホテル」だ。  施設グレードやサービスを限定することで宿泊料金を抑えるのが特徴だが、それゆえに「贅沢さ」や「快適さ」に欠けるという弱点もあった。  そこで、「(宿泊料金は)あと少し高くてもいいから、リッチな気分を味わいたい」というニーズに応えているのが、住友不動産(株)が展開する「ホテルヴィラフォンテーヌ」シリーズだ。その第15弾として、6月10日に開業したのが「ホテルヴィラフォンテーヌ新宿」(東京都新宿区)。  日本一の繁華街、歌舞伎町に開業した同ホテルに宿泊してきた。

「ホテルヴィラフォンテーヌ新宿」外観。モノトーンを基調にしたデザインは、いわゆる「ファッションホテル」とは大きく異なる
「ホテルヴィラフォンテーヌ新宿」外観。モノトーンを基調にしたデザインは、いわゆる「ファッションホテル」とは大きく異なる
客室面積18平方メートルの室内。部屋の広さからは考えられないクイーンサイズベッドでくつろげる。客室デザインは、全室異なる
客室面積18平方メートルの室内。部屋の広さからは考えられないクイーンサイズベッドでくつろげる。客室デザインは、全室異なる
浴室はユニットバスだが、壁面はタイル貼り。広さも1418サイズに匹敵する
浴室はユニットバスだが、壁面はタイル貼り。広さも1418サイズに匹敵する
ビジネスホテルにはまずないであろう、37型の液晶テレビ。ホテルのガイダンスや周辺情報もチェックできる
ビジネスホテルにはまずないであろう、37型の液晶テレビ。ホテルのガイダンスや周辺情報もチェックできる
ルームキーはICカードを使用。セキュリティレベルを高めた
ルームキーはICカードを使用。セキュリティレベルを高めた
身体の不自由な方の利用を考慮した部屋。水回りスペースをゆったり取っており、浴室の入口は3枚引き戸としている
身体の不自由な方の利用を考慮した部屋。水回りスペースをゆったり取っており、浴室の入口は3枚引き戸としている

「ちょっと贅沢」が好評、2,600室を突破

 「ホテルヴィラフォンテーヌ」は、もともと同社が保有していた狭小敷地の有効利用に端を発した事業。ビジネス街へのアクセス良好な立地に加え、一泊1万円前後からというリーズナブルな料金設定、贅沢な客室デザインと設備、朝食無料サービス、レイトチェックアウト(11時)、ヒーリングルームやレディースルーム設置といった差別化戦略が功奏し、全国にネットワークを拡大している。1997年開業の「心斎橋」(大阪市中央区)を皮切りに、今回開業した「新宿」で全国15施設、総客室数は2,609室に達した。

 「ホテルヴィラフォンテーヌ新宿」は、JR「新宿」駅から徒歩10分、都営大江戸線・東京メトロ副都心線「東新宿」駅から徒歩6分の、新宿区歌舞伎町に立地しており、ビジネスユースにはもってこいである。にも関わらず、ホテル周囲にはライバルとなるビジネスホテルはほとんど存在しない。それは、「歌舞伎町」という立地の特殊事情から来るものだ。

 言うまでもなく「歌舞伎町」は、日本最大の歓楽街であり、飲食店や風俗店が所狭しと立ち並ぶ。「ホテル」といえば、「ファッションホテル(ラブホテル)」という立地であり、ビジネスで宿泊しようというユーザーは多くはないだろう。しかし、交通アクセスそのものは利便性抜群であり、「周辺環境」にさえ目をつぶれば、ライバル不在なこともあり、ニーズは十分期待できたわけだ。
 現に、同ホテルの目前をはじめ、周囲一帯はファッションホテルだらけ。同ホテルはモノトーンの落ち着いた雰囲気でそういったホテルと一線を画しているが、ユーザーの「勘違い」を防ぐため、外観に宿泊料金の掲示していないほか、フロントもソファー1つ置かず、外部から十分に見渡せるようにしているという(フロントが丸見えのラブホテルはあり得ない)。これらの対策は、行政からの指導もあったようだ。

限られた面積でやすらぎの空間を

 飲食店跡地に建設された同ホテルは、地上10階建ての建物に66室の客室が用意されている。メインとなるのは、客室面積13平方メートルのDタイプと、同18平方メートルのSタイプ。これとは別に、身体が不自由な方の利用を前提とした客室(客室面積18平方メートル)が2室用意されている。

 ホテル内部は、外観同様、白と黒のモノトーンを基調としたデザインで、多くのヴィラフォンティーヌと共通のアイディンティティを持つ。ただ、「新宿」の場合、そのロケーションからか、少々派手な演出がなされている。
 そのひとつとして、ベッド頭上のクロスが全客室異なるものを使っており、アクセントとしている。また、同様に、ユニットバスにも部屋ごとに異なったタイルがアクセントとして貼り込まれている。部屋の雰囲気は、完全に宿泊特化型ホテルを凌駕している。

 記者が宿泊したのは、Sタイプの部屋。客室面積は、ビジネスホテルのそれと大差ないが、ベッドは幅160センチのクイーンサイズ、バスルームはいわゆる1418タイプと同等のゆとりあるもので、もちろんトイレは別になっている。このベッドと水回りのゆとりはなかなかのもので、実際宿泊した記者も、十分くつろげた。
 また、ビジネスホテルではおそらく最大級であろう37インチの液晶テレビが設置されるほか、ビジネスユースには十分なテーブルが据え付けられる。そして部屋のカギはICカードを採用しており、高級ホテル並みのセキュリティである。
 なお、障害者対応の客室は、水回りへのアプローチが車いす対応となっているほか、浴室のドアが引き戸で大きく開く。大きなソファーも設置される。

 また、ちょっと変わっているのが「朝食サービス」。従来のビジネスホテルでは、1階フロント近くにレストランスペースが設置されるのが普通だが、同ホテルの場合は前述した理由のため、1階はフロントのみ。ではどうするのか。
 なんとフロントでトレーに乗せられた朝食が宿泊者に手渡されるのだ。それを、部屋に持ち込み食べるのだという。記者は開業前の試泊だったため「未体験」に終わったが、フロントで朝食を受け取るというのは、なんだか不思議な感じがする(まるで、学校の給食のようだ)。もっとも、ルームサービス同様に部屋でゆっくり朝食を味わえるというのは、それはそれでいいのかもしれない。

ビジネスプラス「観光客」も期待

 宿泊料金は、Dタイプが、一泊朝食付きで1万円。Sタイプが、同1万5,000円(2名利用だと1万8,000円)。同じ歌舞伎町にある某ビジネスホテルは、シングル6,200円、デラックスツイン1万1,800円。価格面ではシティホテルよりかなり割安感がある一方、ライバルのビジネスホテルと比べると割高感を感じる。このあたりを、客室のアメニティとサービスでどこまでカバーできるかが課題となろう。

 「都内のどこにでもアクセスが容易な交通便の良さに加え、当ホテルのすぐ近くには、韓国タウンである大久保が控えています。ビジネスユースはもちろんですが、大久保エリアにいらっしゃる外国人観光客も取り込んでいきたいですね」と、同ホテル支配人の近藤光博氏は自信を見せる。(J)

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