記者の目

2008/6/30

自然とともに暮らす賃貸集合住宅

光・緑・風を採り入れ、省エネをコンセプトにした「森のとなり」完成

 東京都品川区。閑静な住宅が立ち並ぶ一角に、“長屋”形式の賃貸集合住宅「森のとなり」((株)都市デザインシステム、第一交通産業(株))が完成した。  全戸の窓一面に設備されたオリジナルルーバーが印象的な同物件は、住宅街において一際目立つ存在。じつはこのルーバーをはじめ、同物件にはじつにさまざまな「省エネ」に対する配慮と、「自然」と共存するための工夫が施されているのだ。  今回は、6月19日に行なわれた内覧会の様子をレポートする。

閑静な住宅街において一際目立つ、オリジナルルーバーが印象的な「森のとなり」外観
閑静な住宅街において一際目立つ、オリジナルルーバーが印象的な「森のとなり」外観
共用のエレベーターやエントランスがないため、住人はそれぞれの玄関からアプローチできる
共用のエレベーターやエントランスがないため、住人はそれぞれの玄関からアプローチできる
北向き住戸から見える公園の景色。窓一面の緑が何とも鮮やか
北向き住戸から見える公園の景色。窓一面の緑が何とも鮮やか
全面ガラス張りの水廻り。もちろんシャワーカーテンなどを付けることは可能だが、せっかくの光と明るさがもったいない!
全面ガラス張りの水廻り。もちろんシャワーカーテンなどを付けることは可能だが、せっかくの光と明るさがもったいない!
(左)北向きのルーバーは垂直仕様のため、外からの視線除けに効果的(右)南向きのルーバーは、日射をコントロールするため平行仕様
(左)北向きのルーバーは垂直仕様のため、外からの視線除けに効果的(右)南向きのルーバーは、日射をコントロールするため平行仕様
オリジナルのLED照明。電気代は蛍光灯の約10分の1
オリジナルのLED照明。電気代は蛍光灯の約10分の1

都心にいながらにして自然と親しむ

 東急目黒線「武蔵小山」駅から7~8分ほど歩くと、鮮やかな緑が目に飛び込んでくる。「林試の森公園」だ。「森のとなり」はその公園に隣接しており、通路を挟んだ2棟の集合住宅(総賃貸数28戸)となっている。
 
 敷地面積794.94平方メートル、地下1階地上3階建て。全戸がメゾネット2層(地下1階と1階、2階と3階)の造りで、専有面積は44.28~80.49平方メートル、間取りはすべて1LDK。
 “長屋”形式(別名「武蔵小山の長屋」)の同物件は、共用のエレベーターやエントランスを持たない。それぞれの玄関からアプローチできるため、ちょっとした一戸建て感覚を味わえる。
 
 何といっても圧巻なのは、「林試の森公園」に面した北向き住戸から見える、窓一面に広がった緑一色の景色だ。都内にいることを忘れ、まるで避暑地に来たかのような錯覚に陥ったほど。緑の放つマイナスイオンのせいか、空気までもが美味しく感じられた(気がした)。

 「森のとなり」の特徴の一つは、そうした自然を常に感じながら生活できることだ。
 例えば、洗面所と浴室が一体となった水廻りは全面がガラス張り。窓から漏れてくる光を存分に感じることができる。また、スリット階段を採用したことで、室内では日中、光を遮ることなく自然光の明るさを保てるという。
 床も、100%天然素材の木材を使用した無垢フローリングとし、木の風合いを演出している。

随所に散りばめられた「省エネ」対策

 「省エネ」を意識した点も、「森のとなり」の大きな特徴の一つ。
 各住戸には、オリジナルルーバーが設備されているのだが、じつは北向きと南向きの建物とで仕様を変えている。
 まず、道路に面した南向きのルーバーは平行仕様で、一部、跳ね上げの折戸となって開閉できる仕組み。つまり、夏場は太陽が当たらないよう、逆に冬場は光を採り入れて日射をコントロールすることで、CO2排出量の削減につなげようというものだ。
 
 一方、公園に面した北向きのルーバーは垂直仕様。こちらも、一部折戸で開閉可能なところまでは同じだが、「視線除け」という役割も持っている。斜め方向からは外にいる人が室内を覗いても、このルーバーが「銀色の壁」となって、中の様子を見えなくしてしまうという仕掛けがあるのだ。これなら、公園をジョギング、あるいは散歩している人の視線を気にせず、生活することができる。

 そのほか、室内環境を一定に保つため、サッシには高気密・高断熱効果のヒバ材を使用。また、オリジナルのLED照明を設備した箇所の電気代は、蛍光灯の10分の1に節約できるという。価格は通常の照明よりも少し高めだが、電球交換のタイミングも15~20年ということなので、長いスパンで考えると、低消費電力化とコスト削減を実現できるのではないだろうか。

賃料は16万7,000円~

 さて、気になる賃料は16万7,000~33万5,000円。ターゲットは単身者やDINKSとのこと。都心への利便性や周辺環境の良さを考慮するならば、決して高すぎる価格ではないと思われる。
 すでにエコ意識の高い人のなかには、都心のマンションを引き払い、こうした自然とともに暮らせる住宅に引っ越す人もいるのだとか。7月に控えた「洞爺湖サミット」の開催などにより、今後はますます環境問題への関心が高まっていくだろう。現在、ハウスメーカーが供給する戸建ての「エコ住宅」が増えているが、賃貸分野でも「省エネ」要素を採り入れたアパート・マンションなどが増えていくのではないだろうか。

 「住宅に限らず、オフィスやホテル、商業施設などにもエコを採り入れ、常に半歩先を見据えた事業展開を進めていきたい」((株)都市デザインシステム サスティナブル開発事業部マネージャー・黒田大志氏)という同社の取組みもさることながら、まずは7月上旬から入居募集を始めるという「森のとなり」に対する反響が気になるところだ。 (I)

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