記者の目 / 開発・分譲

2008/8/12

16年ぶりの「リゾートマンション」供給

三井不レジ、新ブランド「パークシーズンズ」で再参入

 三井不動産レジデンシャル(株)が、実に16年ぶりとなるリゾートマンションの供給を行なった。新ブランド「パークシーズンズ」を立ち上げて再参入するもので、今夏第1弾となる「パークシーズンズ箱根強羅」(神奈川県足柄下郡、総戸数43戸)の販売を開始した。  団塊世代のリタイア、ライフスタイルの多様化、単身世帯の増加等によるマンションニーズの細分化に先手を打ったもの。その中身は、バブル時代のリゾートマンションとは、ひと味も二味も違ったものだった。

「パークシーズンズ箱根強羅」完成予想図
「パークシーズンズ箱根強羅」完成予想図
ラウンジ完成予想図。本格的なマントルピースはリゾートマンションならでは
ラウンジ完成予想図。本格的なマントルピースはリゾートマンションならでは
露天風呂を備えた大浴場2つと、貸切風呂が用意される
露天風呂を備えた大浴場2つと、貸切風呂が用意される
モデルルームのリビングダイニング。ショートスパンを感じさせないよう工夫された間取り
モデルルームのリビングダイニング。ショートスパンを感じさせないよう工夫された間取り
玄関ホールは居室と高さが揃えられ、キッチンまで天然石タイルが貼り込まれている。土間のような使い方もできるし、開放感もある
玄関ホールは居室と高さが揃えられ、キッチンまで天然石タイルが貼り込まれている。土間のような使い方もできるし、開放感もある
リビングに面した和室は、上げ和室として腰かけのようにも使える。引き戸を閉めることで寝室にもできそうだ
リビングに面した和室は、上げ和室として腰かけのようにも使える。引き戸を閉めることで寝室にもできそうだ
総戸数の半分以上が展望風呂を備える
総戸数の半分以上が展望風呂を備える
マンション建設地(エントランス階相当)から明星ヶ岳を望む。箱根大文字焼が見える。手前の樹木は、敷地内の既存樹でそのまま残される
マンション建設地(エントランス階相当)から明星ヶ岳を望む。箱根大文字焼が見える。手前の樹木は、敷地内の既存樹でそのまま残される

「非日常」のなかの「日常」

 「今回発表するパークシーズンズは、いわゆるバブル時代のリゾート商品とは、まったく違う商品性を持ったもの」――同社執行役員・事業創造部長の山崎達男氏は、新ブランド「パークシーズンズ」の特性について、こう語る。

 「パークシーズンズ」は、ユーザーのあらゆる住ニーズに対応するためのブランド全方位戦略を進める同社が、都市型コンパクトマンションブランド「パークリュクス」とともに新設したリゾートマンションブランドだ。
 単身世帯の増加、少子高齢化の進展、そして団塊世代のリタイアにより、リゾートに対するニーズが急増していることは、さまざまなデータによって明らかだ。
 しかし、ユーザーのリゾートマンションに求めるものは、バブル期のリゾートブームのころからは、大きく変容している。「永住志向の人が増えたのはもちろんですが、その他のユーザーも、ロングステイする傾向が強くなってきました。そうしたなかで重要になっているのは、駅へのアクセスなどの利便性やソフト面のサービスです」(山崎氏)。

 1年に数回しか使わないのであれば、どんなに山奥だろうが、生活利便施設がなかろうが構わない。だが、永住、あるいは週末利用を繰り返すユーザーは、「非日常」のリゾートライフにも、「日常」の利便性を求めてくる。そこで、同社の「パークシーズンズ」では、都心エリアから新幹線・車で1~2時間でアクセスでき、かつ最寄り駅に近い立地選定と、都心の分譲マンションと同等の生活利便性を実現するソフトサービスを備えることを最低限のハードルとした。

「箱根大文字焼」の明星ヶ岳を望む立地

 新ブランド第1弾となる「箱根強羅」は、箱根登山鉄道「強羅」駅から徒歩4分、個人の別荘跡地に建設される、地上5階地下1階建てのマンション。「強羅」駅は、箱根山の中腹にあるため、駅にフラットでアクセスできるエリアは限定される。同マンションは、駅との標高差がほとんどなく、かつ距離も近いという大きなアドバンテージがある。この立地であれば、車を運転できない主婦でも、電車だけで訪れることもできるからだ(バス・タクシーは意外に不便なものだ)。

 建設地は、東に「箱根大文字焼」で有名な「明星ヶ岳」を望む傾斜地で、正面を遮るものは何もない。マンションは、この明星ヶ岳にバルコニーを向け建設される。東を正面にするというのは、都心の分譲マンションではまず考えられないが、リゾートという「非日常」の空間では、日当たりより眺望や四季の移ろいが重視されるのは当然だ。

 建物は、東傾斜地に沿うように建てられるため、前面道路と同じ高さとなるエントランスは3階部分となる。リゾートマンションである以上「非日常」の演出は重要、ということで、2層吹き抜けのエントランスには、正真正銘、ホンモノのマントルピース(暖炉)が据えられる。
 また、天然温泉を引き込んだ2つの露天風呂・大浴場、貸切利用を前提とした浴場と3つの共同浴場を設けたのは、湯処・箱根の「お約束」。バルコニーは、開放感を引き出すため、ガラス貼りとしている。

 住戸は、1LDK~3LDK、専有面積62~116平方メートル。中心となるのは、60平方メートル台の1LDK。ほとんどの住戸が、5,500~6,000ミリのショートスパンだが、この狭さを感じさせず、ホテルのような開放感が味わえるよう工夫されている。たとえば、玄関はあえて框を設けず、他の部屋と同じレベルの高さに揃え、かつキッチンまで300ミリ角の天然石タイルを連続して貼り込み、土間としても利用できる空間として演出した。リビング隣接の和室は、腰高の段差と吊り引き戸により、用途に応じた使い分けのできるスペースにしている。

 水回りは、全住戸の半数以上をビューバスとしているほか、洗面所スペースも広く採り、蹴り込みを深くして座椅子を置けるようにしている。1住戸に2つ除湿機を設置するなどの心づかいも嬉しい。フローリングや収納・建具のグレード感は、同社の中高級マンションとほぼ同じ。躯体性能も、同社の標準的なもの。

 前記したとおり、ソフトサービスを強化しているのも特徴。ランドリーサービスや買い物代行、日常品販売、レジャーツール(BBQセットなど)レンタル、ラウンジでのカフェサービスなどがそれ。また、管理スタッフの常駐や24時間警備など、建物管理とセキュリティレベルは、通常のマンションと何ら変わりがない。ユーザーは、「非日常」のなかで「日常生活」が送れるというわけだ。

年100戸ペースをコンスタントに供給

 同マンションの販売価格は、3,100万円~1億1,780万円。最多価格帯は3,000万円台。坪単価は210万円。同じ強羅エリアで販売されている他社新築マンションは坪190万円台だから2割ほど高い。ただし、そちらのマンションは駅から急な上り坂を9分歩く立地で、日常の利便性は格段に劣る。立地のプレミアムと考えれば「新価格」とは言い切れない。50歳代の夫婦を中心に、350組の事前反響を得ている。すでに、250戸分ほどの仕入れが終わっており、今後も年間100戸ペースで販売を継続していく。

 同社の分析通り、マンションユーザーのニーズはますます細分化し、「日常」と「非日常」のクロスオーバーが加速度的に進行していけば、もはや「リゾート」「余暇」のためのマンションなどという概念は廃れていくことになろう。あとは、こうした「21世紀型」のマンションライフが、国民のどのレベルにまで浸透していくかということ。こればかりは、国や企業の思うままにはならないだろうが、かつて繰り返された「リゾートの興亡」を見ることはない、と断言しておきたい。(J)

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