記者の目 / 開発・分譲

「マルハビ」に求められる住まいとは?

「別邸」利用に特化した、コスモスイニシア「京都清水五条」

 「マルチハビテーション」(二地域居住)の提案は、かなり以前からなされてきたが、団塊世代のリタイアや、余暇生活の充実を志向するユーザーの増加を受け、ここにきてディベロッパーや流通会社も積極的にマルハビ用不動産のセールスに力を入れてきた。今回紹介する(株)コスモスイニシアの分譲マンション「アーバントラベライフ京都清水五条別邸」(京都市下京区、総戸数40戸)も、富裕層の「別邸」利用を意識した商品企画がウリ。分譲マンションの差別化戦略としても示唆するところが多い物件だ。

「アーバントラベライフ京都清水五条別邸」外観。京都の繁華街、四条烏丸に徒歩圏の1住商混在地で、周囲は一般的なファミリーマンションも多い中、別邸ユーザーにターゲットを絞った付加価値で勝負する
「アーバントラベライフ京都清水五条別邸」外観。京都の繁華街、四条烏丸に徒歩圏の1住商混在地で、周囲は一般的なファミリーマンションも多い中、別邸ユーザーにターゲットを絞った付加価値で勝負する
限られた広さながら、メインエントランスはホテル調の設え。季節季節の生け花が飾られる
限られた広さながら、メインエントランスはホテル調の設え。季節季節の生け花が飾られる
1DKのモデルルーム。ダイニングと居室を仕切る扉はガラススクリーンとして視覚的広さとホテル調の雰囲気を演出。キッチンの上部にはロールスクリーンがあり、必要に応じて隠すことができる
1DKのモデルルーム。ダイニングと居室を仕切る扉はガラススクリーンとして視覚的広さとホテル調の雰囲気を演出。キッチンの上部にはロールスクリーンがあり、必要に応じて隠すことができる
44平方メートルの1DKは、寝室と浴室とをウォークインクローゼットでつなぐ動線を確保
44平方メートルの1DKは、寝室と浴室とをウォークインクローゼットでつなぐ動線を確保
2LDK以上のプランは、居室1室がまるごと「オーナーズガード」となる。アナログ錠で施錠でき、第三者の立ち入り時に貴重品や目に触れさせたくない私物を収納できる
2LDK以上のプランは、居室1室がまるごと「オーナーズガード」となる。アナログ錠で施錠でき、第三者の立ち入り時に貴重品や目に触れさせたくない私物を収納できる
別邸利用のユーザーは「家具ごと欲しい」というニーズも多いため、インテリアコーディネイターによる家具付きプランも選べる
別邸利用のユーザーは「家具ごと欲しい」というニーズも多いため、インテリアコーディネイターによる家具付きプランも選べる
郵便ポストを兼ねた宅配ロッカーは、電子キーで自動的に開錠。プライバシーを気にするユーザーが多いため名札の類は出さない。宅配ロッカーは、預かり期間が一般的なマンションより長いと想定し、個数を倍にしている
郵便ポストを兼ねた宅配ロッカーは、電子キーで自動的に開錠。プライバシーを気にするユーザーが多いため名札の類は出さない。宅配ロッカーは、預かり期間が一般的なマンションより長いと想定し、個数を倍にしている

一般物件とどう差別化するか?

 同物件は、京阪電鉄本線「清水五条」駅徒歩4分に立地する、地上11階建てのマンション。建物は、2016年9月に竣工済み。建設地は、京都中心部、四条烏丸を中心としたいわゆる「田の字エリア」外縁部に接する住商混在地だ。特段リゾート立地ではないが、京都駅、また京都の主要な観光地へのアクセスはいい。敷地自体は、東側を桜並木で有名な高瀬川に接し、鴨川越しに東山を望む。

 建設地は画廊跡地で、14年に取得していた。周囲には、一般的な分譲マンションも多いが、マンション用地高騰の昨今、地元の一般的なマンションユーザーに売るような価格設定は難しく、何らかの付加価値づけが必要になる。そこで同社は、富裕層のセカンドハウスや、仕事とプライベートを分けるマルハビユーザーや「京都ファン」の「別邸」としての利用に特化したハード・ソフトを用意することで、首都圏を中心とした全国各地の富裕層を主要ターゲットとして販売を展開しようと計画した。

家事代行サービスを全住戸に

 最大の特色は、専有部内家事代行サービス「スタンドインサービス」を、全住戸に対する管理サービスに組み込んでいることだ。
 すべての所有者は、同サービスの利用料として管理費と一緒に月額6,700円を徴収される。これにより、週3日滞在するスタッフに依頼して、毎月1時間の家事代行が受けられる。
 サービスメニューは、清掃・ゴミ出し・買い物代行・洗濯など細かく用意され、所有者が自由に組み合わせることができる。また、1時間を超えるサービスも有料で受けられる。使わなければ翌月に繰り越せる。管理会社の子会社がすべての住戸対象に、直接サービスを提供することで、サービス料金を抑え、料理やキッズシッターといった特殊なサービスも、別会社を使って提供する。これらにより、セカンド利用者の専有部コンディション維持を容易にしている。
 とはいえ、すべての所有者から均等に料金を取ることに「定住者」から文句が出ないか心配にもなるが、水回りの清掃や買い物代行などは、シングル・DINKSにとってはありがたいはずだ。日常的にプロが清掃を行なうことで、専有部内の資産価値維持にもつながるだろう。

 ハードでは、すべての住戸内に「オーナーズガード」を設定している点が特徴。セカンドユーザーは、自分が使わない時に住戸を第三者に貸し出すケースが多い。そうした第三者利用時にオーナーの私物などを収納するため、玄関錠で施錠可能な空間が「オーナーズガード」だ。
 1DKや1LDK住戸は収納もしくはウォークインクローゼット、2LDKは居室の1つを充てている。他人の目に触れさせたくないものや貴重品だけ納めればいいのだから、十分な広さだろう。このオーナーズガードにはもう一つ工夫がある。この物件は、玄関をアナログキーに加え電子キーでも開けることができるが、オーナーズガードはアナログキーでしか開けられない。それにより、家事代行業者等の利用者には電子キーを使わせることで、盗難等を防ぐことができる。

 住戸は、専有面積35平方メートルの1DK、43平方メートルの1LDK、44平方メートルの1LDK、56平方メートルの2LDKの1フロア4タイプ。目の肥えた富裕層もターゲットとなるため内廊下方式を採用した。すべての住戸は浴室窓付き。廊下面積を極力減らして有効面積を拡大しているほか、ガラススクリーンの間仕切りやキッチンを覆い隠す布スクリーン、ニッチなどを使い、限られた面積の中、ホテル調の雰囲気を演出している。
 建物間口は小さいながら、エントランス・サブエントランスはホテル調の設え。また、宅配ロッカーも、一般的なマンションより受け渡しまでの期間が長くなると想定し、設置率を2倍にしている。空間コーディネイターがセレクトした家具付き販売も行なう。

「第三者管理」を導入。外部監査法人が運営チェック

 また、セカンド利用が多く所有者が不在の事が多いこの物件では、ここ数年話題となっている「第三者管理」が本格的に導入されるのも特筆すべき点だ。

 管理会社((株)コスモスライフサポート)が理事長となり、外部監査法人が管理組合運営をチェックすることで、居住者を含む所有者が役員にならずに円滑な組合運営を実現する。同社は運営代行費として、月額1,770円を徴収する。

 さて、販売価格2,810万~5,980万円、坪単価約300万円をどうみるか。田の字エリアの新築マンション価格はうなぎのぼりだが、一般的なファミリーマンションと考えると決して安い価格設定ではない。勢い、キャッシュリッチな富裕層にその付加価値をどれだけ訴求できるかにかかっているが、同社の狙いはひとまず成功したようだ。
 同物件は、竣工後のプレセールス開始から、60歳代を中心に、企業経営者、ライセンサーなど600件超の反響を得て、2016年11月初旬のモデルルームオープンから95組が来場。すでに25戸が契約済みと来場歩留まりはかなり高い。購入者は首都圏が6割と断トツ。反響の9割が京都市外から。定住希望者は2割弱にとどまる。資産保全目的での購入や、子息の下宿代わりに購入するユーザーも多いという。

◆   ◆   ◆

 マンション適地の取得はますますハードルは上がり、建築費も価格もじわじわと上昇が続くだろう。そうした中で、価格上昇分をどのような付加価値でカバーできるはディベロッパーの知恵の出しどころ。同物件は、そのヒントのひとつといえよう。(J)

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