記者の目

2023/10/3

原油価格下落もガソリン価格上昇の怪(前編)

 ガソリン価格の上昇が止まりません。史上最高値の記録は、2008年8月の185円10銭でしたが、2023年9月にその記録が塗り替えられました。
 基礎的な燃料の高騰ゆえ、生活のあらゆる面で影響を受けます。政府もこの状況は看過できないとの認識のようで、8月22日に岸田文雄首相から萩生田光一政調会長に対し、ガソリン価格を抑制する補助金制度を月内にまとめるよう指示がなされた模様です。
 ところで、ガソリン価格は複雑な税体系などが複雑に絡み合い成り立っています。経済ジャーナリストで、月刊不動産流通で「不動産事業者と地域金融機関のWin-Winな関係に向けて」を連載中の佐々木城夛氏に、ガソリン価格の動向や価格の仕組みなどについて聞きました。

◆原油価格下落なのに上昇する国内のガソリン価格

 ‐‐ガソリン価格の高騰について、連日報道がされています。

 「時間の経過と共に価格が右肩上がりで上昇している…と感じている方が多いと思います。国内で新型コロナ感染が初めて検知された2020年1月からのガソリン価格の動きを週次で見てみましょう。

図表1 1リットル当たり全国平均レギュラーガソリン現金週次価格推移(単位:円)

 ぱっと見でも明らかなとおり、20年5月を底に、以降ほぼ一貫して上昇しています。底を打った20年5月は全国に緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出の自粛が要請された時期に当たります。自家用車での移動も減り、ガソリン需要が大きく落ち込んだことが反映されたものと推測できます。ガソリン価格も、需給動向が反映されますので」

 ‐‐その後も一貫して上昇している理由は何でしょうか。

「さまざまな要因が複合的に重なり合っています。原油価格は世界全体の需給動向が反映されます。その原油相場自体は、2022年6月頃より軟調に推移しています。原油価格自体は、実のところ低下しているのです」

 ‐‐えっ、そうなんですか?

 「はい。低迷するマーケットですが、戦費調達を余儀なくされているロシア、米国との関係が悪化しているイランなどが、軟調な相場の下でも原油を増産しているようです。そんな中で価格を下支えするため、OPEC(石油輸出国機構)加盟国とOPEC非加盟の産油国で組織されている“OPECプラス”では、今年4月に自主的な追加減産を発表しているほどです」

 ‐‐でも、日本ではガソリン価格は“爆上がり”しています。

ガソリン価格の上昇が止まらない…(写真はイメージ)

 「その背景にあるのは、
1.  外国為替相場が円安に移行している
2.  政府からの補助金(燃料油価格激変緩和補助金、通称:ガソリン補助金)が23年9月末の終了に先んじて徐々に引き下げられている
という、主に2つの要因によるものと考えられます。」

 ‐‐円安の影響は大きいように思います。

 「非常に大きいですね。原油はドルで決済されますので、日米の金利差が拡大して円が弱くなる状況では、ダメージがさらに大きくなります。

対米ドル為替市場の状況により、ダメージがさらに大きくなっている…(写真はイメージ)

 余談ですが、ガソリンを、米国や英国ではpetrol(ペトロール)と呼びます。そして、産油国の原油から得た資金のことを日本では“オイルマネー”と呼びますが、米国や英国では“petrodollar(ペトロダラー)”と呼びます。“dollar”は米ドルのことで、これは、先に触れたとおり、原油取引が米ドルだけで行なわれることが語源となっています」

(つづく)

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