不動産ニュース / その他

2010/3/19

平成22年地価公示に業界・各社がコメント

 国土交通省が18日に発表した「2010年地価公示」結果について、業界団体・各社のトップから以下のようなコメントが発表された。

【業界団体】
(社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏
(社)全日本不動産協会 理事長 川口 貢氏
(社)不動産協会 理事長 岩沙弘道氏(三井不動産(株)代表取締役社長)
(社)不動産流通経営協会 理事長 大橋正義氏

【各社】
東京建物(株) 取締役社長 畑中 誠氏
三菱地所(株) 取締役社長 木村惠司氏
(順序不同)


◆(社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏

 平成22年の地価公示は、全国の標準地について、前回同様、ほぼすべての地点において、年間で下落となった。
 年間の変動率でみると、各圏各用途の平均が前回よりも下落率が大きくなっており、サブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機の影響から、日本経済の回復が立ち遅れているとの認識を持っている。
 このような状況下、去年、本会は、この資産デフレの状況を克服し、不動産取引市場の活性化を図るために、都道府県宅建協会と連携し、政府に対して、平成22年度の税制改正や土地住宅政策について提言を行なった。
 その結果、政府税制大綱において、適用期限を迎える各種税制の特例措置の延長と住宅取得資金に係る贈与税の非課税枠の拡大という成果を獲得することができた。
 また、政府の「明日の安心と成長のための緊急経済対策」で、住宅版のエコポイント制度の創設や優良住宅取得支援制度「フラット35S」の金利の大幅な時限的引き下げが盛り込まれることとなった。
 さらに、本会では、激変する不動産市場と複雑化、高度化する不動産業を取り巻く環境変化のなかで、政策要望の実現を図るために、昨年から全宅連不動産総合研究所において、政策提言型の研究を開始している。
 具体的には、良質な既存住宅流通促進や、地方の不動産市場活性化等に資する土地住宅税制のあり方に関する研究、ならびに消費者保護を図るとともに流動性を工場させて健全な不動産市場を構築するための、不動産全般を網羅する基本ルールである「不動産取引法」の研究を実施している。
 また、国土交通省社会資本整備審議会における検討を踏まえ、賃貸不動産管理業の法制化に向けて「賃貸不動産管理制度に関する調査研究報告書」をとりまとめたほか、全宅保証とともに取引保証制度に関する調査研究も実施している。
 今後は、不動産市場の活性化が、国民の生活基盤の確立と日本経済のけん引役として重要であるとの認識のもと、これらの研究による成果を踏まえ、地価の安定・健全化と住宅不動産の流通促進に資する施策について、関係機関と連携しながら提言活動を展開していく考え。


◆(社)全日本不動産協会 理事長 川口 貢氏

 全国ほぼ全地点で前回に引き続き下落となっており、地方圏よりも三大都市圏のほうが下落率が大きくなった。しかしながら、昨年前半よりも後半の方が下落率が縮小傾向にあることに注目したい。景気の二番底の懸念の後退と贈与税の非課税枠の拡大が購入意欲を刺激して、徐々に需要を後押ししていると思われる。住宅版エコポイントがさらなる需要を喚起することに期待したい。


◆(社)不動産協会 理事長 岩沙弘道氏(三井不動産(株)代表取締役社長)

 今回発表された公示地価では、昨年の地価公示同様、ほぼすべての地点において下落となった。年間平均変動率では、全国平均で住宅地が▲4.2%、商業地が▲6.1%となり、各用途で昨年よりも下落率が大きくなった。
 三大都市圏では、下落傾向は続いているものの、昨年前半よりも後半のほうが下落率が小さくなっており、改善の兆しも出てきた。
 わが国経済は、景気は着実に持ち直してきているが、雇用情勢は依然厳しい状況にあり、海外景気の下振れ懸念、デフレの影響など、景気を下押しするリスクが存在することに留意する必要がある。こうしたなか、首都圏のマンション市場については、在庫が7,000戸を切る水準まで着実に減少し、平均契約率も昨年5月以降70%程度で推移するなど回復傾向にある。オフィスビル市場は、空室率の上昇が続いているが、景気が持ち直してきていることから、今年中に回復に向かうことが期待される。
 昨年12月に「新成長戦略」が閣議決定され、国土交通省でも成長戦略会議において「住宅・都市」分野が柱の一つとして、精力的な議論が重ねられている。政府には、戦略実行のため具体的施策の早期実施をお願いしたい。
 われわれも、国家的な要請である「国際競争力のための都市の機能更新」、「良質なストック形成のための住宅・都市整備」、「低炭素社会への移行のための都市環境性能向上」等の観点から、新成長戦略の実現に向け努力してまいりたい。


◆(社)不動産流通経営協会 理事長 大橋正義氏

 今回の地価公示においては、全国各用途にわたり前回よりも下落率が拡大し、とりわけ東京都、大阪府をはじめとする大都市圏の商業地の落ち込みがより顕著となった。
 これらの地価下落の背景としては、わが国経済が世界的な金融危機の深刻化や世界同時不況の影響から脱することができず、デフレ状態に陥っていることを如実に反映したものと考えられる。
 不動産流通市場は、(1)所得に対する先行き不安や株価下落等による資産価値の減少による住宅取得環境の悪化、(2)企業業績の悪化による設備投資の先送りに伴う取引の減少、(3)金融機関における住宅ローンを含めた不動産融資の厳格化などによって、新築マンションの売れ行き不振や、事業用不動産取引の減少を招来し、低迷した状況となっている。
 ただ、半年ごとの変動率は三大都市圏では、住宅地、商業地とも下落率は縮小しており、やや明るい兆しも見えつつある。首都圏の既存住宅流通市場においても、取引件数は回復傾向にある。
 今後、この明るい兆しを確かなものとし、地価の回復、安定化が図られるためには、何よりも着実で自律的な景気回復が喫急の課題であり、内需拡大の柱となる不動産市場の活性化が必要不可欠である。そのためには、不動産流通業界として、09年12月の「明日の安心と成長のための緊急経済対策」を生かし、既存住宅流通の促進に取り組むとともに、政府における予算・税制等による継続的な政策支援が望まれる。


◆東京建物(株) 取締役社長 畑中 誠氏

 日本経済は、緩やかな回復基調にあるものの、デフレ傾向、雇用環境の厳しさが続くなど、未だ予断を許さない状況にある。
 地価については全国的に下落が続いており、三大都市圏では下落幅が縮小傾向にあるものの、依然厳しい状況は続いている。
 不動産市場においては、都心部ではオフィス空室率が過去最大となったが、底打ちの兆しは見えてきたと感じている。また、分譲マンションについても、首都圏ではモデルルームへの来場者が増加しており、新規用地の取得も再開されるなど、回復基調にある。
 しかし、地方圏ではオフィス、住宅ともまだまだ厳しい状況が続いている。
 また、J-REIT市場においても、新投資口、投資法人債の発行により新規物件の取得が行なわれ、再編も進むなど、正常な状態に戻りつつある。透明性の高いJ-REITの復活により、不動産投資市場が活性化することに期待している。
 新政権が発足し半年が経過したが、経済成長戦略の具体策が未だ不透明。地価が正常に戻るためには、日本経済の回復、不動産市場の安定化が不可欠であり、そのための税制支援、規制緩和、投資環境の整備を実施していくことが望まれる。


◆三菱地所(株) 取締役社長 木村惠司氏

 公示地価は、全国平均では商業地・住宅地ともに昨年よりも下落幅が拡大した。ただし、国内景気の持ち直し傾向が続くなか、昨年後半からは下落幅が縮小傾向にある。
 不動産投資市場は未だ低迷しているものの、金融市場が安定しつつあることから、レンダー、投資家ともに徐々に姿勢を改善させている。分譲マンション市場は実需層を中心に回復傾向にある。事業者が土地を仕入れる動きも見られ、今後は新規供給が増える見込みである。オフィス市場は空室率の上昇傾向が続いているが、実体経済の回復傾向に伴い、年内に回復することを期待している。
 地価下落は、投資や消費マインドの冷え込みを招き、日本経済の回復に影響を与えることも懸念される。「住宅・都市」分野の成長戦略は、現在、国土交通省成長戦略会議においても議論が進められているが、都市の国際競争力を高め、住宅・不動産市場の安定的な成長に向けた早期の政策立案と実行を期待したい。

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