海外トピックス

2011/12/20

vol.193 アメリカの子供部屋

幼児の子供部屋には鮮やかな色彩をよく使う。自分たちでペンキをぬったゆり椅子や、転んでもけがをしないように柔らかい布で覆ったベッド、長椅子など配してある。オハイオ州のバーマン家
幼児の子供部屋には鮮やかな色彩をよく使う。自分たちでペンキをぬったゆり椅子や、転んでもけがをしないように柔らかい布で覆ったベッド、長椅子など配してある。オハイオ州のバーマン家
お友達沢山をテーマにした12歳のレイチェルの部屋。右側には昆虫が沢山飼われている(イリノイ州シカゴ市。以下同)
お友達沢山をテーマにした12歳のレイチェルの部屋。右側には昆虫が沢山飼われている(イリノイ州シカゴ市。以下同)
レイチェルと母親のミシェール。両親共にデザイナーだが、レイチェルは科学に興味を示している
レイチェルと母親のミシェール。両親共にデザイナーだが、レイチェルは科学に興味を示している
もの作りがテーマの女の子らしい部屋。沢山の手芸品が飾られている。壁もたんすも母親と共にペンキを塗ったそう
もの作りがテーマの女の子らしい部屋。沢山の手芸品が飾られている。壁もたんすも母親と共にペンキを塗ったそう
高校3年のエリックの部屋。ロックミュージックと弁論が大好きなティーンエィジャーだ
高校3年のエリックの部屋。ロックミュージックと弁論が大好きなティーンエィジャーだ
エリックの部屋は手の届く所にエレキギターが置いてあるシンプルな子供部屋
エリックの部屋は手の届く所にエレキギターが置いてあるシンプルな子供部屋

子供部屋は個性を育て、表現する場所

アメリカの子供部屋にはそれぞれ“テーマ”がある?!  日本だと子供部屋のスペースがあるだけでも幸運で、さらに子供が部屋を“テーマ”に従って飾り付ける、など考えも及ばないだろう。アメリカは土地が広いから家も広い、と言ってしまえばそれまでだが、子供部屋にはアメリカ文化が反映されているようだ。 生まれた時から子供は自分の部屋を持ち、成長するに従って自分で部屋を飾り付け個性を表現してゆく。親は子供が他人と「違うこと」を矯正するどころか、むしろ「違い」にこそ個性を見出す気風。また、子供に部屋を自由にさせる分、部屋の管理には責任が伴う事、つまり整理整頓を教え込もうと努力する様子がうかがわれる。

親子でも、スペース、生活の違いが明確に

赤ちゃんは子供部屋に置かれたベビーベッドに寝る。たいていの家は2階が寝室だが、1階で食事や家事、団らんをする時に、子供の心音が聞こえる小さな機械を常に携帯している母親もいる。心音の調子が変わればすぐに2階の赤ちゃんの部屋にかけつけるわけだ。 子供が成長するにつれて、大人の部屋と子供の部屋、大人の時間と子供の時間ははっきりと分けられてゆく。夜は、父親か母親が子供部屋のベッド脇で本を読んだり話をしてあげて、寝る時間になるとキスをして明かりを消し子供部屋のドアを閉める。 幼児が夜遅くまで起きていて大人のTV番組を見ている、などという光景はアメリカの家庭では考えられない。子供が起きてきても即子供のベッドに追いやられてしまう。 親子とはいえ、割り切る部分は割り切り、子供達をベビーシッターにまかせて親は外出、大人同士で楽しむ時間を持つ。

「自分の城」づくりは、子供にとって大事業

親は子供の意見をよく聞く。例えばマクドナルドで後ろに長い列が出来ていても幼児に欲しいものを我慢強く聞いている親をよく見かける。幼児でも自分が望むものを言葉で親に説明しなければならないというしつけだ。 子供部屋の飾り付けに関してはいきおい個性的になるから、親が顔をしかめるような色彩――カーテンからテーブル、ベッドカバーまでホットピンクだらけ、…などという羽目にも。さらにお花畑、サーファーガール、ハリウッド、お姫様、海の底、トロピカルビーチ、不思議の国のアリス、宇宙空間、サファリ、ヒッピィ…、たくさんの選択が…。 大掛かりなものになると、芝居の大道具のような城やキャビンをセットしたり、インテリアデザイナーに依頼する場合もあるらしい。テーマに沿って部屋をかざりつけるには多くのアイテムが必要。自分の小遣いで少しずつ買いそろえたり、友達からゆずってもらったり、誕生祝いに親や祖父母におねだりすることも。ポスターは部屋のイメージ改造に最も有効だ。ペンキを塗るのも雰囲気を変えられる。 自分で工作するDIY (Do It Yourself)のウェブサイトが現在大流行だ。とりわけ5,000円では? 2万円では?などと、価格別のDIYの紹介や、ビデオでDIYの工程が見られるのは役に立つ。親子で机を作ったりカーテンを縫うなど経済的な上に、一緒に何かを作り上げる喜びがあるに違いない。

片付け・整理についてのしつけもしっかり

子供達は日々成長しておもちゃや衣類、学校のものなど際限もなく増えて行く。親が片付けるのは簡単だが、子供に自主的に片付けさせるのは頭痛のタネ。 一番散らかりやすい衣類について、整理専門家ベッツィ・フェインのアドバイスはこうだ。 (1)子供部屋にある衣類を全部引っ張り出して、それらを写真に撮る。 (2)大きなプラスチックの箱を4つ用意する。取っておくもの、捨てるもの、売るもの、寄付するものを子供に分類させる。 (3)3つの箱は母親が処分するが、取っておくものの衣類の箱を子供に6つに(箪笥の引き出しが6つ)分類させる。 (4)6つに分類された衣類をたたんで6つの引き出しにそれぞれ納める。 (5)最後に写真を撮って、どれだけきれいに始末できたか最初の写真と比べ成果を確認。 このように、子供が片付けやすくできるように親はしばしば手を貸す。コートや帽子をかけるフックを低い位置に変えれば、3歳の子供でも自分でコートをかけられるし、洋服ダンスの扉をはずして棒を上下2段に渡し、上の段にはT-シャツやセーターをハンガーにかけ、下の段にはズボンをハンガーにかければ、子供はひと目でその日に着る服を自分で選べる。アメリカ人の育児は子供に個性の表現と自立を強くうながすが、そのかげには親の涙ぐましい努力があるのだ。


<参考資料>
=http://www.monkeysee.com/play/13965-organize-kid-s-room-sorting
=http://www.hgtv.com/designers-portfolio/kids-rooms/index.html
http://www.marthastewart.com/271723/organizing-kids-rooms
=http://girlsthemebedrooms.com/
http://kidsthemebedrooms.com/
http://www.potterybarnkids.com/room/rom/


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com


明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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「海外トピックス」を更新しました。

サントスの「動く博物館」と中心街の再活性化【ブラジル】」を更新しました。

ブラジル・サンパウロ州のサントスでは、旧市街地2.8キロをめぐる「動く博物館」が人気となっている。1971年には一度廃止された路面電車を復活して観光路面電車としたものだが、なんと日本から贈られた車両も活躍しているという。