海外トピックス

2012/4/4

vol.200 女性支援のサービス業

シカゴ市よりアートの貢献で表彰され、口上を述べるライラ・クッチマさん。市の責任者も女性(イリノイ州シカゴ市)
シカゴ市よりアートの貢献で表彰され、口上を述べるライラ・クッチマさん。市の責任者も女性(イリノイ州シカゴ市)
幅広い年齢層の女性達が数多く働く不動産会社のセンチュリー21(イリノイ州リバティビル市)
幅広い年齢層の女性達が数多く働く不動産会社のセンチュリー21(イリノイ州リバティビル市)
コールドウェルバンカー社のベテラン不動産エージェント、マリージョーさん。仕事に加え、キルトでも一流の腕前を誇る(イリノイ州シカゴ市)
コールドウェルバンカー社のベテラン不動産エージェント、マリージョーさん。仕事に加え、キルトでも一流の腕前を誇る(イリノイ州シカゴ市)
庭の手入れを代行するメキシコ人達の“ランドスケーパー”。冬は雪かきをする(イリノイ州シカゴ市)
庭の手入れを代行するメキシコ人達の“ランドスケーパー”。冬は雪かきをする(イリノイ州シカゴ市)
職業として結構忙しい“ドッグウォーカー”(イリノイ州シカゴ市)
職業として結構忙しい“ドッグウォーカー”(イリノイ州シカゴ市)
vol.182で紹介したが、長年“クリーニングレディ”として暮らしを支えたきたメキシコ人のマリアさん(イリノイ州シカゴ市)
vol.182で紹介したが、長年“クリーニングレディ”として暮らしを支えたきたメキシコ人のマリアさん(イリノイ州シカゴ市)

最前線女性を支える代行サービス業

アメリカでは多くの女性達が職場の最前線で働く。それを可能にするには家回りの仕事を代行する “サービス業” あってこそ。年若く専門の分野で男性を何人も部下に持ち、ばりばりと仕事をこなしている女性も決して少なくないが、かといって仕事一途といえばそうではなく、独身、既婚にかかわらず、自分の時間も存分に楽しんでいる様子。夫や子供達と時間をやり繰りしてあちこち精力的に出かける女性も多い。 また、不動産業界には女性が多く、2011年のNAR(全米リアルター協会 www.realtor.org )の調査によると、全体では男性43%に比べ女性は57%、住宅部門を取り扱うセールスの分野では圧倒的に女性が多くなる。彼女らを支えるサービス業種は多岐に渡っており、それらはいまや女性にとって不可欠の存在となった。

移民がまずとっつきやすい仕事

仕事を持っている多くの友人達は “クリーニングレディ” サービスを使って家の掃除をしてもらう。このサービスは月に2回位、2人から4人位のグループでやってきて掃除用品を持ち込み約2時間ですべての部屋を掃除する。契約次第ではシーツを変えたり洗濯や皿洗いを加える場合も。 ポーランド人の “クリーニングレディ” に人気が集まっているが、「ポーランド人は清潔好き」という我々の先入観が強いせいかもしれない。言葉を話す必要がなく、支払いは現金なので、“クリーニングレディ” はアメリカに来て間もない移民達がまず手にできる仕事といってよいだろう。ちなみに元々は女性が多かったので“レディ”といわれるが、現在は男性も参加している。

人がやりたがらない仕事を引き受ける人々

週に1度芝生を苅ったり土を入れ替えたり花壇の手入れなどを代行する “ランドスケーパー” も、仕事を持つ女性にとって有り難い存在だ。庭の手入れは土を耕したり雑草をとったりが一番手がかかるものだが、そういうやっかいな仕事はサービス業にまかせ、整った庭で美しい花や樹木をガーデンチェアにすわってゆったりと眺めるのは、仕事から来るストレスの発散にもなろう。 ランドスケーパーはクリーニングレディ同様、賃金が安くても言葉をしゃべる必要がないから、移民、とりわけ力持ちのメキシコ人達が多く参入している。アメリカ人がやりたがらないこういった仕事を移民達が肩代わりして汗を流す姿を見るのはどうも気がひけるのだが、故国をあとにした彼等にとれば仕事があるだけ結構、と思っているのかもしれない。

ペットをとりまくサービス業も盛ん

ペットを飼っている女性も多い。全米で40%の所帯が犬を飼っているそうだが(www.humanesociety.org/)、フルタイムで仕事をしていると犬を1日放置するのはきつい。昼休みに職場から家にかけ戻り、犬の世話をする友人もいるが、毎日となると大変。だから“”ドッグウォーカー” は近頃では多くの女性に頼りにされるサービス業となった。 数匹の犬を連れて散歩させているドッグウォーカーの姿を公園でよく見かけるが、彼等はビジネスで家を数日留守にする女性のために、犬を預かることもしばしばあるという。朝、犬を預け、仕事帰りに引き取る犬の保育園も都心に増えた。

子供がいてフルタイムで働く女性には不可欠

“ナニー” は「乳母」とか「ばあや」と訳すが、家に住み込んで幼児の世話をしながら英語を学び、習慣など覚えてゆくシステムでヨーロッパからの若い女性が多い。高名な女性政治家が不法滞在のナニーを使っていたというので最近問題になったが、0歳児からの保育園は時間の制限があるし、週末は預けられない。幼児がいてフルタイムで働く女性にとって、ナニーは不可欠の存在であろう。 「科学分野で働く最も若く優秀な女性」として、ホワイトハウスで大統領から表彰された知り合いがいる。コンピューターロボットの仕事をしているが、朝4時に起きて自宅のオフィスでまず仕事をこなし、5時半から6時半まで3人の乳幼児達と犬の面倒をみてから自分と夫の朝食をすませ、ナニーに子供達を託して仕事場へ出かけるという毎日。お産した直後にはベッドでコンピューターを前に仕事を始めたハイパワーの女性だが、こういった女性達がアメリカを牽引してゆくのだろう。 彼女等はサービス業の支援が必要だし、当然支払いができるだけの高収入であろう。彼女らの要求を満たすために低賃金にもかかわらず労働力を提供するたくさんの人々がアメリカにいる、という事実は微妙である。しかし需要と供給のバランスがとれているからよし!と割り切ってしまえばよいのだろうか。


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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2024/5/1

「海外トピックス」を更新しました。

サントスの「動く博物館」と中心街の再活性化【ブラジル】」を更新しました。

ブラジル・サンパウロ州のサントスでは、旧市街地2.8キロをめぐる「動く博物館」が人気となっている。1971年には一度廃止された路面電車を復活して観光路面電車としたものだが、なんと日本から贈られた車両も活躍しているという。