海外トピックス

2013/2/6

vol.220 合理的なモノ処分法

ショッピングセンターなど人が大勢集まる場所には、寄付の品を入れるボックスが設置してある(イリノイ州シカゴ市。以下同)
ショッピングセンターなど人が大勢集まる場所には、寄付の品を入れるボックスが設置してある(イリノイ州シカゴ市。以下同)
ボックスの品物をピックアップにやってきたトラック。宗教団体、慈善団体が多く行なっている
ボックスの品物をピックアップにやってきたトラック。宗教団体、慈善団体が多く行なっている
ユナイテッドチャーチは店舗を持っており、そこで寄付された品物を常時販売している
ユナイテッドチャーチは店舗を持っており、そこで寄付された品物を常時販売している
サルベーション・アーミィの店。買うだけでなく不要品があればここで手渡せる
サルベーション・アーミィの店。買うだけでなく不要品があればここで手渡せる
暮しに必要な品はすべてここで格安に揃えられるし、掘り出し物を探す楽しみもある古物屋
暮しに必要な品はすべてここで格安に揃えられるし、掘り出し物を探す楽しみもある古物屋
引っ越しのため、スタジオセールをする友人のアーティスト
引っ越しのため、スタジオセールをする友人のアーティスト

引越しが多いアメリカ人、不要物はどうする?

前回シャロンとラス・コーガン夫妻が一戸建ての住まいから2BRのコンドミニアム(マンション)へ引っ越した話をレポートしたが、60年も住んでいれば当然モノが増える。子供達が置いていった品も多いだろう。引っ越しはたまったモノの処分からまず始まる。シャロンとラスのように住まいを縮小する場合、沢山の品々の処分はどうするのだろうか?厄介な問題ではあろう。 ところがよくしたもので、引っ越すことにはフットワークが軽いアメリカ人達。モノの処分も合理的な仕組みが定着している。代表的なのは慈善団体の利用。スプーン1本から古着、車、モーターボートに至るまで引き取ってくれる。寄付するのがいやな人は自宅でガレージセールをする。自分で売る時間もないという人には、家具調度すべてに値段をつけ「エステートセール」としてセールスを請け負ってくれる会社がある。

 

まずは身内に、そして近所に、最後は慈善団体に

シャロンとラスは引っ越しを決めた時点で別の町に住んでいる3人の子供達に彼等が望む品々を持っていってもらった。次に近所の人達に欲しい品を持って行ってもらった。残った品々はいくつかの慈善団体へ寄付。 引っ越したコンドミニアムは各戸毎に地下に倉庫があり、大きな品物はそこに収納できる。とは言っても、以前の一戸建て住宅で暮らしていた時のように屋根裏や地下室に何でも突っ込んだ状況とは大違い。引っ越しを機会に大々的にモノを整理して肩の荷がおりたと喜ぶ夫妻。今はモノを増やさない気構えで暮らしている。

宗教によっては、故人の所有物も速やかに処分

シャロンとラスが寄付したような団体はアメリカ中至る所にある。サルベーション・アーミィのように店舗を出している団体もあるし、教会で定期的に「ラメージセール」と銘打ち、資金集めのセールを催す団体も多い。買う側にとっては良い品が格安で手に入るためか、その日は大変な人出となる。引っ越しで沢山の品が出た時など、電話一本、トラックで品物を引き取りに来てくれる団体もある。 ある慈善団体は、登録しておけばトラックで巡回する町の通りと日時を知らせてくれるから、ふだん不要品をまとめておいてその時に持って行ってもらえる。日本の廃品回収と似てはいるが、スケールが格段に大きいし、寄付、つまりただで供出する。 隣人の娘が18歳で亡くなった数日後に慈善団体のトラックが横付けされ、家族が何袋もの荷物を持ち出していたが、ある宗教ではすみやかに故人の服などを処分する習慣があるのだという。思い出を早く消して悲しみを和らげる工夫だろうか? また、アメリカ人は古着や中古品をそれ程抵抗無く使うせいか、町にも沢山の古着屋があっていつも大混雑。服だけでなく、靴、食器、家具類、スーツケースやスキー、電化製品に至るまで売っていて、リサイクルが浸透している。

蔵書は図書館に、写真アルバムはCDに

友人のジュディが一人で暮すことになった。あっという間に邸宅を処分し、ジュディ、ご主人、大学生の子供達がそれぞれ新しいアパートに移り新生活を始めたが、そのスピードの速さ! ジュディはまず不動産エージェントに家のセールスを依頼。その間に1週間続けて「引っ越しセール」と銘打って前庭にドレスから家具、食器、電気製品など並べて売った。ジュディはアーティストで、自宅とは別にスタジオを持っていたので、そこでも数日間セールをし、大きな品々を処分。山ほどあった蔵書は図書館に寄付。「家族の写真アルバムとかはどうしたの?」ときいた所、「何十冊もあるアルバムの写真をすべてCDに収めてアルバムも写真も捨て、家族それぞれがコピーしたCDを持っているわ。」その手際の良さに感心というか…、ため息が出た。

不動産とエステートセールを兼ねた会社も

エステートセールは、不動産エージェントが不動産物件セールス共々兼ねた会社により行なわれることが多い。 エステートセールの標準的な内容としてハンター アンティック ス・エステート・マネージメントカンパニー社の例をとってみると、セールは依頼主の家で3日間行なわれ、すべての品物の価格の査定をし、効果的にそれらを飾り付ける。テーブル及びテーブルクロスやデスク、宝石用鍵付きケースも用意する。新聞、ネットで広告を出す。不動産エージェントが持つ3,000人の顧客に写真入りの広告メールを送信。信用のおける社員を派遣し、盗難防止のため私服の警官や隠しカメラ、ビデオの設置も可能だ。売れ残った品を慈善団体に寄付する手配、等もする。 費用は、総売り上げの何パーセントかを手数料として会社へ支払うコミッション制。各社によりパーセンテージは違う。 不動産エージェントが請け負っている会社の場合、電話一本で品物だけでなく、家の処分も依頼できる。処分する本人が実際に現地へ出向かなくても済むので、急な転勤や別荘の処分には便利だ。このように合理的でスピーディな処分法が数々あり、流動性の激しさに対応している。

Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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