海外トピックス

2013/7/19

vol.231 再びバブルって本当?!?

セールスのサイン(表示)が出てから幾日もせずに売れてしまうようになった(イリノイ州シカゴ市)
セールスのサイン(表示)が出てから幾日もせずに売れてしまうようになった(イリノイ州シカゴ市)
新築にとりかかる家も見かけるようになった(イリノイ州シカゴ市)
新築にとりかかる家も見かけるようになった(イリノイ州シカゴ市)
友人は去年素晴らしいコンドミニアム(マンション)をバブル時の価格より40%安く買った(イリノイ州ノースブルック市)
友人は去年素晴らしいコンドミニアム(マンション)をバブル時の価格より40%安く買った(イリノイ州ノースブルック市)
大幅に改修され分譲の予定だったが、リーマンショック後の景気低迷で、賃貸募集の看板が掲げられてしまった(イリノイ州シカゴ市)
大幅に改修され分譲の予定だったが、リーマンショック後の景気低迷で、賃貸募集の看板が掲げられてしまった(イリノイ州シカゴ市)
かなりの戸数は賃貸に振り返られたモダンな分譲マンション(イリノイ州エバンストン市)
かなりの戸数は賃貸に振り返られたモダンな分譲マンション(イリノイ州エバンストン市)

全米の何ヵ所かで熱狂的な不動産ブームが起きている。これを2005-06年のバブルと同じにとらえるには懸念があるが、しかし8年間低迷していた不動産ビジネスがついに動き始めているのは事実。
一戸建て住宅、タウンハウス、コンドミニアム(日本ではマンション)、新築、中古物件おかまいなし、買う人が急増し、物件の不足が起きている。「これ!」という物件に購入希望者が同時に何人か出てきた場合、物件をめでたく手にするには、くじ引きやまさかじゃんけんというわけにいかないから、売り手と何人かの買い手達の間でその物件の価格をつり上げるゆく競争も起きてくる。
物件は提示価格より高く売れる傾向が出て来て、その結果、界隈の他の物件価格も全体的に上がる。こうした状況が都市から全米各地へ波及しているというのが、現状である。

売り出し価格の倍での取引も増加

前回ワシントン D..C.での異常とも言える不動産ブームをレポートしたが、ワシントンD.C.に加えて、ロスアンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコ、マイアミなどの都市がいま加熱状態にある。 全米規模で不動産業を展開するレッドフィン社 (realestate brokerage) CEOのグレン・ケルマン氏によれば、加熱状態にあるかどうかの判断は、最初に提示された価格と売れた価格の比較、一般公開されてどれ位の期間で売れたか、価格競争が起きているかどうか、購入して18ヵ月以内に転売する物件数、などの要因から考慮されるそう。 同氏は例えば、先にあげた何ヵ所かの都市で3分の2以上の物件が最初に提示された価格の倍の値段で売れた事実を「加熱している」としてあげている(Chicago Tribune 04/28/2013)。 次に加熱が予想される都市は、アトランタ、ダラス、ラスベガス、そしてシカゴ、という声も聞く。メトロスタディ(住宅リサーチ&コンサルタント社)の調査によると、シカゴの場合、今年前半期の新築一戸建て住宅戸数は約4,000戸で、昨年に比べ37%の増加ではあるが、それでも通常の1万8,000戸から2万戸の記録にはまだ遠い(Chicago Tribune 05/05/2013)。

市況低迷の中で下落した価格。「今が買い時」と…

なぜこういったブームが起きるのか? 2006年にバブルがはじけたあおりで不動産ビジネスは長らく低迷状態にあった。そのため、物件価格はどこも下がっており、「家を購入する絶好の時期は今だ!」と見極めた人々が手を出し始めたと考えられる。 失業率は喜ぶ程改善されてはいないが、それでも都市部は就業が活溌になってきた模様。経済面で自信を持って暮らす人々が増えたのか、仕事の不安感が拭われると住宅取得にも目が向く。よい仕事を得て転勤、転居が増える場合も…。 7月10日付け30年固定ホームローンの利率は4.56%(www.chicagotribune.com)、まだ低く抑えられているが、昨年の今頃より上がっており、今後上昇する気配は濃厚だ。金利もまた、家を買い急ぐ気持ちをあおる。

資金力、信用力のある堅実な購買層が中心

現在の熱狂状態と2005‐06年のバブルとでは、異なる点がいくつかある。海外からの購入者が多いのと投資を目的とする購入タイプは前回も今回も同じだが、今回のブームを見渡すと、一般の購買者のタイプが違う。彼等はしっかりしたクレジット(信用)を持っている。家のローンを銀行など金融機関で組む場合、借りられる条件のハードルが前回のバブル時期に比べてはるかに高くなった。それだけ融資を受けるのは「狭き門」になったわけで、以前は頭金なしとか、誰にでもお金を貸します、など無謀な貸し付けが行なわれ、当然ながらたやすく借りてしまってホームローンを払い続けられなくなった人達が激増。悲劇はいまだに尾を引いている。 今回の場合、融資を受けられた人達は、これまでの景気停滞の間に堅実にお金を貯めて少なくとも20%の頭金を用意しているとか、資産があるとか、確固とした就業履歴を持つ人達に絞られるようだ(Chicago Tribune 06/02/2013)。

物件不足で需給バランスが…

もうひとつ、大きな違いは、需要と供給のバランスが崩れているという点。 前回は物件が豊富に出回っていて、誰でもが家を容易く手にする事ができた。都市から遥かに離れた土地にも土地開発業者が進出、とうもろこし畑を背景に新築一戸建て住宅が目白押しに建てられた。しかし、今回は必要なだけの物件が誰の手元にもない。何年間か続いた不況の間、作っても売れないので土地開発業者は新築するのを控えざるを得ない状況だったからだ。すでに建ててしまった物件は提示価格をぐんと下げて売ったり、コンドミニアムは賃貸に振替えて不況時をしのいできた。その結果として物件が少ないのは当然の成り行き。 不動産ビジネスは中古住宅の売買が圧倒的に多いが、中古物件も不足しており、新築に目を向け始めた潜在購入者も多い。需要はまだ一部の都市に集中しているが、住宅建築が活性化すれば、たちまち雇用率の上昇や建材の需要が景気高揚につながる。 関係者は、前回のバブルのようにならないよう、心して不動産ビジネスを賢明に進めて欲しいものだ。

Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com


明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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