海外トピックス

2013/8/15

vol.233 ブロックパーティ

ジャンピングジャックと呼ぶレンタルの遊具(イリノイ州シカゴ市。以下同)
ジャンピングジャックと呼ぶレンタルの遊具(イリノイ州シカゴ市。以下同)
ジャンピングジャックの内部。子供達はごろごろ転がったりジャンプして遊ぶ
ジャンピングジャックの内部。子供達はごろごろ転がったりジャンプして遊ぶ
シカゴ市警察の騎馬警官。スピード違反は取り締まらないが、都心部の交通整理などをする
シカゴ市警察の騎馬警官。スピード違反は取り締まらないが、都心部の交通整理などをする
綿菓子、飲み物、かき氷、その場で焼いたホットドッグやハンバーガーが配られる
綿菓子、飲み物、かき氷、その場で焼いたホットドッグやハンバーガーが配られる
左2冊はシカゴ市からの安全についてのパンフレット。右は発起人が作成したブロックパーティの案内
左2冊はシカゴ市からの安全についてのパンフレット。右は発起人が作成したブロックパーティの案内
かき氷や綿菓子を楽しむ近所の子供達
かき氷や綿菓子を楽しむ近所の子供達

ブロックパーティは一区画の住民達が「皆で遊ぼうよ!」と自主的に計画する楽しいひとときである。端から端まで通りを数時間通行止めにする。幼児もシニアも歩行者天国になった道路へと、家から一斉に飛び出してくる。小さな子供達が三輪車やローラースケートでいつもと様子が違う道路をはじめはおずおずと、それからのびのびと走り回る。道路の真ん中に一部屋はたっぷりある巨大な風船のようなジャンピングジャックが置かれ、その中では子供達が大勢ジャンプしたりころがりまわって遊ぶ。
馬に乗った警官が西部劇のように登場!BBQ、綿菓子、かき氷、フェイスペインティングなどのテーブルが歩道に出て、大人も子供も浮き浮きと行き交う。隣人同士おしゃべりがはずむ。
こういったパーティは商店街は関係なく、住宅地で行なわれる。

通り沿いの居住者に呼びかけ。寄付やボランティアで実施

ブロックパーティは誰かが言い出して2~3軒が共同でプランを練るようだ。子供たちが楽しく遊べるよう、幼児のいる家庭が発起人になることが圧倒的に多く、子供たちが夏休みの時期に行なわれる。数時間にせよ、通りを通行止めにするため、警察や市に事前に了解を得なければならない。アメリカの住宅地は通りが碁盤状になっていて(ストリートかアベニュー)、十字路から次の十字路までひとつの通りには30~40世帯が住んでいる。 企画者はパンフレットを作ってその通りに住む人々にブロックパーティ開催の日時や詳細を知らせる。当日は通りに駐車している車をどけてもらわなければならないから、早めに住民の了解を受ける必要があろう。1世帯につき2,000円位の寄付を集めるが、ホットドックやハンバーガーのランチ、飲み物・お菓子代などが含まれている。 参加しなくても寄付は大歓迎。また、ボランティアとしての参加者も募る。筆者は以前、Tシャツを絞り染めするテーブルを出し、大勢の子供や大人達が色鮮やかな染料にTシャツを色漬けして楽しい時間を過ごした。

警官や消防署員もデモンストレーション

警察や消防署などお役所はブロックパーティに協力的で、予約するとシェパードなど警察犬を連れた警官や馬に乗った警官、あるいは消防自動車などがブロックパーティ会場に出向いてくれる。 警察官や消防員にとっては、安全について話すよい機会でもあろう。子供が自転車に乗る際の正しい走り方、信号の見方や左や右に曲がるサインの出し方、ヘルメットのかぶり方まで教えてくれる。同時にパンフレットも親が読むようにと配布する。小さな子供達に「安全に歩くには?」という楽しいぬり絵のガイドブックも用意。上段は英語だが下段にはスペイン語、というのはラテン系の住民がアメリカでますます増えているせいもあるだろう。警察犬を取り扱うデモンストレーションをしたり、皆からの質問に答えたり、、、。短い時間にしても、こんなに近くで警察犬や消防ポンプを眺めるのは誰にとっても興味深い経験となろう。

転居も多く、車社会のアメリカ。束の間、コミュニティの楽しさを体験

ついこの間までは舌ったらずの幼女だった子供が、美しい少女に成長したのにびっくりする。筆者も参加したことがあるが、隣のおじさんのアマゾン探検の話に耳を傾けたり、二軒隣の奥さんからお寿司について聞かれたり…。皆、歩道に椅子を出しておしゃべりに夢中になっていた。 それにしても案外見知らぬ顔が多いことに今更ながら驚いてしまう。車社会のアメリカではガレージから車に乗り込んで出かけてしまうから、「どちらへおでかけ?」「ちょっとそこまで」などという隣人との挨拶の習慣はない。他人の暮らしに立ち入らない習慣のこの国ならでは…。 以前は家の誰かが芝刈りや雪かきなどしたのだが、現在は専門の業者に頼む。誰もが忙しいのか、金銭的に充分賄えるようになったからなのかはわからないが、ともかくそのせいで近所の人達と顔を合わせる機会が少なくなったことは否めない。 ちなみにアメリカには日本のような町内会や自治会はないから、夏祭りというようなコミュニティとしての行事など何一つない。それにアパートは勿論のこと、一戸建て住宅でさえ入れ替わりが激しく、6~7年で転居する。何か機会でもないと、隣にどんな人が住んでいるかさえ知らない、知る必要もない、というのが多くの人々が経験している現代の暮らしだろう。 ブロック パーティは、改めてコミュニティの楽しさや、普段忘れている大切な何かを体験させてくれる。


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com


明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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