海外トピックス

2014/10/6

vol.259 ハーフバス、フルバスって? 不思議な風呂事情

ハーフバスルーム。客用のトイレと洗面台(イリノイ州シカゴ市 以下同)
ハーフバスルーム。客用のトイレと洗面台(イリノイ州シカゴ市 以下同)
これもハーフバスルームで子供部屋のそばにある。写真では見えないが、脇にトイレが設置してある
これもハーフバスルームで子供部屋のそばにある。写真では見えないが、脇にトイレが設置してある
友人の家だが、シャワーヘッドが2つついているのに注目
友人の家だが、シャワーヘッドが2つついているのに注目
洗面台が二つ並んであるが、しかしトイレはひとつだ
洗面台が二つ並んであるが、しかしトイレはひとつだ
実際にはこの場合バスタブは使われていないが、このように部屋にバスタブを置き、湯を満たして浸かる
実際にはこの場合バスタブは使われていないが、このように部屋にバスタブを置き、湯を満たして浸かる
大きなシャワールームなので、透明のガラス戸で湯が飛び散るのを防ぐ
大きなシャワールームなので、透明のガラス戸で湯が飛び散るのを防ぐ

住宅の物件情報には、売買にも賃貸にも1BR(ベッドルーム)とか2バスルームといった記載がある。では「2+1/2バスルーム」って何かしら? 
答えを先に言ってしまうと、フルバスルームが2つとハーフバスルームが1つある物件を指す。ところで、「ハーフバスルーム」って何のこと?「ハーブ」のお風呂ではありません。フルバスルームは、トイレットと洗顔用洗面所とバスタブ(シャワー付き)の3点が揃った部屋のこと。従ってハーフバスルームとは3点セットでなく、風呂(シャワー付き)がなくてトイレットと洗面所の2点が揃ったスペースのことだ。
バスルームが3つも4つもある物件はアメリカでは稀ではない。つまり風呂場が3つも4つもあるのだが、何故だろうか。

風呂文化、日米の大きな違い

探ってみると、日本の風呂文化とアメリカとでは大きく習慣の違いがあるような…。
日本を訪れて温泉が大好きになったアメリカの友人達は多いが、だからといって自分の家で日本式の風呂場はまず作らない。アメリカの風呂は洗い場がないのだ。バスタブに湯を満たし、中で身体を洗ってから、バスタブの栓をぬいてシャワーで身体についた石けんを洗い流す。水が周りに飛び散らないよう、シャワーカーテンや引き戸をつける。入った後は湯を落としてしまうから、日本の風呂のように同じ湯ぶねに次の人が入るということはない。第一、湯を暖め直す装置がないのだ。
従って一回一回湯をバスタブに満たすことになる。バスタブは大人が横たわってやっと肩が浸かる程度に浅くできている。最近は深いタブもあるが、湯を満たすのに時間がかかるし、不経済だ。

シャワー、洗顔は、トイレ同様プライベート空間で

典型的な一戸建ての家には「マスターベッドルーム」と言って、主寝室の隣りにトイレットと洗顔用洗面所と風呂(シャワー付き)の3点セットが備えられている。そして、他のいくつかのベッドルーム(BR)にはトイレットと洗顔用洗面所と風呂(シャワー付き)があり、これらの部屋は子供部屋や客用寝室に使われる。フルバスルームがついている客用寝室も多い。
このように、シャワーを浴びたり洗顔することはトイレ同様に個人的なことととらえ、それぞれの部屋に付属してついている建築設計が多いようだ。この他に玄関わきやダイニングルームに近い場所にトイレットと洗面所が備えられている間取りも多くあり、これらは1/2バスルームというわけである。当然ながら、来客が使うための配慮であって、風呂場は必要がない。

主寝室のシャワー、洗面台を2つずつに…。改装ニーズが増加

ホームデザインと改装改築プラン専門のホウズ社のアンケート調査によると(02/02/2014 Chicago Tribune newspaper)、主寝室に関しては、シャワーヘッドを2つ以上付け加えることと、洗面台を2つ設置したい、と改装を希望する人が多いことがわかった。2つのシャワーヘッドということは、つまり2人が同時にシャワーを浴びられるということ。改造して風呂桶を取り外してしまい、その分広いスペースでシャワーを使うようだ。最新のシャワーヘッドにはさまざまな水の出方や変化があり、南の国のスコールや渦巻きのように降り注ぐ湯の変化が楽しめる。水が飛び散るのを防ぐために枠のない透明強化ガラスで仕切るのも新しい傾向。
もう一つのトレンドとしては、洗面台を2つ設置するというもの。女性が多く働くようにんなり、一刻を争ってシャワーや洗面台を同じ時間帯に使いたい人が増加しているそうな。では二人でバスルームを共に使う場合、トイレは?
同社のアンケートでは、53%の人がトイレは洗面台と仕切りなしでよいとの回答。念のため友人達に聞いた所、主寝室に関してのみだが、つれあいと共有するのは平気、だそうで驚いてしまった。

日本の風呂は、一つの風物詩

日本の広い家でトイレは2つか3つあっても、お風呂はたいていひとつではなかろうか。日本の風呂は家族が同じ湯船に入り、ぬるくなればわかし直せる。幼い頃、風呂へは父が最初に入り、祖母、子供達、そして母が最後に入って風呂の湯を落としてきれいに洗い上げた。祖母がみかんの皮を干して袋に入れて湯に浮かべた湯は香りもよく、寒い冬、あったまったものだった。5月の菖蒲湯の香りや祖母がが洗い髪を菖蒲の葉できりりと結んだのもなつかしく思い出す。風呂の入り方や身体の洗い方まで親にやかましく言われた。
アメリカ人達にきいてみると、風呂に関する子供の頃の風物詩やエピソードは拍子抜けする程ない。毎朝シャワーを浴びて登校や出勤をする習慣。時折りバスタブに湯を満たしてのんびりと寛ぐにしても、入った後は湯を落とす。同じ湯を共有するのは、何故かアメリカ人には感覚的に受け容れられないようだ。
トイレで香をたきしめたり、手水鉢に花びらが落ちる風情などは日本の伝統としては存在した。しかし、アメリカはトイレも風呂も実用的な習慣としての文化だと改めて感じたのだった。


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com

明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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