海外トピックス

2014/10/20

vol.260 窓が「めだま」商品(!)という改築の提案

船のイメージがいっぱいのボートハウス(カナダ バンクーバー市)
船のイメージがいっぱいのボートハウス(カナダ バンクーバー市)
夏は別荘族が多い港町のせいか、ヨットを飾ったおしゃれな窓の不動産店舗(メイン州)
夏は別荘族が多い港町のせいか、ヨットを飾ったおしゃれな窓の不動産店舗(メイン州)
室内とも戸外ともつかないレストラン。丸窓からの景色が美しい(インディアナ州ニューハーモニー市)
室内とも戸外ともつかないレストラン。丸窓からの景色が美しい(インディアナ州ニューハーモニー市)
張り出し窓をアクセントとしたタウンハウスが最近の人気(イリノイ州シカゴ市)
張り出し窓をアクセントとしたタウンハウスが最近の人気(イリノイ州シカゴ市)
ミニァチュアの窓。季節により軸や花を飾り変える「床の間」を思い起こす(カナダ バンクーバー市)
ミニァチュアの窓。季節により軸や花を飾り変える「床の間」を思い起こす(カナダ バンクーバー市)
むしろ四角い窓は少なくなったと言える程、新しいコンドミニアムはおしゃれな窓となっている(イリノイ州シカゴ市)
むしろ四角い窓は少なくなったと言える程、新しいコンドミニアムはおしゃれな窓となっている(イリノイ州シカゴ市)
全壁面がガラス窓と言ってよい。太平洋を前面に、さぞ素敵な眺めだろう。風通しも良く、複層ガラスの多用でエコロジーにも考慮がうかがえる。(ワシントン州シアトル市)
全壁面がガラス窓と言ってよい。太平洋を前面に、さぞ素敵な眺めだろう。風通しも良く、複層ガラスの多用でエコロジーにも考慮がうかがえる。(ワシントン州シアトル市)

深窓の令嬢、蛍の光窓の雪、目は心の窓、窓際族、飾り窓の女…、読者の皆様は窓に連なる言葉をもっと沢山ご存知に違いない。
窓はいつ頃できたのか…。大昔、石を積み上げ土を掘って雨風や暑さ寒さを防ぐシェルターを作り、採光と通気を目的に穴を開けたのが窓の始まりか。昔の日本では蔀度(しとみど)と呼ばれる板が使われ、後に障子が明かり取りに多用された。「紙でできた窓は雨で破けないの?紙一枚で寒さを防げるか?」とアメリカ人達によく質問されるが、障子、雨戸、廊下など、和風建築の構造から説明しなければならず、汗だく。
ところで、幼児が家の絵を描くと決まって窓は四角。円や三角だと「これって窓?」と大人は聞くに違いない。ところが、あちこち旅をし、こんなにいろいろな窓が!窓がとっても楽しいアクセントになるなんて!窓はなんておしゃれなんだろう!と窓の存在感に強い印象を受けた。
家や集合建築の老朽化で改築を考える際に、窓を中心に建築イメージの若返りを図るのはいかがでしょうか。

個性的な家並み…。でも、景観はすっきりしているバンクーバー

形(デザイン)も材質も変化に富んで魅力的な窓が多いバンクーバー市(カナダ)。かえでの紅葉が美しい街路を歩くと、見渡す限りすっきりした景観に驚く。なぜなら、ひとつひとつの家は個性的。にもかかわらず、「見て!見て!」と自己主張が強い家も窓も見当たらない。
どこが違うのか? 同市では、建物を改築する場合、業者(または施主)はバンクーバー市にプランを提出し、役所の許可を受けなければ工事が始められないのだ。プランを協議する評議員の中に建築家やインテリアデザイナー、色彩研究家、景観専門家なども参加していると聞いた。安全性など建築基準に加えて町全体の景観も考慮されているのだろう。

光の変化をうまく採り入れる「茶室の窓」

茶室では窓は大きさや数、位置、形など驚くほど多種多様である。四角い窓だけでなく、半月や円などの形の窓もあり、開けたときの外の景色を借景として使ったり、時間が経つに従い光線が室内にどう動いてゆくかその角度まで計算して窓を設ける。
食事をいただく「茶事」の催しでは、前半は障子を閉めたりすだれで外光をさえぎるから、室内はほの暗く静謐さに満ちている。中休みで茶室の外へ出て再び入室すると、障子は開けられ室内は明るく変化。陰と陽との劇的な対比が窓によって工夫されている興味深い例である。

天国を思わせる「光の窓」

光を神の象徴と考える宗教は世界に少なくない。中世のゴシック建築では、フライングバットレスという技術の進歩で、天まで届く程大きな聖堂が造られ、光があふれるように工夫されてステンドグラスウィンドゥで空間がうずめられた。聖人達や奇跡の物語をステンドグラスウィンドゥで視覚化し、字の読めない人々にもストーリーを理解できるようにとの工夫であった。太陽光がステンドグラスのさまざまな色彩を透過して人々の上に降り注ぐ豊穣な光は、あたかも天国とはこんな所、というイメージを人々に与えたに違いない。

窓を大きくしたエコ住宅が増加

窓は外光や外気を室内に取り込み、寒気や風を防ぐ、という機能が不可欠で、厳寒のシカゴでは窓に隙間があるとたちまち家計(暖房料金)にひびく。気密断熱性能に優れた複層ガラスは、戦後、ドイツを中心に研究開発が進められ、単板ガラスの4倍の断熱効果があるためか、アメリカでは単板ガラスに取って代わり、エネルギースターの保証つきの製品もある(www.pella.com/planning-your-project/replacement/energy-efficiency.aspx)。
複層ガラスは2枚または3枚のガラスの間に層を設け、真空にしたものやガス充填型などさまざまなタイプがある。ガラスを支えるアルミサッシなどの窓枠も新樹脂素材が開発されつつあり、気密性がさらに向上してきている。現在、エコロジーに関連し、窓の面積を大きくとって採光し、電気による照明を減らす建築が増加している。複層ガラスと窓枠の新樹脂素材は熱を逃がさないから、夏も冬も昼夜温度差が少ないという利点があるのだ。特にアメリカの物件は眺望が良いと価値がぐんと上がる。だから窓をユニークなデザインで大きくし、眺めも良くなる改築は、重要な「売り」ポイントになるのではなかろうか。


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com


明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

新着ムック本のご紹介

ハザードマップ活用 基礎知識

不動産会社が知っておくべき ハザードマップ活用 基礎知識
お客さまへの「安心」「安全」の提供に役立てよう! 900円+税(送料サービス)

2020年8月28日の宅建業法改正に合わせ情報を追加
ご購入はこちら
NEW

月刊不動産流通

月刊不動産流通 月刊誌 2024年5月号
住宅確保要配慮者を支援しつつオーナーにも配慮するには?
ご購入はこちら

ピックアップ書籍

ムックハザードマップ活用 基礎知識

自然災害に備え、いま必読の一冊!

価格: 990円(税込み・送料サービス)

お知らせ

2024/4/5

「月刊不動産流通2024年5月号」発売開始!

月刊不動産流通2024年5月号」の発売を開始しました。

さまざまな事情を抱える人々が、安定的な生活を送るために、不動産事業者ができることとはなんでしょうか?今回の特集「『賃貸仲介・管理業の未来』Part 7 住宅弱者を支える 」では、部屋探しのみならず、日々の暮らしの支援まで取り組む事業者を紹介します。