海外トピックス

2015/7/6

vol.277 世界のインテリアデザイン業界が注目する「ネオコン」って?

ネオコンへの参加者はインテリアデザイナーのほか、建築家や工業デザイナーなどインテリア関係のプロフェッショナル。商談も成立する(イリノイ州シカゴ市、以下同)
ネオコンへの参加者はインテリアデザイナーのほか、建築家や工業デザイナーなどインテリア関係のプロフェッショナル。商談も成立する(イリノイ州シカゴ市、以下同)
ハーマンミラーのモダンなショールーム。住宅用でなく、オフィス用にターゲットが絞られている
ハーマンミラーのモダンなショールーム。住宅用でなく、オフィス用にターゲットが絞られている
たまたま会場で出会ったインテリアデザイナーの友人エリザベス・クーモア(左)
たまたま会場で出会ったインテリアデザイナーの友人エリザベス・クーモア(左)
ロフトに置かれる家具を想定してか、壁に工夫のあとが見られる。全体にニュートラルな色調が多い
ロフトに置かれる家具を想定してか、壁に工夫のあとが見られる。全体にニュートラルな色調が多い
どのショールームの関係者も友好的。親切に製品・商品について説明をしてくれる。ここはアクリル板を扱う業者
どのショールームの関係者も友好的。親切に製品・商品について説明をしてくれる。ここはアクリル板を扱う業者
プロフェッショナルのデザイナーや業者のほか、世界中から学生も大勢見学にやってくる全米で由緒ある見本市だ
プロフェッショナルのデザイナーや業者のほか、世界中から学生も大勢見学にやってくる全米で由緒ある見本市だ

 インテリアデザイン業界で最も注目される見本市及び国際会議がシカゴで年1度開かれる。「ネオコン」である。
 
 家具、壁紙、カーテンなどの布地、フローリング素材、カーペット、照明器具、ドアの把手などの金属器具に至るまでインテリアに関わる最新の製品や画期的なアイディアが約700社によって紹介される。

 世界中からインテリアデザイナー、建築家、工業デザイナー、テキスタイルデザイナー、製造業者、コンサルタントなどやってきて、会場は何万人もの関係者であふれる。展示や新製品紹介の見本市に加えて国際会議と研修会も開催され、刺激的で盛り沢山な3日間である。

今年で47回目、由緒ある大見本市

 ネオコンは ”Neo Convergence”(新しい集会)を縮めた造語。今年で47回目を迎える由緒ある見本市は、シカゴ川に沿って建つマーチャンダイズマート(Marchandise Mart) で行なわれる。

 16階建ての巨大な建物は世界一の延床面積を持ち(現在順位が入れ替わったらしい)、ケネディ元大統領のお父さん、ジョーセフ・ケネディが建て所有した。

 時代がくだり現在はインテリアデザイン関係のショールームになり、ネオコン開催時にはこれらのショールームも共に協賛、大イベントと化する。その内容は個人の住宅用というよりはむしろオフィス家具とかホテルなどに使われる商業用の製品が主である。

 ちなみにアメリカのインテリア業界においては、「レジデンシャル」と「コマーシャル」とに分けられ、個人住宅向けの製品と商業用のそれとは区別して扱われる。

インテリアや建築の新トレンドが見えてくる

 登録後、1階の受付でバッジを受け取り、2階から順次会場を見て回るが、物凄い人混みだ。見たい分野をはっきりと決めてかからないと、700社以上もの展示があるので3日間ではとても見回れない。それぞれのブースでは関係者が製品について詳しく説明してくれ、商談も行なわれる。

 とりわけ新しい建材や素材は興味深い。展示も工夫を凝らしてある。例えばハーマンミラーのショールームでは、壁面にすっきりした棚をつけてそこにカタログを置く。カウンターや引き出し(売り物でない)もモダンなデザインで統一されており、今後、オフィスのインテリアに応用できよう。

 顧客の多くはインテリアデザイナーや建築家で、将来あるいは現在関わっているプロジェクトに応用される可能性が非常に高いので、関係者は真剣そのもの。ブースを一通り眺めて回ると新しい傾向がつかめる。

 全体の印象として、今年は飾りやクラシックなデザインが少なく、すっきりとモダンで幾何学的なデザインが多かった。もちろん、個人の住宅用でなく、オフィスなどの商業用のインテリア関連のブースが多いせいもあろうが、ここ数年の傾向として、会社に属さず、個人か数人で仕事をする人が増加し、以前のような画一的なオフィス家具でなく、もっと個性的な家具を始めとするインテリア関係の製品が目についた。

未来的視点で暮らしを考える講演も実施

 見本市だけでなく、国際会議や130もの研修会も同時進行で行なわれ、最も新しいトレンドや専門的な知識を仕入れることができる。これも世界中から人々がやってくる理由でもあろう。キーノートスピーカーのジェイソン・シルヴァは、インテリア業界とは関係がなさそうだが…。彼は、エミー賞候補にあがったナショナルジオグラフィックシリーズ(TV)ブレインゲームズ(Brain Games)の創作者で、その他いくつかの短編フィルムや世界的に有名なTED (Technology Entertainment Design) Global のスピーカーを務めたり、元副大統領であったアルゴアのTV番組のライターだったという変わり種。テクノロジーと未来の人間性との関連を探る創造的な話題を提供する。

 しかし、人間の暮らしを俯瞰的にながめる場合に、こういったフューチャーリストをパネリストに迎えるのも違った角度から広く暮らしというものを考察するきっかけとなろう、と納得。

学生や若者を育てる場としての役割も

 国際インテリアデザイナー協会(IIDA) と全米インテリアデザイナー協会(ASID) はいくつかの研修会を催したり、会員同士の親睦を目的として、それぞれラウンジやブースを設けている。インテリアデザイン関係者同士、ネットワークを広める絶好の機会だ。

 また、今後共同のプロジェクト開発のきっかけにもなろう。LEED 金賞受賞のオフィスのツアーや各協会主催のコンペもあり、受賞作品はインテリアビジネス業界において重要な「勲章」となる。また、学生達を育てようとする姿勢も見受けられた。

 将来のインテリアデザイナーの卵達、学生のために8階にカフェを設け、そこでプロのインテリアデザイナー達からポートフォリオの作り方や履歴書の書き方など、アドバイスが受けられる。うまくするとインターンシップを得る可能性も?

 情報交換の他、斬新なプロジェクトを公募して賞を与えるなど、意欲的な催しも少なくない。インテリアビジネスに加え、専門知識を深めネットワークを広げ、教育的な催しとしてもネオコンは見逃せない。


Akemi Nakano Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com


明美コーン

コーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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