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2016/11/7 18:00 更新

vol.309 蒸気機関車と西部劇の町

懐かしい蒸気機関車が煙をあげてデュランゴ駅を出発する(コロラド州デュランゴからシルバートン。以下同)

一両だけ観覧車が付いており、幸いチケット(座席指定席)をとってもらった

吹きさらしで寒いが、景色をながめるには絶好だ。煤が舞うのでサングラスは必需品

崖にへばりついた線路を辿るのはスリル満点。時折、野生動物を見ることもある

シルバートン駅に到着。石炭のかたまりが見えるが、何人かが交代でかまに投げ入れて炊くのだろう

隆盛だった頃のヴィクトリア調建築様式が往時をしのばせる。シルバートンの目玉でもある

ゴールドラッシュ当時は酒場やホテルが多かったシルバートンだが、古い建物を補修保存して、現在はレストランや土産物屋になっている

西部開拓史を思い起こさせる人がそこここにいるのもコロラド州ならでは

 コロラド州でレトロな蒸気機関車に乗り込んだ途端、西部開拓時代にタイムトリップした。ジェシージェイムス兄弟の列車強盗、インディアン襲撃、峻厳な山を爆破して鉄道架設工事、牛や金塊の輸送、「ハイヌーン」「明日に向って撃て」など映画シーンまで溢れ出る始末。蒸気機関車に加えて、駅舎に群がる人々も西部開拓時代の雰囲を盛り上げる。

 そもそもこの路線はコロラド州デュランゴの町と海抜2,840メートルのシルバートンを結んで、近辺の鉱石輸送に使用されたのだが、廃坑となった現在はデュランゴからシルバートンを往復する観光列車として注目を浴びている。

原生林や野生動物をみながら峡谷を進む汽車

 のどかな汽笛を後に引いて、蒸気機関車はアニマス川に沿って細い渓谷をゆっくりゆっくり登ってゆく。牧場や原野を過ぎるとロッキー山脈が雲を従えて彼方から迫ってくる。

 友人が観覧車両指定席をとってくれたので見晴らしは素晴らしいが、吹き抜けなので燃料として焚く石炭の煤が舞い込む。サングラスとマスクで防御。

 峡谷にへばりつくようにして汽車は進むが、崖下のアニマス川を眺めるとその高さ深さに目が眩む。車や人が踏み込まない渓谷や原生林を通るので、運がよければ鹿、熊、野生の羊、マウンテンライオン、ムース、鷹、鷲、狐、鵞鳥など野生動物を目にとらえるかもしれない。

 途中の駅で何人か降りたが、鉄道に沿って流れるアニマス川でいかだ下りを楽しむ若者達のグループや、森林へ何日もキャンプに入る重装備のカップルである。

ゴールドラッシュの頃の賑わいが伝わってくる町並み

 3時間半たっぷりと自然に包まれ(煤にもまみれ)、終着駅シルバートンに到着。国定歴史建造物になっているシルバートンの町はまるで西部劇のセットのようである。当時のヴィクトリア朝様式の建物が大半保存され、現在レストランや店舗に使用されている。大きな監獄が町の中心に居座っているのには驚いたが、当時は一攫千金を狙う流れ者達も多く、喧嘩や銃撃が絶えなかったのでは?

 小さな町ながら、29の酒場や歓楽街、簡易宿泊所などあった事からして、喧騒に満ち沸き立つゴールドラッシュ時の様子が想像出来よう。
金鉱や炭鉱を掘り尽くした後はゴーストタウンになったが、コロラド州の多くの鉱山同様、その後スキー場やリゾートなど観光名所として蘇った。

鉄道、鉱山の跡は、西部開拓史の名残

 アメリカ西部開拓史をたどると、1948年にカリフォルニアで金鉱が発見され、人々は馬や馬車で西へ西へと新天地をめざして向かった。

 その後馬車に変わって1869年大陸横断鉄道が開通し、20世紀の始めまでに合計8ルートの大陸横断鉄道が造られた。1881年にはデンバー&リオグランデ鉄道がアメリカ大陸の西方面からデュランゴまで達した。

 シルバートンには金、銀、鉛、銅などが大量に埋蔵されており、それらを採取するためにデュランゴから鉱山へと向かう路線工事が直ちに竣工された。蒸気機関車は石炭を燃料として使うが、幸いデュランゴとシルバートン界隈に炭田があり、大量の石炭が採掘された。

 現在はもちろん廃坑になっており、朽ちかけた鉱山跡があちらこちらに見られる。

機関車と競争する自転車レースも

 デュランゴからシルバートンまでのハイウェイで「蒸気機関車に追いつき追い越す自転車レース」が年に1度開催される。道路は蒸気機関車線路に途中まで沿い、それから原生林を迂回してシルバートンの町まで通っている。レース当日は数時間道路を閉鎖。舗装道路をマウンテンバイクでなく通常の自転車で走る。

 長野県の志賀高原を例にとると、湯田中から東館か横手山頂まで自転車でひたすら登りつめる程の過酷な自転車レースである。

 蒸気機関車はシルバートンまで3時間半かかるが、デュランゴで機関車とヨーイドンして機関車より早くシルバートンへ到着した選手が優勝の栄冠を勝ち取る。友人のダンはこれまでに3回挑戦して完走メダルをもらってはいるが、まだ機関車に打ち勝ってはいない。

 関係者をはじめ、家族や友人達がゴール地点シルバートンの町で待ち受け、完走選手を大きな拍手で労う。

 山岳蒸気機関車と古き良き西部の佇まいをたっぷりと味わえる素朴でおおらかなシルバートンの町であった。


参考資料
www.durangotrain.com
www.colorado.gov/townofsilverton
www.silvertoncolorado.com


Akemi Cohn
jackemi@rcn.com
www.akemistudio.com
www.akeminakanocohn.blogspot.com


AKEMI NAKANO COHN

明美コーンコーン 明美
横浜生まれ。多摩美術大学デザイン学科卒業。1985年米国へ留学。ルイス・アンド・クラーク・カレッジで美術史・比較文化社会学を学ぶ。 89年クランブルック・アカデミー・オブ・アート(ミシガン州)にてファイバーアート修士課程修了。 Evanston Art Center専任講師およびアーティストとして活躍中。日米で展覧会や受注制作を行なっている。 アメリカの大衆文化と移民問題に特に関心が深い。音楽家の夫と共にシカゴなどでアパート経営もしている。 シカゴ市在住。

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