記者の目 / 開発・分譲

2011/2/10

「都心」「大規模」「再開発」というプレミアム

東急不動産ほか「クロスエアタワー」を見る

 「大規模」「タワー」「再開発」といえば、人気分譲マンションの代表的キーワード。しかし、これらをすべて満たす物件を都心部で探すのは、至難の業だ。だが、そのすべてを満たしたうえ、東京都心でも有数の成熟したまちに「立地」するマンションが、間もなく販売開始となる。東急不動産(株)などによる「クロスエアタワー」(東京都目黒区、総戸数689戸)がそれ。2011年の首都圏マンション市場を代表する物件のひとつになりそうだ。

「クロスエアタワー」完成予想図。目黒区では最大規模のタワ―マンションで、再開発により生まれる「空中庭園」と9階部分でつながるのが最大の特徴
「クロスエアタワー」完成予想図。目黒区では最大規模のタワ―マンションで、再開発により生まれる「空中庭園」と9階部分でつながるのが最大の特徴
首都高速大橋ジャンクション直上に整備される空中庭園は、広さ約7
首都高速大橋ジャンクション直上に整備される空中庭園は、広さ約7
000平方メートル。この空中庭園に加え、マンション内には区役所出張所、区立図書館などの公共施設が設けられる。また、マンション足元には大型スーパーも出店するなど、利便性はすこぶる高い
000平方メートル。この空中庭園に加え、マンション内には区役所出張所、区立図書館などの公共施設が設けられる。また、マンション足元には大型スーパーも出店するなど、利便性はすこぶる高い
タワ―マンションの長所は、何といっても高層階の眺望だが、同マンションは、空中庭園を南西側に抱え込む立地のため、低層階でも開放感がある。もちろん、39階のビューラウンジともなれば、都心の絶景が楽しめる
タワ―マンションの長所は、何といっても高層階の眺望だが、同マンションは、空中庭園を南西側に抱え込む立地のため、低層階でも開放感がある。もちろん、39階のビューラウンジともなれば、都心の絶景が楽しめる
同マンションは、内装・設備グレードを3つ用意。もっともスタンダードなグレードは、ワンルーム住戸中心となる「リミテッド」。それでも、設備仕様や内装のグレード感に安っぽさはない。たとえ標準仕様でも、2
同マンションは、内装・設備グレードを3つ用意。もっともスタンダードなグレードは、ワンルーム住戸中心となる「リミテッド」。それでも、設備仕様や内装のグレード感に安っぽさはない。たとえ標準仕様でも、2
200mmのハイサッシュにより、開放感がある
200mmのハイサッシュにより、開放感がある
メイングレードとなる「エクセレント」は、キッチンや洗面カウンターが天然石仕上げとなるほか、食洗機・天井埋め込み式エアコンなど設備がグレードアップする
メイングレードとなる「エクセレント」は、キッチンや洗面カウンターが天然石仕上げとなるほか、食洗機・天井埋め込み式エアコンなど設備がグレードアップする
「エクセレント」グレードのキッチン。レンジフードはステンレス仕上げ。食洗機や浄水器などが追加となる
「エクセレント」グレードのキッチン。レンジフードはステンレス仕上げ。食洗機や浄水器などが追加となる

官民一体再開発で実現する利便性と開放感

 同物件は、東急田園都市線「池尻大橋」駅徒歩5分に立地する、高さ155m・地上42階地下2階建て、目黒区では最大規模のタワーマンション。官民一体による「大橋地区第二種市街地再開発」の一環であり、東急不動産、東急電鉄(株)、三井不動産(株)、有楽土地(株)の4社に加え、東京都が売主となって事業が進められている。

 「池尻大橋」といえば、首都圏を代表する繁華街「渋谷」まで1駅。同物件は、その渋谷まで10分かからない絶好のロケーションだ。近年、大規模マンションと言えば、そのほとんどが郊外か湾岸エリアが相場であり、都心ターミナルにほど近いエリアでの大規模タワーは、それだけでも希少性が高い。まして、同マンションは、渋谷、代官山、三宿といった人気スポットに囲まれた成熟した住宅街「大橋」に立地する。都心周辺に、これほどの規模のマンションが開発される可能性は、今後ますます低くなるはずで、このロケーションだけでも同マンションへの評価は高いといえよう。

 このロケーションを実現させた「大橋地区第二種市街地再開発」は、首都高速道路大橋ジャンクションを中心とした、施行面積約3.8haにも及ぶもの。その最大の目玉は、同ジャンクション直上に整備される、広さ7,000平方メートルの空中庭園だ。同マンションは、9階部分でこの庭園と直結。同庭園と前面(南西側)で接することで、南西側の前面建物まで約160mの間隔ができ、都市型タワーマンションとしては、異例の開放感が味わえる。

 また、同物件は、同再開発の基本理念である「商業、住宅、業務機構の複合集積拠点」の象徴でもある。目黒区が9階部分を取得し、区立図書館や区役所出張所、保健福祉施設の相談窓口などの公共施設を開設するほか、2階には大型スーパーマーケットが出店する。これら公共施設には、マンション居住者専用の動線が設置されるため、居住者がマンションの共用部同様に使うことができるのも魅力だ。

 記者が唯一気になった点は、この再開発地が国道246号線(と首都高速道路)という、決して交通量の少なくない幹線道路に接していること。しかし、この点も心配なさそうだ。
 「建物自体、国道246号線から充分セットバックしていますし、南面には空中庭園、その奥の目黒川沿いも静かな住宅街が続いています。また、マンションから徒歩10分圏内には意外なほど公園が多く、目黒川沿いの桜並木や空中庭園など、緑に囲まれた生活が楽しめると思います」と、同マンションの企画を担当した東急不動産住宅事業本部マンション事業第二部の木下 奨氏は、自信を込めて語る。(ちなみに、再開発地内には首都高速トンネルの排気塔が設置されるが、ここから排出される排気は、最先端の技術によって周辺エリアの空気より、はるかにクリーンに浄化されるという。記者注)

都の環境性能表示で満点獲得

 住戸はどうか。

 販売されるのは、地権者住戸を除いた443戸(別途、東京都が地権者から権利を譲り受けた48戸を販売するが、一般販売住戸と仕様・価格は変わらないという)。専有面積は、約30~161平方メートル。メインターゲットをDINKS層に置いているため、1LDKと2LDKが主力商品となるが(合計240戸)、ワンルームが62戸、3LDKも141戸設定。コンパクト系マンションでは飽き足らないシングルや、都心部では供給量が少ないファミリー世帯のニーズにまで幅広く応えているのが特徴だ。
 また、足元に公共施設や共用部が集中するため、販売住戸の9割以上が「11階より上」になるのも好材料。つまり、ほぼすべての住戸は、日照や通風の心配がないということだ。

 建具・収納などの内装や設備は、「リミテッド」「エクセレント」「プレミアム」の3グレードで展開する。内装のグレード感は、東急不動産のマンション「ブランズ」シリーズの標準仕様がベース。ワンルームを中心とした「リミテッド」でも、ディスポーザーやステンレス製レンジフード、ソフトクローズキッチン吊戸棚、ダンパー付きLD扉、LDサッシュへのアシスト把手設置など細かい気配りが充実し、建具類の面材も価格並みのグレード感はある。

 「エクセレント」「プレミアム」になると、キッチンや洗面カウンターが天然石仕上げになるほか、食洗機や天井埋め込み式エアコン、浄水器など設備のグレードがアップする。「プレミアム」は、高層階限定のいわゆる「億ション」グレードで、天井高が上がるため、建具や扉の高さが2,400mmとなり、突き板仕上げの高級感あるものとなる。

 制震構造が用いられた建物は、あえて順梁工法を用いてバルコニーを大きく取っているのも特長。「逆梁工法のメリットは、ハイサッシュを使えるということ。当マンションはもともと階高3,300mmを確保していますので、2,200mmのハイサッシュを採用し、ガラス手すりを併用することで明るく開放的な室内としました」(木下氏)。

 また、同マンションは、建物の断熱性、省エネ性、長寿命配慮、そして緑化の推進など、環境親和性の高いマンションを評価するモノサシである「東京都マンション環境性能表示」において、最高評価(09年基準において、オール三つ星)を得ている。09年基準評価の届出がなされた173件のうち、最高評価はわずか8件。環境親和性が高いというのは、これからのマンションの重要なファクターだが、SI工法の採用や各種省エネ機器の導入など、入居者に具体的なメリットとなる要素が多いことも、大いに評価できよう。

湾岸マンションと競合できる販売価格に

 さて、価格である。

 現在アナウンスされている販売予定価格は、専有面積60平方メートル台の2LDKで6,000万円台前半~7,000万円台前半、80平方メートル台の3LDKで7,000万円台後半~8,000万円台後半。平均坪単価は340万円程度となる。この値付けを、どうみるか?

 実は、同再開発地域では08年、やはりこの4社が「プリズムタワー」(総戸数213戸)というマンションを分譲している。このマンション、リーマンショックの前ということもあり、坪単価は優に400万円を突破していた。それと比較すると、ずいぶん購入しやすい価格になったといえる。「例えば、湾岸・豊洲エリアで90平方メートル台のマンションを買う予算で、当マンションでも80平方メートル台の間取りが買えます。『プリズムタワー』も当時の相場では決して高値ではありませんでしたが、やはり売れ足は鈍かった。ようやく、この立地でもサラリーマンファミリーが買える価格でご提供できるようになりました」(木下氏)。

 ユーザーも敏感だ。昨年10月からの事前プロモーションでは、すでに3,000件を超える反響が寄せられている。メインのグロス価格が6,000万円を超えるマンションであることを考えれば、異例の多さだ。山手線ターミナル至近というロケーション、官民一体の再開発というプレミアムだけでなく、販売予定価格のバランスの良さも高い評価を得たようだ。

 マンション市場が正常化しつつあると言われて久しいが、この価格帯のマンションが動くようになれば、本格回復の太鼓判が押せる。その意味でも、要注目のマンションだ。(J)

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