業界初・リフォーム専用ショールームをオープン
マンションディベロッパーの(株)大京を中心とする大京グループは、リフォーム事業を手掛ける(株)大京エル・デザイン本社ビル(東京都渋谷区)の1階にリフォーム専用ショールーム「aratana(アラタナ)」をオープンした。ディベロッパーがリフォームショールームを開設したのは初めてだという。 現在、マンションリフォーム市場は約5,500億円と推計されている。そのような中、同グループが専用ショールーム開設にいたった背景や狙いをお伝えしたい。また実際にショールームを訪れたのでその詳細をリポートしよう。





リフォームショールームを開設した背景や狙い
大京グループがリフォーム専用ショールームを開設した背景には、同社がフローとストックの両輪経営を掲げる中で、ストック部分のテコ入れとしてリフォーム事業を拡充することにより、売上拡大を図りたいという狙いがある。このことは、既存マンションが増加傾向にある中、マンション管理などに代表されるストック事業を強化していこうとするグループ戦略の表れだろう。また、既存建物を生かしてリフォームを試みようとするユーザーが増えてきており、そういったユーザーの関心にも対応するものだ。
同グループのリフォーム会社、大京エル・デザインは、現在、管理会社(株)大京アステージからの受注が80%、仲介会社(株)大京リアルドからが20%程度だというが、大京のライオンズマンションなどに居住するOB顧客はすでに40万世帯。この強みを生かさない手はない。そこで、グループ内で管理するマンションからリフォーム需要を喚起し、受注につなげていこうとの戦略だが、実際、どの程度の事業展望があるのだろうか。
大京エル・デザイン取締役事業統括部長・古賀繁雄氏は、「大京グループのリフォーム事業を行なう当社の売上は、現在年間約30億円。一方、OB顧客40万世帯を抱えるグループのリフォーム市場規模は、三大都市圏に限定しても、340億円に及びます。つまり、現時点では約10%のシェアしか獲得していない事になります」と話す。これを聞く限り、十分な展望がありそうだ。
ちなみに、リフォームの客単価は通常、2万~1,000万円まで価格幅が広いのが特徴で、1,000万近いリフォームは顧客の5%に過ぎないというが、同グループでは40万円程度を想定している。
また、仲介事業を行なう大京リアルドが、中古マンションを検討する顧客に「aratana」を紹介し、リフォームをすると完成形がどのようになるかをイメージしてもらう。「aratana」には、実際のマンションのLDK、浴室、トイレ、洗面脱衣所などが設置されている。これにより、ユーザーは実際の生活シーンを想像しながらリフォームを検討することができる。
同グループでは、総力を挙げ、ライオンズマンションのOB顧客や中古マンション購入検討者へのリフォーム提案を強化し、リフォーム事業を手掛ける大京エル・デザインの売上高を12~13年度には50億円まで拡大したい考えだ。
女性に嬉しい、商品バラエティ
ショールーム「aratana」では、64平方メートルのスペースに、同社グループが新築マンションに導入しているオリジナルの住宅設備と、フローリングなど建具のサンプルを展示している。特に、ターゲットに女性を強く意識していることが明確に見てとれた。
例えば、女性をキレイにする洗面化粧台「Ki-Le-i DRESSER(キレイドレッサー)」。洗面化粧台について、女性消費者とプロのメイクアップアーティストから意見を集めたところ、内容が“照明”と“収納”に驚くほど集中したという。そこで、「Ki-Le-i DRESSER」では、昼間のお出かけシーン、レストランなどのナイトシーン、オフィスシーンの3段階で明るさを調光できる「キレイライト」を取り入れた。同社従来比1.5倍の明るさを実現でき、さまざまなシーンに合わせたメイクを楽しめる。
収納スペースにも細かい工夫がされている。手前にある引き出し部分には「キレイポケット」を設け、メイク用品やマニキュアなどを収められるようにした。また洗面台下の「スライド収納」には、香水やボディソープ、シャンプーなど高さがある物を収納できるほか、三面鏡の裏収納に奥行きを出すことで、ティッシュBOXまで納まるよう工夫がされている。
もう一つが、「L's KITCHEN(エルズキッチン)」だ。同商品は、効率よく調理ができる上、家族のコミュニケーション形成にも貢献する設計となっている。一般のI型キッチンに比べて、シンクの位置を右端に寄せることで、シンクとコンロの間にある調理スペースを広くしている。これにより、家族2人が並んで調理をすることができ、料理をしながら自然に家族がコミュニケーションを図れる。しかも、水仕事の音が響きにくい「静音シンク」を導入したことにより、キッチンにいてもリビングにいる家族とストレスなく会話ができる。さらに、コンロ周辺に調理器具や調味料などの収納スペースを設けたことで、効率的な家事動線を実現。同社実験によれば、一般のI型キッチンに比べて9分7秒の調理時間短縮となったという。このようなキッチンまわりへのこだわりは、女性にとって有り難い配慮だろう。
そのほかにも、玄関に設置された収納「マルチエントランスクローク」では、一列あたりに収納できる靴を増やすことができ、傘まで収められるなど、生活しやすい魅力的な商品が多数あった。
ユーザーが身近に感じるリフォーム
ユーザーは、このようなリフォーム専用ショールームを訪れることにより、中古マンションの購入を身近に感じ、検討しやすくなるだろう。
新築マンションを購入する時に感じるワクワク感を、中古マンション選びでも味わうことができたら、ユーザーにとって、中古住宅がもっと身近で、楽しく、キレイなものに映るのではないか。中古住宅に導入できる商品の魅力アップと、その見せ方を工夫することで、既存住宅市場における商品力を底上げできる。
中古流通の仕組みにも改善すべき課題はあるのだとは思うが、このようなディベロッパーによる既存住宅やリフォーム拡大のための動きは心強い。こうした取り組みを通じて今後、リフォームや中古住宅への関心がますます強まることを期待したい。(yu)