記者の目

2011/12/14

原宿に新たなカルチャー発信地が誕生

築48年の企業独身寮を、1棟まるごとリノベーション。多機能型施設に

 JR山手線「原宿」駅徒歩9分、原宿・明治通り沿いという好立地に大型複合施設が誕生した。上階から住居、オフィス、店舗という編成になっており、これを聞くと従来の複合ビルと大差ないように感じるが、同物件はリノベーション物件であること、また“シェア型”であることに大きな特徴がある。その名も「THE SHARE」。住居・オフィス部分をシェアすることで、人と人の交流によって新たなカルチャーの発信などが生まれることをにらんでいる。総合企画はこれまで数多くのリノベーションを手掛けてきた(株)リビタが担当した。  同物件の最大の魅力は「共用部」。メインとなる「ラウンジ」「ライブラリー」は、まるでNYのSOHOにいるような感覚になる空間だ。この共用部をきっかけに契約につながる入居者も多かったという。12月1日の入居開始前に、見学の機会があったのでその特徴を紹介していきたい。

「THE SHARE」外観。明治通り沿いに立地する
「THE SHARE」外観。明治通り沿いに立地する
従前の社員寮時代の外観。内覧会当日も「ここにこんな建物あったけ?」という話を度々耳にするほど、目立たない存在だったようだ
従前の社員寮時代の外観。内覧会当日も「ここにこんな建物あったけ?」という話を度々耳にするほど、目立たない存在だったようだ
5階・シェア型住宅で専有面積18.61平方メートル、賃料10万3
5階・シェア型住宅で専有面積18.61平方メートル、賃料10万3
000円のモデルルーム。なお、3階部分は女性専用となっている
000円のモデルルーム。なお、3階部分は女性専用となっている
2階スモールオフィスの一室。写真は18.1平方メートルで、そのほかに12.0平方メートル、38.1平方メートルのタイプがある
2階スモールオフィスの一室。写真は18.1平方メートルで、そのほかに12.0平方メートル、38.1平方メートルのタイプがある
シェアオフィススペース。固定デスク14席、フリーデスク8席がある
シェアオフィススペース。固定デスク14席、フリーデスク8席がある
ラウンジ。向かって左は「シェアマップ」、正面奥は「プレゼンテーションボックス」
ラウンジ。向かって左は「シェアマップ」、正面奥は「プレゼンテーションボックス」
ライブラリースペースは靴を脱いでくつろげる空間。住宅入居者限定のスペースでもある
ライブラリースペースは靴を脱いでくつろげる空間。住宅入居者限定のスペースでもある

シェアする住宅、スモールオフィス、オフィス

 同物件は、築48年の企業独身寮を、1棟まるごと改装したもの。建物は鉄筋コンクリート造地上6階地下1階建てで、シェア型住宅64室(3~5階)、スモールオフィス16区画(2階)、シェアオフィス(固定デスク14席・10区画、フリーデスク12席、2階)、店舗4区画(1階)からなる複合施設。

 原宿は「セントラルアパート」に代表されるように、昔からカルチャーの発信地だった。同物件もそれに匹敵するような存在を目指しているという。セントラルアパートでさまざまな文化が生まれたのには、人同士の交流があったからこそ。
 そこで同物件で導入されたのが、「シェア」という概念。住居の居室は、必要最低限の家具・家電と洗面台があるだけで、シャワールーム、ランドリー、キッチンなどは共用だ。スモールオフィスはそれぞれ個室になっているものの、オープンな雰囲気を意識した。シェアオフィスには大テーブルを複数名で囲むフリーデスクもあり、それこそ「袖触り合うも多生の縁」といえるかもしれない。

コミュニケーションの核となる共用部

 同物件の最大の魅力が6階に集約された共用スペースだ。フロアの大半を共用スペースに充て、ラウンジ、キッチン、シアタールーム、ライブラリースペースを設けた。
 入口側にあるラウンジは、ウッディーな雰囲気の家具をゆとりのあるレイアウトで配置。リラックスして利用できるようにというねらいがあるようだ。また、リビタが他物件でも導入している「シェアマップ」を設置。地域情報や個人的なイベント情報などを書き込めるもので、コミュニケーションツールとして有効だ。また、主にスモールオフィス利用者向けに、会社や事業の「プレゼンテーションボックス」を設置。棚には企業の案内やイベントのフライヤーなども自由に置けるそうだ。

 ライブラリースペースは、住宅入居者限定のスペース。靴を脱いで入る仕様としており、特別な空間としてゾーニングしている。現在はインテリア・建築・ライフスタイル関連の本が並べられていたが、今後、入居者自身で本を増やしていくことも可能。もちろん、本のシェアも行なっていける。

 また、もう一つの魅力が「屋上」。スタイリスト・フォトグラファーの(有)レイク・タホの熊谷隆志氏によってデザインされた空間は、ちょっとした庭園にいるよう。明治通り、高層ビル群、原宿のまち並みが見渡せ、さながら都会のオアシスだ。夏には神宮の花火もよく見えるという。

 6階共用スペースと屋上の利用については、住宅入居者は全スペースでフルタイムの利用が可能だが、オフィススペース利用者は時間・場所ともに限られている。「共用部が魅力だからと、スモールオフィスやシェアオフィスを借りた方の中で、住宅も借りる方がいらっしゃいました」(同社広報担当・木内玲奈氏)。

 なお、1階テナントとなるカフェのコンセプトもシェアを意識したものに決定(12月上旬時点)。通常のカフェとしての機能はもちろん、住居、オフィスへのルームサービス、施設の食堂として朝食タイムの営業、イベントの開催(6階共用ラウンジ、屋上テラスなどでのイベント共催)のほか、入居者への割引など実施予定だ。

 月額賃料は、住宅が8万~11万5,000円、スモールオフィスが10万5,000~25万円、シェアオフィスが1万5,000~5万円(すべて共益費は別途有り)。10月下旬からの入居者募集で、スモールオフィスはすべて入居者が決定。住宅は20~40歳代の幅広い業種の社会人に反響が高いようだ。
 店舗・住宅の入居開始は12月1日から、店舗部分のオープンは2012年1月14日を予定している。

※※※

 以前、ニューヨーク市ブルックリン区の低所得者工場地帯の廃墟となった工場をリノベーションし、若いアーティストたちに貸すことでまちが活性化、不動産価格も上昇したというTVのインタビューを見たことがある。さまざまな作品で使用する機材や水回りを共同利用にすることで低料金を実現し、資金力のない若い才能を伸ばしているのだ。
 物件、特に共用部を内覧している際、ふとその場面が思い出された。まるで海外にいるような自由な空間を感じる。おそらくここで、さまざまな情報や文化の共有があり、新たな発想が生まれていくはずだ。

 また、先日聞いた建築家で東京大学教授の隈 研吾氏の講演によると、コミュニティがあり、活気がある集合住宅を長年、機能・維持していくポイントの一つは「多機能型住宅」であることだという。つまりは、一つの建物内に住宅だけでなく、ホテル、医院、事務所などを設けた複合施設にするということだ。
 同氏によるとフランス・パリの繁栄の要因は、集合住宅を核としたまちの整備にあり、その集合住宅は下層階が店舗、上層階が住宅というもので、今回の「THE SHARE」もまさにそのもの。この場所がまちの元気の起爆剤になるのではと楽しみだ。(umi)

***

【関連ニュース】
東京・原宿にシェア型複合施設をオープン/リビタ(2011/11/28)
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