記者の目

2012/4/30

感性を刺激し、アイディアを創造する仕事場

「渋谷」駅徒歩3分に、シェアオフィス「PoRTAL」オープン

 今春、東京・「渋谷」駅徒歩3分に新しいシェアオフィスがオープンした。同オフィスは、今までにない斬新な空間デザインが特徴となっている。先日開催されたオープニング記念イベントでは、主要顧客ターゲットのクリエイターやフリーランスで働く人々が多数来場し、賑わった。  同施設の注目すべき特徴や開業の狙いなどを紹介していこう。

全席フリーアドレスのワークスペース。開放的な空間が特徴
全席フリーアドレスのワークスペース。開放的な空間が特徴
座席は自由だが、利用者は自分のお気に入りの席が大体決まっているらしい
座席は自由だが、利用者は自分のお気に入りの席が大体決まっているらしい
ラウンジの様子。ソファ席を配置し休憩が取れるスペースとなっている
ラウンジの様子。ソファ席を配置し休憩が取れるスペースとなっている
ワークスペースに隣接したスペースにもソファが置かれ、リラックスできる空間づくりを心がけている
ワークスペースに隣接したスペースにもソファが置かれ、リラックスできる空間づくりを心がけている
キッチン(写真左)とダイニングテーブル(写真中央)では、利用者同士が自然とコミュニケーションを交わすことができる
キッチン(写真左)とダイニングテーブル(写真中央)では、利用者同士が自然とコミュニケーションを交わすことができる
キッチンの様子(写真はオープン記念イベント時のもの)
キッチンの様子(写真はオープン記念イベント時のもの)
毎日15時の“ブレイクタイム”では、煎れたてのコーヒーを無料で提供し、利用者の快適性を高めている
毎日15時の“ブレイクタイム”では、煎れたてのコーヒーを無料で提供し、利用者の快適性を高めている
ミーティング・コンテナ(会議室)。利用者の要望を反映し、防音設備も備えたという
ミーティング・コンテナ(会議室)。利用者の要望を反映し、防音設備も備えたという
壁一面に設置されたホワイトボード。クリエイターがアイディアをブラッシュアップする際にも役立ちそう
壁一面に設置されたホワイトボード。クリエイターがアイディアをブラッシュアップする際にも役立ちそう
オープン記念イベントでは、作家やアーティストが作品の展示・販売を行なった
オープン記念イベントでは、作家やアーティストが作品の展示・販売を行なった
オープン記念イベントの会場の様子。2日間で約500人のクリエイターが来場し賑わった
オープン記念イベントの会場の様子。2日間で約500人のクリエイターが来場し賑わった

シェアハウスでのノウハウを“オフィス空間”へ

 同施設を手掛けるのは、シェアハウス住居専用サイトを運営する(株)ひつじインキュベーション・スクエアだ。これまでWEBサイトで全国のシェアハウスの情報提供を行なってきた同社では、スタッフ自らさまざまなシェアハウスや入居者を実際に目で見ながら、住宅デザインやコミュニティ形成などのノウハウ収集に努めてきた。そうした経験により培ったノウハウを、“オフィス空間で活かせないか”という発想から生まれた実験的な試みが、今回のコアワーキングスペース「PoRTAL」の開業である。

 同社代表取締役社長・北川大祐氏は、「シェアオフィス事業は、まだまだマーケティング不足の段階です。そのため、今回の開業で即利益を出すことはまったく想定していない。むしろ、将来的な事業の伸びしろを見極めるための一つのきっかけと捉えており、ワークスペースの市場特性(どんな人がくるか、何が求められているか等)を把握する目的が強い」と話す。
 シェアハウスに向き合ってきた同社が今回、シェアオフィスに着目したことについて、「人が一日の中で最も長く時間を過ごす場所が仕事場。その空間を、より有意義で快適なものにしたいという想いから、オフィス空間のデザインに辿り着いた。従来のシェアオフィスにない、コミュニティの形成や感性を刺激する新しい空間づくりを目指した」(同氏)。同社は、最近の住宅で注目されている、コミュニティ形成や人同士の触れ合い・共感を実現する空間を、“オフィス”という新たなフィールドで提供していく。


築50年のビルを、さまざまなシーンに対応したシェアオフィスに改装

 「PoRTAL」は、“QWL(Quality of Working Life―仕事時間の品質)の探求“をコンセプトに、全席フリーアドレスのワークスペースを中心としたシェアオフィスで、基本的にサインアップしたオフィス・メンバーが利用できる。同オフィスはオープンなワークスペース、ラウンジ、ミーティングコンテナ(2室)、キッチン、フォーンブース(2室)で構成。築50年の地上10階地下2階建て鉄骨鉄筋コンクリート造のビルで元々病院が入居していたワンフロアをスケルトンにし、全面改装したもの。延床面積372平方メートル。改装費は非公開。

 ラウンジをはじめ多数のソファ席や、作業スペース30~40席を用意しており、会員利用者は仕事のシーンに応じて自由に席を選択できる。料金体系は月額8,000円(土日祝10~20時と平日18~22時の間で月間25h利用可)~4万5,000円(利用時間制限なし)と、幅広いプランを用意した。主なターゲットは、30~40歳代のクリエイターやフリーランスで働く経営者だが、渋谷駅至近という交通利便性もあり、会社員からの問い合わせも来ているという。出版・広告他クリエイティブな仕事に従事する人をターゲットにしたとあって、同社がこだわったのが、“感性を刺激し、アイディアを創造できる空間づくり”だという。そのための工夫を具体的に紹介していこう。


オフィスにキッチン、ラウンジ、ソファ。カフェのような空間

 内覧者に特に好評なのが、共用部の開放的な空間。これだけワンフロアを見渡せる空間をもつシェアオフィスはあまりないのではないだろうか。広いスペースは気持ちが良いだけでなく、周囲で思い思いに仕事に没頭する人を見ながら、程良い緊張感や刺激を味わえる。
 仕事で頭が疲れたら、ほっと一息できる飲食可能なラウンジソファで休憩し、気分転換ができる。また毎日15時のブレイクタイムには、煎れたての美味しいコーヒーを無料で提供するサービスも行なっている。同空間には、リラックスと程良い緊張感が混在し、従来オフィスで味わえない開放的で居心地の良い環境が、想像力をかき立てる。

 さらに、コミュニティ形成に貢献する設備が、共用のキッチンスペースだ。キッチンでは、料理をつくりながら会話を交わせるほか、食事をしながらの意見交換を可能とすることで、利用者同士のコミュニケーションを促進する。またキッチンには、明るい日差しが大きな窓から入り込み、初対面の人同士でもリラックスして話せるような、温かく柔らかい空気が流れていた。
 そのほか、クリエイターがアウトプットしたアイディアを自由に書き出し、それを皆で共有しながら意見を出し合えるホワイトボードも設置。会議に利用することで、活発な意見交換や新しいアイディア創出などの効果がありそうだ。北川氏は「内装設備や本棚などインテリアの一つ一つまでこだわることで、クリエイターの職場にふさわしい空間とした」と語る。


認知度アップと情報蓄積が課題

 昨今活況を呈するシェアハウスのように、シェアオフィス市場に注目が集まる日がくるのだろうか。一般企業への普及は、コンプライアンスや仕事上の連携など業務効率の問題でなかなか厳しそうだが、個人事業主などには、仕事場の選択肢の一つとなり得るだろう。

 「シェアオフィス自体がまだユーザー認知の浅い分野であり、正しく理解がされていない上、業界内の事例も少ない。そのため、現段階での積極的なビジネス展開は時期尚早」(同氏)とのことだが、同社では、ゆくゆくはシェアオフィス専用サイトの運営も視野に入れているという。そのために、まずはシェアオフィス市場の情報蓄積を積んでいく必要があると同氏は指摘する。
 今回の「PoRTAL」開業をきっかけに、シェアオフィスマーケットがどう育成されていくのか、注目したい。(yu)

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【関連ニュース】
コワーキングスペース「PoRTAL」でオープン記念イベント/ひつじインキュベーション・スクエア(2012/3/21)
コワーキングスペース『PoRTAL』、渋谷にオープン/ひつじインキュベーション・スクエア(2012/3/7)

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