記者の目 / 開発・分譲

2012/9/28

生まれ変わった東京ステーションホテル

 10月3日、いよいよ「東京ステーションホテル」が開業する。2006年に、復原工事のため休館となってから、はや6年。その間、八重洲口にはシャングリ・ラ東京、日本橋にマンダリンオリエンタル東京、有楽町にザ・ペニンシュラ東京が開業、今年の5月には、丸の内にパレスホテル東京がグランドオープンし、丸の内・東京近辺では、ホテルが再び注目を浴びてきた。03年に国の重要文化財に指定された東京駅丸の内駅舎の中央に圧倒的な存在感をみせる同ホテル。同駅丸の内駅舎保存・復原工事を経て、どんな姿となったのか。一足先に内覧した様子をリポートしたい。

東京ステーションホテルメインエントランス
東京ステーションホテルメインエントランス
暖色系が和む。このソファセットの向かいに暖炉がある
暖色系が和む。このソファセットの向かいに暖炉がある
サブエントランスと、メインエントランスの間にあるラウンジ
サブエントランスと、メインエントランスの間にあるラウンジ
4階のゲストラウンジ「アトリウム」
4階のゲストラウンジ「アトリウム」
メゾネットタイプの客室
メゾネットタイプの客室
メゾネットルームの上は寝室
メゾネットルームの上は寝室
メゾネットタイプの客室は目的に合わせて利用できる
メゾネットタイプの客室は目的に合わせて利用できる
スィートルームの一室。丸の内を望む
スィートルームの一室。丸の内を望む
地下1階のスパ、「トキオネ」レセプション
地下1階のスパ、「トキオネ」レセプション
人工炭酸泉と人工温泉が東京の中心に!
人工炭酸泉と人工温泉が東京の中心に!
トキオネスパでは、フランスのタルゴブランド社の「テラケ」ブランドを利用した珍しい施術が受けられる
トキオネスパでは、フランスのタルゴブランド社の「テラケ」ブランドを利用した珍しい施術が受けられる

まさに東京の中心、語り継がれるホテルへ

 東京ステーションホテルは、東京駅丸の内駅舎の中の地下2階から地上4階(一部)に位置。一部客室から、皇居と行幸通り、丸の内エリアを見渡せる。東京駅丸の内南改札口を出て、北側40メートルほどにメインエントランスがあるが、南改札口からサブエントランスを使用すれば、外に出ずしてアクセスができる。東京駅直結、大手町・丸の内・銀座にも近く、商用のみならず、旅行者にも最高に便利なロケーションだ。

 東日本旅客鉄道株式会社は、07年5月の東京駅丸の内駅舎保存・復原工事の着工の際、「現存する駅舎を解体して建て直すのではなく、現存している駅舎の外壁など主要部分を可能な限り保存・活用し、創建時の姿に復原する」と発表した。

 1914年に開業、故辰野金吾氏によって設計された東京駅丸の内駅舎は、歴史を引き継ぎながら、後世の修理で改造された部分を原型に戻す「復元」ではなく「復原」により、再び、人々が集い、時を刻むホテルとして、オープンすることとなった。

優しいデザインの裏に女性デザイナーの存在

 今回内覧したのは、まだ内覧会を実施する前の状態で、ホテル内には納品された備品らしきものが置かれていたり、客室のチェックをするスタッフらとすれ違うこともあり、開業が間近に迫る中、非常に緊張した空気が流れていた。
が、実際に中に入ると、東京駅の賑やかな世界とはかけ離れた、温かく優しい雰囲気と、開放感にまず圧倒された。
サブエントランスから進み、レストラン横を過ぎるとメインのエントランスになる。デザインコンセプトは、ヨーロピアン・クラシックが基調というが、印象は「ソフトな感じ」。

 内覧前は、国の重要文化財ということもあり、こてこてのクラシックな内装をイメージしていただけに、驚いた。たとえば、メインエントランスの、壁の上部の肌色っぽい色は、優しい邸宅の壁色のよう。暖色系を使い、重厚感を出した空間となっている。実際の火は使えないが、暖炉もあり、扉の向こうの丸の内の世界と切り離した、落ち着きのある時間を演出している。クラシックを基本にしながらも、軽やかさ、和やかさがある。デザインは、英国のインテリアデザイン会社、リッチモンド インターナショナル社を起用しているというが、女性の視点なのか、優しさを感じる。100年続く歴史的建造物を、これほどまでにソフトに仕上げるとは…。これから先、このホテルで生まれるドラマや、人々の思いや心が、優しく刻まれていくような気がする。シャンデリアもシンプルで、コンパクトなレセプションまわりを、暖色光が包むように照らしている。

 客室は全150室。「クラシック」「パレスサイド」「ドームサイド」「メゾネット」「スイート」「ロイヤルスイート」の6タイプがある。標準的なタイプでも天井高約3メートルで、広さは約40平方メートル。注目は、合計9室あるというメゾネットルーム。うち7室が標準的なメゾネットルームで、階段上がベッドルームとなっている60平方メートル程度の客室。階段スペースがあるため、それほど広さを感じなかったが、階下の細長いスペースは、テレビと椅子が置かれ、いろいろな場面に活用できそうだ。すぐ浮かんだのは、海外から来たビジネスマンが、滞在中に簡単な打ち合わせや、所用の連絡などをするスペースを階下で行い、上をプライベートのスペースとすれば、客室一つで、仕事とプライベートを切り離した利用ができるということだ。

 「ドームサイド」の客室は、南北にある丸屋根ドームに沿ってレイアウトされたユニークな客室で、このドームには干支のイラストがあるとか。

 一緒に内覧をした、イギリス人を夫にもち香港に長く暮らしていたという女性は、この客室のロケ―ションは、風水がいい、と言っていた。もともと、東京駅から丸の内に臨む方角は、風水的にとても理想的なのだそうだ。気の流れも良く、眺望も良く、利便性もあり、心地良いとなれば、ステイするには最高の環境といえるだろう。

イチオシは、4階のゲストラウンジ

 1階のメインエントランス横のカフェの天井高にも驚いたが、4階のゲストラウンジ「アトリウム」の開放感は、特筆すべきところ。天窓が明るさをより演出し、最大天井高は9メートルという空間だ。ライブラリースペースやミーティングスペースもあり、大きな天窓からそそぐさわやかな自然光に包まれて、まどろみたいところだ。ゲストは、ここで朝食をいただいたり、本を読んだり、思い思いの時間を過ごすのだろう。ここは、東京駅丸の内駅舎中央部の大屋根裏の大空間だったところだ。

常に心地よくステイするための工夫が

 東京ステーションホテルは、横に広がった構造のため、客室につながる一直線の廊下には、ゲストが飽きずにすむようにと、廊下の両サイドの壁に少しずつアクセントをつけているそうだ。それを聞くまで気づかなかったが、確かに長い廊下をずっと歩いているというのに、なぜか刺激的で、もし自分が宿泊者でも、「客室が遠い…」というふうには感じなかった。

 延床面積は2万800平方メートル、飲食施設は、フランス料理レストラン「ブラン ルージュ」、ロビーラウンジ「ティーラウンジ」、バー&カフェ「カメリア」、バー「オーク」がある。

 テナントレストランは、寿司、日本料理、中国料理、鳥料理、喫茶&物販、イタリアンワインバーが入居。3つの会議施設の他、コンシェルジュデスク、ビジネスセンター、そして「フィットネス&スパ」が地下1階にある。「Fitness & Spa at The Tokyo Station Hotel」の延床面積は816平方メートル、スパ「TOKIONE(トキオネ)」と、株式会社ジェイアール東日本スポーツが運営する「THE JEXER TOKYO」が入っている。
 また、「Bath & Relaxing」というスペースとして、人工炭酸泉、人工温泉、冷浴槽、ドライサウナ、スチームサウナなどもある。

 まだ自分の両親すら生まれていない頃に誕生し、多くの人の思い出をを作り、東京のシンボルだった東京ステーションホテル。これまでも、そして、これからも、時代にあったおもてなしとサービスで、人々を魅了して、語り継がれていくのだろう。

 まだ誰も泊まっていない客室を見て、廊下を歩き、アトリウムに佇み、これから、どれだけ沢山の人たちがここで、様々な思いを重ねて行くのだろうかと考えた。人の記憶は建物や景色とともに残される。いつまでも、人々の心をつなぎ、癒し、力を与え、ただそこにあるだけで人々を守る保存樹木のように、そこにあり続けてほしいものだ。(yukizo)

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お知らせ

2024/5/1

「海外トピックス」を更新しました。

サントスの「動く博物館」と中心街の再活性化【ブラジル】」を更新しました。

ブラジル・サンパウロ州のサントスでは、旧市街地2.8キロをめぐる「動く博物館」が人気となっている。1971年には一度廃止された路面電車を復活して観光路面電車としたものだが、なんと日本から贈られた車両も活躍しているという。