記者の目

2014/2/7

幸せな瞬間を思い描き、住まいづくり

(株)コプラスの新しい取り組み、シナリオを使ってセミナー

 自分らしさのぎゅっと詰まった「コーポラティブハウス」。設計やら費用やら面倒なことも多そうだけど、でもいつかは暮らしてみたい。自分の理想を形にした家で最高に贅沢な自分だけの時間を過ごして、豊かな生活を送りたい―。  そうはいっても、やっぱりハードルが高い。そもそも本当に自分が暮らしたい住まいのカタチって、雑誌の中の家とも違うしな。自分の頭の中にはあるのだけれどうまく表現できない。なんとなくあんな感じ…と、頭に浮かんでいる映像を言葉にできたのならば、きっと家族にだって、皆にだって伝わるのに。映像を言葉に、そして形にするには、どうしたらいいのだろう。  まさにそんな取り組みを「シナリオ」を使って実践している企業がある。それも、「人が主役」の住まいや空間づくりに勤しむ(株)コプラス。早速担当者に話を聞いてみた。

シナリオの書き方について話す、シナリオ・センターの新井一樹氏。「脚本って、テレビで観ているドラマの同じ脚本でしょ?私にできるかな」と思うも、新井氏のわかりやすい説明に参加者の不安もクリア!
シナリオの書き方について話す、シナリオ・センターの新井一樹氏。「脚本って、テレビで観ているドラマの同じ脚本でしょ?私にできるかな」と思うも、新井氏のわかりやすい説明に参加者の不安もクリア!
大事なのは、キャラ設定。ここに登場する「私」は、何が好きで、家の中でどう過ごしているのか。そしてセリフは?----そんなことを想像する過程で、自分のこだわりの家づくりのヒントが見えてくる
大事なのは、キャラ設定。ここに登場する「私」は、何が好きで、家の中でどう過ごしているのか。そしてセリフは?----そんなことを想像する過程で、自分のこだわりの家づくりのヒントが見えてくる
「え、あなた。そんなふうに思っていたの?」「そんなことがしたかったの?」など、見えてくる、見えてくる。それが狙い。そして、自由設計をするうえで、最も大切で、楽しいステップでもあるとか。実用的、機能的な発想から家を作るのではなく、「やりたいこと」から入るのがポイント
「え、あなた。そんなふうに思っていたの?」「そんなことがしたかったの?」など、見えてくる、見えてくる。それが狙い。そして、自由設計をするうえで、最も大切で、楽しいステップでもあるとか。実用的、機能的な発想から家を作るのではなく、「やりたいこと」から入るのがポイント
シナリオは「登場人物」「柱」「ト書き」「セリフ」で構成される。「柱」は、シーン。「ト書き」は、登場人物の動作や仕草。シナリオの書き方を簡単にいえば、「柱」を立ててシーンを設定し、「ト書き」で説明し、「セリフ」で会話させる
シナリオは「登場人物」「柱」「ト書き」「セリフ」で構成される。「柱」は、シーン。「ト書き」は、登場人物の動作や仕草。シナリオの書き方を簡単にいえば、「柱」を立ててシーンを設定し、「ト書き」で説明し、「セリフ」で会話させる
シナリオを書いた後は、その映像を図面にする段階。「あ、トイレがない」「寝室の横が風呂場になってしまった」など、理想だけを追求するあまりつまずくことも。それはやってみないとわからないこと。セミナー当日は、設計士やコーディネーターらも対応し、図面づくりの質問にもあたった
シナリオを書いた後は、その映像を図面にする段階。「あ、トイレがない」「寝室の横が風呂場になってしまった」など、理想だけを追求するあまりつまずくことも。それはやってみないとわからないこと。セミナー当日は、設計士やコーディネーターらも対応し、図面づくりの質問にもあたった
図面上で家具などをレイアウトしていく作業は、福笑いのような作業で盛り上がったという
図面上で家具などをレイアウトしていく作業は、福笑いのような作業で盛り上がったという
今後、コプラスでは物件候補を持つ一歩手前の段階の人に向けた説明会を企画したり、仲介業務も行なっていく予定。それに合わせて仲介専用のポータルサイトも作るという
今後、コプラスでは物件候補を持つ一歩手前の段階の人に向けた説明会を企画したり、仲介業務も行なっていく予定。それに合わせて仲介専用のポータルサイトも作るという
コーポラティブハウスを提供する「コミュニティ」に強いコプラスがまちづくり支援へ
コーポラティブハウスを提供する「コミュニティ」に強いコプラスがまちづくり支援へ

 (株)コプラスは、昨年5月、プロのシナリオライターを数多く輩出しているシナリオ・センター(東京・青山)の協力のもと、「ゾーニングワークショップ」を開催した。当日は、コーポラティブハウスに興味のある17組の家族が参加し、シナリオ・センターの新井一樹氏から「シナリオ」の基本的な構成や書き方を学び、各世帯で1本ずつ、生のシナリオを書いた。シナリオを通して見えてきたそれぞれの住まいの理想のカタチを、その次のステップとして図面に落とし込んでいくというもの。
 「言葉」と「図面」を巧みに使って自由設計の楽しさを覚え、理想を明確にしていくというセミナーだったが、総勢(子供6名含む)33名の参加者には大好評だった。

柱と、ト書きと、セリフを使って

 しかし、素人が突然、シナリオなど書けるものだろうか。
 恥ずかしがったり、ためらったりして進まないのでは。
 シナリオは、「柱」と「ト書き」と「セリフ」の3つで構成される。
 今回のセミナーでのお題は、「自分の理想の住まいで、最高だと感じる瞬間の場面をシナリオにしてみよう」というもので、家族全員を登場させるのが条件。

ドラマにすれば自然と、理想の住まいがポロリ

「当初、社内でもそういった懸念はあったのですが、意外とみなさん恥ずかしがらずにやりましたね。相手が目の前にいるのに、言葉にするって照れくさいもの。でも、それは自由設計のプロセスに似ています。踏み込んだところまで自分の考えや希望、理想などをきちんと伝え、すりあわせていくのが、住まいづくりには大事ですから」(㈱コプラス管理部マネージャーの野村 郁氏)
 登場人物が自分の家族で、シーンも自分の家だからなのか。参加者らは、楽しみながら15分程度で書き終えたという。

 シナリオでは、キャラクターの設定が重要だが、それも家づくりに、通じるものがある。家で大半の時間を過ごす主婦が、友人を家に招くのが好きか、モノづくりの趣味の作業に一人で集中したいタイプか。夫は?子供は?おばあちゃんは?など等…。
 家族全員の生活スタイルや、「好きなこと」を尊重した住まいを作るためにも、きちんと一人ひとりの個性(キャラクター)と向き合う必要がある。言葉にするというのはなかなか難しいが、ドラマを作り、場面を作り、映像をイメージすると、自然にポロリと出るのかもしれない。「つまり、今回のセミナーは、シナリオを書くことが最終目的ではなく、自由設計のバーチャル体験」(野村氏)

 家の中で自分が幸せを感じる場面を思い浮かべてセリフを書かせ、それにより、理想の住まいを追求させるという同社のこの取り組みはかなり面白い。当日は、それが目的ではなかったものの結果的に成約にも結びついた。

「私が主役の幸せなリビングルーム」

 誰しもが、自分の家の中で、毎日幸せを感じたいと願う。しかし実際は、多くの人が既製の家に合わせるように暮らしている。「自分に合った住まい」であるべきなのに。
 コーポラティブハウスに限らず、「家」の中で、「自分がとびきりハッピーなシーン」が描けるよう、考えてみようではないか。シナリオを何回も書いて、家族で何度も議論をするもよし。このようなセミナーに参加するもよし。と、せっかくなので、自分も考えてみた。

――夫が犬の散歩から帰ってきて、カウンターキッチン横の足洗い場で足を洗っているのを、「あら、もう帰ってきたの?」と、ソファに深く腰掛けながら見ている私。その頭上からは光と緑。ソファの向かいには大型スクリーンとオーディオシステム。私はスィッチ一つで、何でもコントロール(ついでに、夫も?)…と、ちょっと横着なキャラクターが見え見えか…――

人とのつながりを求めて

 コーポラティブハウスの原点ともいえる「人とのつながり」。
 コプラスでは、これをもっと広げて、今後はまちづくりの支援にも携わっていく考えだという。「シナリオ」を通して住人らのコミュニティを形成していく。すでに(株)御用聞きとのコラボレーションも行ない、光が丘団地でシナリオを使った子供向けイベントも実施ししている。

 昨今のシェアハウス人気もそうだが、やはり人はどこかで人を求め、人と繋がりたいという思いがあると思う。「つながり」と「自分らしさ」を両輪に「大好き」が詰まったコーポラティブハウス。
 今だからこそ、その注目度が上がるような気がする。(Y)

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編集部レポート「官民連携で進む 空き家対策Ⅳ 特措法改正でどう変わる」では、2023年12月施行の「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」を国土交通省担当者が解説。

あわせて、二人三脚で空き家対策に取り組む各地の団体と自治体を取材しました。「滋賀県東近江市」「和歌山県橋本市」「新潟県三条市」「東京都調布市」が登場します!空き家の軒数も異なり、取り組みもさまざま。ぜひ、最新の取り組み事例をご覧ください。