記者の目 / ハウジング

2014/5/12

注文住宅だって“試着”、体感施設がよりリアルに

大和ハウス工業が新たなコンセプトで体感施設オープン

 一生に一度の大きな買い物、マイホーム。洋服や車は購入前に着たり乗ったりできるのに、なぜ家はお試しができないのか? これからの家づくりでは“試着”をしよう。  そんなコンセプトの体感施設が4月26日にオープンした。大和ハウス工業(株)が東京本社(東京都千代田区)敷地内に設置した戸建住宅体感施設「TRY 家 Lab(トライエ・ラボ)」だ。

ヘッドマウントディスプレイ(HMD)。視界を覆うことでモニターで見るより臨場感が増す。女性用に額に跡がつきにくい手に持つタイプも用意
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)。視界を覆うことでモニターで見るより臨場感が増す。女性用に額に跡がつきにくい手に持つタイプも用意
スタジオ全体を「緑」にすることで、CGと実写を合成することが可能となり、提案する住宅の前で家族の記念撮影などもできるように
スタジオ全体を「緑」にすることで、CGと実写を合成することが可能となり、提案する住宅の前で家族の記念撮影などもできるように
体験者以外はモニターで合成された映像を見ることができる
体験者以外はモニターで合成された映像を見ることができる
3Dプリンタで制作した代表的なプランの住宅模型。組み立てれば一軒家に。下は体験者を合成した記念写真
3Dプリンタで制作した代表的なプランの住宅模型。組み立てれば一軒家に。下は体験者を合成した記念写真
「トライエ シミュレーション」。建設予定地や居住地の住所を入力すれば、今後10年間にその付近で発生する可能性がある地震を検索し、それが体験できるシステム。“他人事”でなく“自分事”としてより強く地震の可能性を実感する、という工夫がされている。関東圏の場合、住所は「丁目」まで絞り込むことが可能
「トライエ シミュレーション」。建設予定地や居住地の住所を入力すれば、今後10年間にその付近で発生する可能性がある地震を検索し、それが体験できるシステム。“他人事”でなく“自分事”としてより強く地震の可能性を実感する、という工夫がされている。関東圏の場合、住所は「丁目」まで絞り込むことが可能
一度に6名まで体験できる。体験時間は15秒間
一度に6名まで体験できる。体験時間は15秒間

◆バーチャル3D映像技術で、完成後の家をリアルに体感

 同施設は、クイズ形式でエコな暮らしを学ぶスペース「トライエ エコロジー」ほか5つの展示で構成されている(その他施設の概要はこちらのニュース参照)。中でも試着の目玉となるのがMR(Mixed Reality)技術を用いた、住まいの疑似体感ができる「トライエ ヴァーチャル」だ。他の4つの展示コーナーは、各営業所が実施する見学会の団体客を対象にしているが、こちらはすでに商談を始めているユーザーを対象にしたもの。

 MR技術とは、現実世界とCGでつくった仮想世界(VR:ヴァーチャル・リアリティ)をリアルタイムで融合する3D映像技術。スタジオ内に多数設置したセンサーにより、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)(右写真参照)に、注文住宅のヴァーチャルプランと体験者自身の動きを連動・融合させた映像を映し出し、まるで自分が完成後の家の中で動き回っているかのように、部屋の広さや内装の色などが体感できる。

 映し出される映像は、床のカラーや間取りも変更でき、さらに建設予定地に合わせて季節や時間帯による日差しも変化させることができる。戸建住宅の体感型施設への導入は日本初とのこと。

◆約5分間で部屋の広さや高さ、窓辺の日当たりなどを確認

 実際にHMDを装着してみた。目の前にはこれから入る家の外観が映し出されている。その後、映像がリビングに移動、茶色の椅子と白いソファが見えてくると、実際に座るよう促される(スタジオ内には、椅子が用意されている)。座った状態で部屋を見回して様子を確認。手を伸ばすと自分の手が映像に映し出され、別の体験者がいる場合は、お互いの姿も見える。

 その後、窓を見るように促され顔を向けるとそこにはウッドデッキ付きの庭が。朝9時から12時、15時、17時と日当たりの様子が次第に変化していく。壁や床など内装の色の変更もできる旨のアナウンスがあり、床の色を茶色や生成りに変更して雰囲気の違いを体感した。

 次に2階に移動し(自分は動かず映像のみ)、腰壁が見えたら、その先の階段を覗き込む。図面やパースではイメージしにくい、部屋の高さや広さが実体験として確認できるようになっている。
 これら一連の動きは映像を操作するオペレーターから指示が出され、また体験者自身には動きをサポートしてくれるスタッフが付いている。
 と、見学会ではこの段階で終了、その間約5分間だった。なお、記者は車酔いをする方であるせいか、HMDをはずしたとき、問題ない程度だが、若干のふらつきを感じた。

 実際にやってみた感想だが、さすがに「洋服の試着のように」とまではいかないものの、2階からの高さは少々怖いくらいに臨場感があり、日差しの変化などもイメージがつかみやすいと感じた。ただ、内装の違いの確認に関しては正直これだけでは若干厳しい気がする。併設の「Living Salon」で実際の資材が確認できるので、それと合わせて確認すれば有効かもしれないと感じた。

 何より、この体験自体を面白く感じる人がけっこういるのではないか。同じ買い物をするなら、その過程が楽しい方が購入に前向きになるだろう。しかも、体験後は3Dプリンタで提案中の住宅の模型(1/100サイズ)をプレゼントするというから、外観デザインや間取りの立体的な確認ができるうえ、家づくりのいい思い出にもなる。

◆情報技術などの進歩で体感により“リアル感”を追及する時代に

 ここ数年、こうしたVR、MR、AR(拡張現実、MRの一種で目印にスマート フォンをかざすと情報が取得できるような技術)技術は格段に進化し、特殊な技術から身近なものとなりつつある。AR技術 は、不動産業界でも、広告・宣伝に取り入れる例も増えてきた。

 今回のMR技術も、プランのバリエーションなどソフト開発は必要だが、ユーザーに住まいを“試着”させることで新しいニーズの掘り出しや開発のヒントにもつながってこよう。また、バーチャルという特性を活かせば、大がかりなハードを用意するのが難しい場合などでも省スペースで設置可能となるなど、モデルルームの多様性も拡がる。

 ただし、技術の導入が進めばユーザーが体感施設に求める「住まいの疑似体験」の質も大きく変わってくる。今後は技術の新しさだけでなく、”どれだけ実際に近い疑似体験ができるのか”さらなるリアルさの追求や演出の工夫も課題となっていくのだろう。(meo)

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【関連ニュース】
東京本社に戸建住宅体感施設をオープン/大和ハウス工業(2014/04/23)

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