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vol.441 えっ、あの動物も?意外な害獣たち【オーストラリア】

 日本でも近年大きな問題になっているのが「害獣」。ニホンザルやシカ、イノシシなど農作物を食い荒らす輩だけでなく、近頃はクマが人間を襲うことまで増えてきました。
 一方、オーストラリアにはライオンやトラやピューマなどの巨大な肉食獣やクマはいません。ただ北部の熱帯に近いあたりではオスの体長が6~7メートルにもなる獰猛なイリエワニはいます。

こちらは最大クラスの個体。牙も目つきも強烈!

 またディンゴという野生の犬が家畜などを襲うことも。ただ基本的には人間を避けるため、人が被害に遭うことはまれです。

子育て中の母親ディンゴ。警戒しているのか目つきが鋭いですね

 いずれにせよ、ディンゴやイリエワニが住むのは人里離れた草原や河川などがほとんどなので、都市で日常生活を送っていて遭遇することはほぼありません。

農家の大敵「カンガルー」

 そんなオーストラリアですがちょっと意外な害獣もいます。まずはカンガルー。ピョンピョンと飛ぶ姿や後ろ足と尻尾で「直立」する様子がかわいいと、コアラとともに人気を二分する彼らのどこが害獣なのでしょうか。

おなかに赤ちゃんを入れた母親カンガルー

 彼らは草食動物です。ただ葉っぱを食べるのはまだしも、「根っこ」を好む種類もいるのです。せっかく育てた作物をまさに根こそぎダメにしてしまうのです。さらにあの跳躍力なので2メートルくらいの柵を跳び越えて侵入することも可能。よって農家にとっては憎き害獣となるのです。

 また植林しても若い芽や根っこを食べてダメにしてしまうので、林業や国立公園・自然保護区整備の関係者にとっても立派な害獣です。

若木を保護する網も破る貪欲さ!

カンガルーの「飛び出し注意」

 さらにカンガルーは道路での「飛び出し」も多いです。後ろ足と尻尾で直立する姿から、道路脇で立ち止まると想像されるかもしれませんが、全然そんなことはありません。突然藪の中から何の躊躇(ちゅうちょ)もなく飛び出して道路を横切るので、本当にヒヤッとします。

こんな感じでピョンピョン跳び出してきます

 オーストラリアでは都市部ならまだしも郊外のハイウェイでは日本の高速道路のようなガードレールはありません。まあ、あの跳躍力なのであっても無意味ですが。というわけで運転する側が注意するしかありません。特に活動が盛んになる明け方と夕暮れ時は要注意です。

道路脇にある「カンガルー注意」の標識

 大型になると体重80キログラム以上になる個体もいるので、ぶつかったらカンガルーも命を落とすこともありますが、クルマのほうも走行不能になるくらいダメージを受けることもあります。
 そういうわけでオーストラリアの郊外を車で走っているとカンガルーやワラビー(小型のカンガルー)の哀れな姿が道に残されていることもしばしばです。

アゴが強く水栓を開ける「ラクダ」

 もう一つオーストラリアの変わった害獣はラクダです。「オーストラリアでラクダ? 中東とか北アフリカの動物ではないの?」と思われる方も多いでしょう。
 じつは19世紀中頃にオーストラリアの内陸部の砂漠やそれに近い気候の場所で金や宝石が見つかり、物資の運搬のために同じ英連邦のアフガニスタンなどから連れてこられました。砂漠の輸送といえばラクダですからね。
 ただし19世紀末にはモータリゼーションの波が訪れお役御免に。その際、野に放たれたたった10頭ほどのラクダが野生化し、繁殖力が高いので今では150~200万頭いると言われています。

そんな野生のラクダを捕まえて飼いならし、砂漠地帯や海岸ではこんなツアーも

 さてそのラクダはなぜ害獣なのでしょうか。彼らは警戒心が強い動物で、普段は人間から身をひそめて暮らしているので、繁殖地でも野生のラクダを見る機会はなかなかありません。よってカンガルーのように農作物にダメージを与えることはあまりありません。

 でも彼らは「水」を求めて悪さをすることがときどきあります。たとえば荒野には野火などを消化するために設置された消火栓があります。非常に固い栓ですが、ラクダはものすごくアゴの力が強いので開けることができます。

つぶらな瞳をしていますが、やはりアゴは強そうですね

 それでも水を飲んだあときちんと閉めてくれれば問題はないのですが……動物にそれを求めるのは無理な話。栓を開けたら開けっ放し。つまりは水が流れっぱなしになります。

狂暴化して人間の集落を襲うことも

 さらにひどいのは干ばつが続いて彼らの水飲み場が干上がってしまうと、飲み水を求めて人間の集落を集団で襲撃すること(こうした集落は荒野にあり水道はないので、家の屋根などに降った水を巨大な雨水タンクにためて使用します)。

雨水タンク。直径数メートルという巨大なものもあります

 人間だけでなくラクダも脱水症状になれば死に至ることもありますから、彼らも必死です。まるで暴徒のように狂暴化するそうです。
 カンガルーにしてもラクダにしても彼らに悪気はなく、ただ自分たちが生きるためにしているだけなのに、人間にとっては「害獣」になってしまう。なかなか難しい問題です。

柳沢 有紀夫
オーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)のお世話係。


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