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住宅ファイル制度、普及加速へ

「さらなる普及が期待できる」と話す、阪井会長

 宅地建物取引士、建築士、不動産鑑定士、金融機関、防蟻・瑕疵保険等々の専門家などで構成する「近畿不動産活性化協議会」(大阪市淀川区、会長:阪井一仁氏((一社)大阪府宅地建物取引業協会会長))は11月1日、同会が先導して進めている「住宅ファイル制度」が2017年度グッドデザイン賞を受賞したことを記念し、感謝の集いを開催した。

 同制度は、2015年11月に提供開始。建物診断やシロアリ検査の報告書を基に既存住宅の経済的残存耐用年数を把握し、住宅の適正価格を示す仕組み。(1)住宅ファイル価格報告書、(2)物件明細書 、(3)建物診断報告書(インスペクション)、(4)シロアリ検査報告書を「住宅ファイル報告書」として一冊にとりまとめ、長期修繕計画書や修繕工事の見積書とともに依頼者に交付しており、これら一切の資料を住宅履歴書として保存する。同会メンバーである関西アーバン銀行では、同制度における評価額を採用。従来の属人的なものではなく、物件の残存耐用年数に対する住宅ローン融資が行なっている。北海道や岩手など、他の既存住宅流通促進団体における同制度の採用や検討も進んでいる。

 今回の受賞では、「これまで不動産業界にはなかった仕様書という客観的な評価に基づく伝達手段を既存住宅に取り入れることによって、情報の見える化となり不透明感が払拭される」「売り手・買い手の双方にとって不安が軽減し納得感が増すことはもとより、人生設計や生き方の変革にも影響が及び、社会的に有益な取り組み」「住宅ファイルを作成するプロセスには、分野をまたいだ複数の専門技術によるデータの収集分析が必要となるが、とりまとめ窓口の一本化、表現の統一を的確に行ない、利用者にとって伝わりやすい」などといった点が評価された。

 今後は、11月14日に不動産の買取再販事業に適したバージョンをリリース。同日開催の説明会には、現時点で定員(400人)以上の申し込みがあり、締め切っている状況。これまでの同制度の実行件数は数十件にとどまるものの、集いの席で阪井会長は、「インスペクション関連の宅建業法改正による関心の高まりを感じており、潮目は大きく変わってきている。来年はさらなる普及が見込め、件数も増えるだろう」と述べた。


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