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ESG投資、日本としての社会課題認識を

各委員からの発表を中心に基本的な考え方の方向性について議論した

 国土交通省は25日、「ESG不動産投資のあり方検討会」(座長:中川雅之日本大学経済学部教授)の2回目となる会合を開いた。

 人口減少・少子高齢化、地球温暖化等の諸問題に対応した不動産市場を形成するために、ESG(環境、気候変動・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)に沿った中長期的な投資を呼び込む必要性が高まっていることから、その環境整備のために設置した検討会。2月に1回目の会合を開いた。

 今回は、「基本的な考え方」と「取り組みの方向性」について、委員等が発表。国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)の日本ネットワーク・コーディネーターの野村香織委員は、国連としての基本的な考え方を紹介。社会的効果と財務リターンを両立するインパクト投資の必要性と、それを呼び込むための事業性の確保が重要になると語った。

 オブザーバーの(一社)不動産証券化協会からは専務理事の内藤伸浩氏が出席。同協会が実施した機関投資家アンケートの結果等を紹介、ESG投資の認知度向上や長期的な運用パフォーマンスの低下等の懸念を解決すべきと指摘した。

 その後、「分野別の取り組み」として、田辺新一委員(早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科教授)が「オフィスビルの環境性能とウェルネス」と題して、環境不動産の不動産価値や、建物を利用者の健康の観点から認証する米国の制度等を解説した。また、大久保 敏弘委員(慶應義塾大学経済学部教授)が、阪神・淡路大震災や東日本大震災による企業生産性や地域経済へのダメージ等について紹介した。

 これらに対して委員からは「ESG投資やSDGsに対しては、日本としての解決すべき社会課題をどう設定するかが重要。政府が方向性を定め、業界団体などと共有してもらいたい」「ESGの『E(環境、気候変動)』は世界共通の課題だが、『S(社会)』については、ローカルな視点で考えなくてはならない」「これまでの投資判断基準は『リスク』と『リターン』のみだったが、これからは『社会的にポジティブなインパクト』という第3の判断基準が出てくることになる」などといった意見が出された。

 次回の会合は5月28日に行なわれる予定。


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