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ESG投資、機関投資家に向けた情報開示を

 国土交通省は28日、「ESG不動産投資のあり方検討会」(座長:中川雅之日本大学経済学部教授)の3回目となる会合を開いた。

 人口減少・少子高齢化、地球温暖化等の諸問題に対応した不動産市場を形成するために、ESG(環境、気候変動・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)に沿った中長期的な投資を呼び込む必要性が高まっていることから、その環境整備のために設置した検討会。

 今回は、「分野別の取り組み」として、中島直人委員(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授)が「公共空間整備が地域に与える経済的効果」をテーマに、ニューヨーク市における街路空間再編とその効果測定の試みについて紹介。続いて、外部有識者として新生銀行ヘルスケアファイナンス部の藤村 隆氏が、ヘルスケア不動産に対するESG投資について、収益性やメリット・デメリット、リスクプレミアムなどについて解説した。

 また、中間とりまとめの骨子案についても示した。骨子案では、機関投資家等のESG投資する側の動向、あり方を中心としつつ、ESG不動産開発をする事業者側のあり方も検討することを前提に、ESG投資の推進に向けた基本的な考え方を提示。
 短期的なリスク・リターンの二軸を最優先する投資から、中長期的な投資リターンや不動産価値の向上をも意識した投資に向け、各主体の自主的な対応を引き出すことが重要とし、資産が生み出す価値を基本に投資が行なわれるようになることが望ましいなどとした。
 取り組みの方向性の大枠として、各企業の情報開示、ガバナンスのあり方、調査研究・実例の蓄積および企業等による情報発信などの項目も挙げられた。

 これらに対して委員やオブザーバーからは「公と私の関係をはっきりさせた方がいい。環境問題や少子高齢化など、国の財政、政策だけではできないことを市場化するといった部分にも触れるべき」「情報開示のあり方については、機関投資家サイドの意見も聞くことが必要」「ESGを見える化するには、経済学的に分析するための各省庁の統計データを横断的に分析できる仕組みなどが求められる」「数値化するには、指標となる情報が必要だが、取得できる情報に限りがあり、また事業者側が開示できる情報にも限りがある」などといった意見が出された。


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