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2050年までの国土を描き、長期的な課題を整理

 国土交通省は27日、国土審議会計画推進部会において「国土の長期展望専門委員会」(委員長:増田寛也氏/東京大学公共政策大学院客員教授)を開催した。

 同委員会では、人口減少の進行や急速な少子高齢化、自然災害の激甚化・頻発化など、昨今の国土を取り巻く状況変化を踏まえ、2050年までに国土や人々の暮らしがどのように変化しているかを調査・分析し、今度の国土づくりの方向性について議論を行なう。第2回となる今回は、国土に係る状況変化として、「世界の中の日本」「地球環境問題」「自然災害リスクの増大」等を主要な論点に報告、議論がなされた。

 将来の国土の姿として、世界の中の日本では「世界における日本の相対的位置づけの変化(GDP、技術等)」「資源獲得競争の激化(食料、水、エネルギー等)」「デジタル・プラットフォーマーの成長」について、地球環境問題では「気候の変化(気温上昇、海面上昇等)による、自然環境や農林水産業等社会経済・国民生活への影響」「脱炭素社会の実現」について、自然災害リスクの増大では「大規模地震等の切迫性」「水害・土砂災害の激甚化・頻発化」「災害リスクの増加とリスクの高い地域での世帯数の増加」について報告した。

 50年における国土を取り巻く主な課題として、世界の中の日本では「国際競争力の維持・強化」「国の国土・資源等の安全の確保」を、地球環境問題では「気候変動による国民生活への影響」「脱炭素社会の実現」を、自然災害リスクの増大に関しては、「災害が発生した場合でも持続可能な国・地域づくり」「災害リスクが高い地域の世帯が増加するとの想定への対処(コンパクトシティの形成、保険制度の活用等)」などが提示された。

 委員からは、「国土を何にどれくらい使うべきか、能動的に、この年はこう使うなど、戦略的に考えていくことが必要」といった全体的な指摘がなされ、「(国際競争力の強化に向けたイノベーション創出について)イノベーションの質の問題をきちんと捉える必要がある。日本は特許数の多さに対し市場化の速度が劣る。市場化の速度を上げ、イノベーションを社会に実装していくための制度を考えていくべき」「新しいイノベーションを生み出していくために、都市圏レベルで産学連携を促さないといけない」「(自然災害リスクの増大に関し)どこまでやるかより、どういうリスクがあるのか、高齢化が進む都市部でどういうリスクがあるのかを見極めていくことが大事」「今後ますます単身高齢者世帯が増加し、匿名社会が進んでいく。そうした状況での自助、共助についてどう対応するか」「森林と水害の関係について、一方では国土の保全であり、別の面で災害を起こす可能性につながることもある。多面的に見ていかないと答えは出せない」といったさまざまな意見が出された。 


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