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社整審小委、「長期優良」「安心R」見直しへ

 社会資本整備審議会住宅宅地分科会と同審議会建築分科会との共管による「既存住宅流通市場活性化のための優良な住宅ストックの形成及び消費者保護の充実に関する小委員会」(委員長:深尾精一氏(首都大学東京名誉教授))の初会合が、22日オンラインで開催された。

 既存住宅流通市場のさらなる活性化のため、制度創設から10年を超えた長期優良住宅制度、住宅性能表示制度および住宅瑕疵担保履行制度、安心R住宅制度の見直しの方向性を示し、既存住宅流通量のさらなる増加を目指す。冒頭挨拶した同省住宅局長の和田信貴氏は「最終的な法律改正も踏まえさまざまな論点から議論していただき、既存住宅流通量を増やすきっかけとしたい」と抱負を述べた。

 初会合では、事務局がそれぞれの制度の現状の課題と見直しの論点を示し、委員が意見を交わした。長期優良住宅制度では、認定戸数の伸びない共同住宅の認定増を図るため、認定基準の合理化、民間審査機関の活用や住宅表示制度との連携などを挙げた。賃貸住宅などより幅広いニーズに対応するために認定水準を2段階とすることや、既存住宅の認定は増改築を伴わないと認められないため、建築行為を伴わない認定制度の創設も検討課題とした。また、頻発する災害に対応すべく、ハザードエリアの建物については認定から除外することも検討すべきとした。

 円滑な既存住宅取引に向け、安心R住宅制度の見直しや2号保険(リフォーム瑕疵保険・既存住宅売買瑕疵保険等)の普及、既存住宅状況調査方法基準の合理化等により、既存住宅ストックからの「眠れる優良資産」の掘り起こし、既存住宅取引のより一層の安心の付与を図るとした。特に、2018年4月の制度開始(標章使用開始)から2,690件(20年3月末時点)の流通にとどまっている安心R住宅については、より消費者への訴求を高めるため、インスペクションの状況、瑕疵保険加入の有無、住宅履歴の有無、住宅性能表示や長期優良住宅認定といった性能に関する事項を標章に併記する案が示された。

 住宅瑕疵担保履行制度については、住宅紛争処理制度への2号保険の加入住宅の追加や、紛争処理の間に瑕疵担保責任期間が切れてしまういわゆる「消滅時効」を防ぐための時効の完成猶予効の付与などを論点として挙げた。

 委員からは、複雑な制度設計が消費者だけでなく事業者の理解も阻害しているとして、よりシンプルな制度設計を求める意見や、ユーザーニーズの多様化に向けた長期優良住宅の面積要件や安心R住宅制度におけるリフォーム要件の見直し等の意見が挙げられた。

 同委員会は12月14日開催の次回会合で、とりまとめ案について審議。パブリックコメントを経て、21年1月の会合の後、とりまとめを住宅宅地分科会・建築分科会に報告する。


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