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横浜の郊外大規模団地でモビリティ実証実験

「WHILL」で移動する住民。狭い通路でも余裕を持って通行でき、操作も簡単で乗り心地も良いと好評だ

 大和ハウス工業(株)は30日、大規模住宅団地「上郷ネオポリス」(横浜市栄区、総戸数868戸)において、新たなタウンモビリティを活用した実証実験を開始した。横浜市との共同事業で、経済産業省の「電動車いす等安全対策・普及推進事業」に採択されている。

 同団地は1970年に開発を開始。JR「港南台」駅からバス18分という、郊外大規模住宅団地。横浜市全体の高齢化率が25%弱なのに対して、同団地は約50%と同市内でも突出して高い。同社は、自治会らと共に「上郷ネオポリスまちづくり協議会」を設置し、コミュニティ拠点兼コンビニエンスストアの「野七里テラス」の開業や移動販売車の運行、コミュニティイベント支援など、さまざまな側面から団地再生の支援を行なっている。

 2017年に協議会が行なった全戸住民意識調査によると、まちづくりに関する関心事として、「交通の便」「買い物の便」を挙げる声が多かった。また、住み替えたいという住民に対してその理由を聞くと、「買い物や通院、通勤や通学に不便」という回答が過半となるなど、住民の移動手段の整備が最重要課題となっている。「バス停までたどり着くことができれば、広域移動が可能になる。自宅とバス停を結ぶ『ラストワンマイル』の移動手段としてモビリティを導入することで、高齢になっても住み続けられるまちづくりにつなげる」(同社ヒューマン・ケア事業推進部副理事・瓜坂和昭氏)。

 実証実験は11月20日まで。横浜市のベンチャー企業WHILL(株)が開発した近距離モビリティ「WHILL(ウィル)」13台を使用する。同機種は最高速度は時速6km(今回の実験では時速4kmまで)、最大荷重115kg、5cmまでの段差ならば乗り越えられる。65歳以上の住民10人に無償レンタルし、GPSで従来の行動とモビリティがある場合の行動の違いを調査する。また、野七里テラスでのお茶会イベント等を開催するなどして「出かける動機」づくりも行なっていく。

 これに加えて3台をシェアリング用として野七里テラスに設置。誰もが利用できるようにして、利用ニーズ等の把握につなげる。瓜坂氏は「高齢者だけでなく、妊婦やけがをした若者など、さまざまな人の利用を想定している」と話す。

 同社と横浜市、協議会ではそれぞれ、将来的な本格導入を目指しており、実証実験で得られた知見を今後のまちづくりにフィードバックしていく方針だ。


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