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住生活基本計画見直しに向け中間とりまとめ

 国土交通省は9日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会(分科会長:中井検裕氏(東京工業大学環境・社会理工学院長))で議論してきた、住生活基本計画見直しに係る中間とりまとめを発表した。

 2016年3月に閣議決定された「住生活基本計画(全国計画)」は、おおむね5年後に計画を見直すこととされている。同分科会は、新たな「住生活基本計画(全国計画)」の策定に向け、19年9月から10回にわたる議論を行ない、見直しに向けての課題や検討の方向性等を中間とりまとめとして整理したもの。今後の住宅政策の課題を「居住者」「ストック」「地域・まちづくり」3つの視点と12の項目に整理。項目ごとに検討の方向性と具体的な施策のイメージ、新たな指標のイメージを示した。

 居住者の視点では、職住近接や職育近接など子育てしやすい居住環境の実現に向けた子育て支援施設やコワーキングスペースの設置、セーフティネット住宅のさらなる普及など住宅確保要配慮者が安心して暮らせる居住環境の整備、ライフステージに応じた住み替えが可能となる環境整備など多様な住民や世代が安心して暮らせる地域共生社会づくりなどが検討の方向性として盛り込まれた。

 地域・まちづくりの視点では、災害に強い住まいの実現、災害の危険性が高いエリアから安全なエリアへの住宅立地の誘導、速やかな住まいの確保による被災地の復旧・復興、住宅・住宅団地のレジリエンス機能の向上などをあげた。

 ストックの視点では、将来世代に継承できる良質な住宅ストックの形成、良質な住宅ストックが市場で評価され循環するシステムの構築、魅力の向上や長寿命化に資する既存住宅のリフォーム・リノベーションや建て替えの推進、空き家の状況に応じた適切な管理・再生・活用・除却の一体的推進を挙げ、買取再販やリースバック・リバースモーゲージの活用による資産としての住宅の利活用、民間賃貸住宅の計画的な管理・修繕の実施の促進、官民が連携した空き家の発生の効果的予防、立地面でも優れた「使える空き家」の多様な利用といった方向性を示した。
 また、居住者の利便性や豊かさを向上させる住生活産業の発展に向けた検討の方向性として、既存住宅の管理・売買や居住者の安全・安心・健康の維持に資するサービス、二地域居住や多拠点居住といった多様な住まい方を実現するサービスの充実、地域経済を支える住宅産業の担い手の確保による良質で安全な住宅供給体制の整備、IoT を活用した生活支援・見守り支援など住生活関連産業のリモート化・デジタル化の実現などを挙げた。

 これら施策の達成度合いを測る新たな成果指標のイメージとして「子育て支援や職住近接に関する指標」「高齢期に備えた早期のバリアフリー化に関する指標」「セーフティネットや居住支援に関する指標」「密集市街地における地域防災力の向上に関する指標」「住宅の省エネルギー性能の表示に関する指標」「質の高い買取再販住宅の流通に関する指標」「マンション管理の適正化に関する指標」「危険な空き家の除却実績に関する指標」などを挙げた。

 今後は、テレワークや在宅勤務の拡大など、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機とした働き方やライフスタイルの変化も踏まえながら具体的な検討を進め、21年3月の新たな「住生活基本計画(全国計画)」策定を目指す。


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