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東京一極集中是正、地方の修学・就業環境整備等が課題

 国土交通省は11月30日、国土審議会計画推進部会国土の長期展望専門委員会(委員長:増田寛也東京大学公共政策大学院客員教授)の10回目となる会合を開催。中間とりまとめで「真の豊かさ」を実感できる国土形成における課題として挙げた「東京一極集中」の是正方策について議論した。

 会合では、東京一極集中の要因として(1)大学数の東京圏への偏在、大企業本社の東京集中、賃金の高さなどを背景とした修学・就職等のための若年層の流入、(2)利便性やレジャー・娯楽を求めた流入、(3)子供の教育環境や地方での「職務限定職員」の希望とギャップなど移住しにくい環境などを挙げ、人口減少による東京圏の過密度低下や高齢者増加による介護職の求職増がさらに若者を呼び寄せるといった要素が、一極集中を促進しかねないとした。一方、「豊かさの価値観」を示すデータとして、東京都は可処分所得は全国平均3位と高いものの、基礎支出(食住関連の支出)も最も高く中間層は経済的に決して豊かではないこと、フルタイム雇用者の平均可処分時間は首都圏一都三県がいずれも低水準であることなどが示された。

 これらを踏まえ、東京一極集中を是正するための方策として、(1)地方大学の競争力強化、産学連携等による地域の特性をいかしたイノベーション創出、ベンチャー企業進出による賃金を上げる取り組みなど、地方で修学・就職できる環境の整備、(2)デジタルメリットの享受を含めた地方の生活環境の向上、(3)東京とそん色ない教育を受けられる環境の整備、高齢者への地方居住の選択肢の提供など、ライフステージに応じた地方居住が選択可能となる社会の実現、(4)情報通信基盤の整備、デジタル化の推進、企業の人事制度の見直し、リアルで移動する際の利便性向上など、東京都心の仕事をリモートで東京郊外や地方で行なう取り組みの推進、などを挙げた。

 委員からは、「最初に就職した企業を辞める若者は一定数要る。地方自治体が都心の若者と常にコミュニケーションし、こうした若者を地域に呼び戻す努力を」「自治体が通勤通学補助を出すなど、都心に出ないでいい制度を設けたらどうか」「情報インフラや交通インフラの整備で郊外居住やテレワークを加速させるべき」「コロナインパクトをよい契機として、生活や働き方を一気に変えるべき」「地方でも幸せになれると気づいた若者が増えている。この流れを増幅していくべき」などの意見が寄せられた。


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