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公共交通の課題は”公共性の低下”/地公研

 (一財)地域公共交通総合研究所は2日、『地域モビリティの再構築』(薫風社)の出版を記念し、「第7回 地域公共交通総合研究所オンライン・シンポジウム 〜危機に瀕する公共交通再生の道を示す!〜」をオンラインで開催した。

 国土交通省総合政策局交通政策課長の阿部竜矢氏は、人口構成の変化等、公共交通に影響するデータを解説。「2050年の日本の総人口は約1億人となり、1965年からほぼ変化しないものの、生産年齢人口は全人口の約7割から5割に減少している。高齢者率が高まり、その移動に対するニーズが上昇する」とした。一方で、現在公共交通機関の輸送人員(利用者数)は地方部において長期的な低落傾向にあり、「バス」は2008~17年にかけては約1万3,249kmの路線が、「鉄軌道」は00~20年までで44路線が廃止されている。新型コロナウイルス感染症の影響も大きく、路線バスの輸送人員は20年4・5月は前年同月比から半減。高速バスや貸し切りバス等も需要の減少が著しく、また、地方鉄道事業者の3割は輸送人員が3割減している状況だとした。
 また、5月28日に閣議決定された「第2次交通政策基本計画」(令和3~7年度)の概要を説明。「まちづくりと連携した地域構造のコンパクト・プラス・ネットワーク化の推進」や「地域が自らデザインする、持続可能で、多様かつ質の高いモビリティの実現」等の目標達成に向け、需要縮小による公共交通事業者の経営悪化や人手不足、モビリティ分野におけるデジタル化の遅れ等の諸課題に対応していくとした。

 鼎談「地域モビリティの再構築」には、経営共創基盤 IGPI グループ会長兼日本共創プラットフォーム代表取締役社長の冨山和彦氏、富山市前市長兼富山大学客員教授兼非常勤講師兼DBJ 特任顧問の森 雅志氏、同研究所理事長で両備グループ代表の小嶋光信氏が登壇。小嶋氏が、「現在の公共交通の課題」について問うと、「当然路線によって赤字になるエリア、黒字になるエリアがある。事業者は“交通は公共財”として捉え運営を試みるが、やはり民間事業者がその赤字を負担するのは厳しい。各路線で採算をとるという考え方をやめ、負担を分け合えるような工夫が必要なのではないか」(森氏)、「規制緩和等により新規参入者が増加したことで、料金の引き下げ等目先のユーザーニーズに応えるための競争が起きている。しかしそれで事業者の体力が奪われれば、高齢化が進み公共交通の利用者が増加した頃にプレイヤーがいないという事態に陥る。長期的な視点での利用者の利益を考えるべき」(冨山氏)といった意見が述べられた。


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