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地方創生のカギは「寛容性」/LIFULL総研

 LIFULL HOME’S総研は15日、研究報告書「地方創生のファクターX~寛容と幸福の地方論~」の発表会をオンライン開催した。

 地方創生を活性化させる施策として重視されてきた“地方移住”において、現在、国は「起業支援金」や「移住支援金」など、直接的な金銭補助を通じた移住策を行なっている。今回、同研究所はそうした「経済力」とは別の観点から地方創生に必要な要素“ファクターX”があると仮定。47都道府県を対象に独自のアンケート調査を実施し、その結果を同報告書にまとめた。

 調査結果によると、一人ひとりの価値観や生き方の違いを尊重し自由主義的な風潮を意味する「地域の寛容性」が、今後の地方創生議論において重要な指標となることが分かった。併せて、その地域における寛容性が高いほど、その地域はUターン意向も高くなる傾向にあると判明。さらに、寛容性は地域からの移住者をその地域に定着させることにも大きな効果を持つという結果に。その寛容度を高めるためには、アートやエンターテインメントなどの“文化・芸術”に触れる機会を増やすことも重要であるとした。

 2008年から始まった「ふるさと納税」制度にも着目。同研究所の調査で、東京圏在住の地方出身の若者に出身地への関わりを尋ねると、「ふるさと納税」を実施する割合は約6割に。関心の高さがうかがえたが、今回の調査で、Uターン意向と「ふるさと納税」や「まちおこしプロジェクトの参加」には相関関係が弱く、Uターン促進にはつながりにくいことが明らかとなった。
 一方で、「二拠点生活」「ワーケーション」などの「住む」を伴うアクションは、Uターン意向と強い相関関係が見られた。Uターン促進に効果的な戦略は、そうした「お試し移住」であるとしている。

 同研究所所長の島原万丈氏は、「昨今、社会的な関心の高いジェンダーフリーやマイノリティの包摂など、個人のあり方の自由や権利に対する地方の『寛容性の低さ』が、地方から東京圏への人口移動を促進している。今後の地方創生政策においては、地域社会の寛容性を重要な指標として設定し、これを高める施策を戦略的に打ち出す必要があると言える」と話した。


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