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JREITの外部成長、投資口価格の下落等で困難に

 三菱UFJ信託銀行(株)不動産コンサルティング部は30日、JREITの不動産取引についてのレポートを発表した。

 JREITの不動産取引は投資市場の約3割を占めているが、2022年1~9月の取得は前年同期比50.3%減の約5,760億円、譲渡は32.4%減の約2,061億円と、特に取得取引が大幅に減少した。その直接的原因として公募増資等のエクイティ資金の調達が減少していると指摘。22年1~9月のエクイティ資金の調達は前年同期比53.9%減少の1,686億円で、特に4~6月期、7~9月期にエクイティ資金の調達が行なわれていないことが確認できた。

 また、運用環境についても投資口価格の下落と不動産投資市場の利回り低下がJREITの外部成長を困難にしているとした。東証REIT指数は、ロシア・ウクライナ情勢の変化による市場の不確実性の高まりや、世界的なインフレと利上げの動き等によって、コロナ禍前を下回る水準で推移。一方で、不動産投資市場では、コロナ禍以降はキャップレートの低下傾向が継続。コロナ禍の影響が軽微・ないしは追い風となった物流施設・住宅についてはキャップレートが低下した。21年度下期からは、投資ニーズの高まりで空室率上昇などが懸念されていたオフィスもキャップレートが低下した。

 レポートでは、JREIT投資家にとって望ましい外部成長は難しい環境下で、JREITのスポンサーからの取得割合が増える傾向が見られると指摘。JREITが行なったオフィスの不動産取引をスポンサー・非スポンサーに分類すると、スポンサーからの取得割合は19年の67.7%から22年は82.2%まで上昇。不動産市場から直接取得する難易度が高いため、スポンサーが物件を拠出している傾向が見て取れた。

 同社はこの傾向について「スポンサーとしては、JREITを継続的に成長させたいというインセンティブが働く。必ずしも短期での不動産売却損益の大小だけで不動産を譲渡していないため、結果としてスポンサーからの取得割合が上昇している」などと分析。「足許の投資口価格の推移を踏まえても、スポンサーからの不動産取得が中心となる構図に当面変化はない」とした。


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