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世界の都市総合力、東京はグローバル人材・外国資本誘引が必要

 (一財)森記念財団 都市戦略研究所は14日、「世界の都市総合力ランキング(Global Power City Index)2022」を発表した。

 同ランキングは、世界の主要48都市を選定し、都市の力を表す「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」における70の指標に基づき評価している。今回が15回目。

 総合トップはロンドン(スコア1,592.4)、以下、2位がニューヨーク(スコア1,505.9)、3位東京(スコア1,367.2)、4位パリ(スコア1,356.9)、5位シンガポール(スコア1,233.8)となった。トップ5都市の順位に変化はなかったものの、ニューヨークがロンドンを追い上げ、東京がトップ争いから外れて、パリにほぼ同水準まで詰め寄られる結果となっている。

 今回のランキングでは、コロナ禍に対する対応の違い、特に外国人観光客の受入再開状況や航空便の運航本数の回復度合いなどが影響した。上位15都市では、ドバイ(11位)が外国人訪問者数の受け入れ再開で評価を上げた一方で、ロンドン、東京、シンガポールは国際的な人の往来の抑制で評価を下げた。

 東京は、分野別でみると全6分野のうち4分野(「経済」「文化・交流」「居住」「交通・アクセス」)で順位が下落し、「環境」のみ順位が上昇。5年前との偏差値の比較から見た東京の強み・弱みを分析した結果、現状の東京の懸念点は「国際競争力の維持・向上」となり、「GDP」「トップ企業数・研究者の評価」「買い物・飲食店の魅力・数」などがポイントとして挙げられた。現在はGDPの大きさ、従業者数の集積度合いは継続して強いが、今後その強みを維持できるかが課題。また、トップ企業数や研究者の評価は低下傾向にあり、さらに都市を愉しむ要素となる買い物・飲食店の魅力と数が低下している。

 こうした傾向が進む場合、グローバル人材・外国資本誘引のための効果的な対策が必要とみられるため、今後の重点課題として、法人税の高さ、人材不足、行政手続き、規制・許可認可制度の改善といった「外国資本の参入障壁の解消」、多言語化・インターナショナルスクール等の環境整備など「留学生・外国人の暮らしやすさ」、そのほか「働き方の多様化」が求められるとしている。

 同研究所所長の竹中平蔵氏は、「ランキング開始当初4位だった東京は、その後パリを抜いて3位となった。ところが今回、東京がスコアを大幅に下げたことで、パリに肉薄されている。今回の指標には、日本経済衰退の中、がんばってきた東京の後退が見え始めてきた状況が現れている。個人的には、その背景として、コロナ禍に対するポリシーミステイクス(政策の誤り)がじわじわと影響してきているのではないかと感じている」などと述べた。

 同財団理事で明治大学名誉教授の市川宏雄氏は、これからの東京がいち早く力を入れる分野として、パワーダウンしている『経済』、『文化・交流』を挙げ、「『経済』では、国際金融都市となるべく、国全体のテーマとして海外からの投資を呼び込む施策、グローバル人材の獲得などが必要。また、『文化・交流』では、国際空港の整備、ナイトタイムエコノミーの活性化などによる国際的な観光客の呼び込みにもっと力を入れるべき」などと話した。


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