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宅建事業者の事業承継、課題を抽出/全宅連

 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会は、「中小宅建業者の事業承継問題等に関する勉強会」(座長:大川孝之氏〈深沢綜合法律事務所〉)をとりまとめ、5月31日に開いた理事会で報告した。

 同勉強会は、高齢化・後継者不足で廃業する中小宅建業者の増加が会員数減少の一因になっていることや、大手企業による中小不動産業者のM&Aが活発になっており、地元への売上還元や雇用機会の面で問題がある可能性があることなどを背景に設置された。会員事業者向けのアンケートや、明海大学不動産学部で学ぶ学生向けのアンケートを事前に行ない、その結果を受けて2022年11月以降4回にわたって勉強会を開き、実態把握や課題抽出を行なった。

 会員向け業務支援サイト「ハトサポ」を利用する会員向けに実施したアンケート(サンプル数:2,970件)によると、事業承継について「自分の代で廃業するつもり」が31%、「まだ考えていない」が37%、「承継するつもり」が32%と、回答が分かれた。引き継ぐ上での苦労では、「顧客との関係維持」が36%、「資金準備・税金対策」34%、「経営スキル等の不足」34%となった。

 また、廃業を考える理由について聞いたところ、「子供に承継の意思がない」が26%、「適当な後継者がいない」24%となった。ただし、学生向けアンケート(サンプル数:325件)では、親が不動産会社の経営者である学生で「継ぎたくない」とした人は10%にとどまった。その理由で最も多かったのが「不動産関係の仕事はしたいが親の会社に魅力がない」が50%となり、「後継者が事業を継ぎたくなるような魅力ある企業・業界にならなくてはいけない」と報告書で言及した。

 個社が取り組むべき課題について、「人(経営)の承継」と「組織の整備」に分けて課題を整理。人の承継については、親族・従業員・社外の第三者といった「誰に」引き継ぐかを考えた上で、当事者同士の意思疎通と同時に役員・従業員・顧客・取引先・金融機関に理解を求めること等が重要だとした。組織整備については、経営ビジョンの構築と社内共有、業績の改善、不要資産の処分、個人補償・担保の把握と解消方法の確認等を掲げ、信頼できる専門家の確保が重要であると指摘している。

 その上で全宅連では、6月中をめどに「宅建業者のための事業承継ガイドブック」を発刊する予定。「一定規模がまだ承継について考えていないということが分かった。早期に考えるように促す意味でも、参考にしてもらいたい」(全宅連事務局)。今後は、会員向けの勉強会やセミナー、手続きマニュアルの作成、相談・マッチングプラットフォームの構築などの検討を進めていくという。


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