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日本のリテール市場、ハイブランドの出店は継続/C&W

 クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(株)(C&W)は6日、2023年第1四半期の「日本リテール・マーケットビート」を発表した。

 経済面では、欧米の利上げや銀行貸出厳格化の影響が強まりつつあるものの、高インフレの影響は徐々にピークアウトしているとした。しかし、価格転嫁が遅れがちなサービス価格のインフレ圧力は残存しており、23年度の世界経済はプラス2.4%の低成長にとどまる見通しとなっている。こうした対外要因の低迷をインバウンド消費やサービス消費の回復が押し返し、日本の実質GDP期待成長率は23年度はプラス1.2%、24年度はプラス0.9%の成長を維持する見通しとしている。

 雇用動向をみると、宿泊、飲食サービス業、非正規職員数・65歳以上の高齢者等を中心に3月の全国雇用者数は13ヵ月連続で増加し6,036万人に。一方、自己都合による離職の増加から完全失業率(季節調整値)は2.8%と0.3pp.上昇した。勤労世帯の四半期実収入をみると、賃上げの遅れ等を背景に、前年同期2.3%減と減額幅が0.8pp.拡大した。

 需給については、小売販売高が外出機会の増加や飲食料品の単価上昇を受けて、前年同期比6.5%増加。しかし、品目別消費者物価上昇率で調整した実質消費ベースでみればほぼ横ばいとなった。新規開発案件については、東急(株)が主導する渋谷桜丘口再開発事業として「渋谷サクラステージ」が23年11月に開業予定。三井不動産(株)が主導する晴海フラッグのライフスタイル型商業施設となる三井ショッピングパーク「ららテラスHARUMI FLAG」は24年春に開業する。

 新規出店および移転動向をみると、ハイブランドの出店需要は継続。当期は前四半期に比べて目立った賃料変動はみられなかったが、銀座、表参道、心斎橋等ではプライム賃料の上昇が全体の賃料水準を底上げしつつある。地方都市モールではエリア初となるマスブランドの出店が相次いでいる。全体的には消費パターンの構造的変化を反映した抜本的なテナント入れ替わりの増加、うち上位テナントの入替えが継続する銀座、表参道、心斎橋についてはプライム賃料の緩やかな上昇を予想している。

 売買動向については、資本コストの上昇を背景に全体の取引高は減少傾向ではあるものの、年度末を控えて事業会社の売りが活発だった。当期まで年間商業施設売買取引高は前年比17%減の約5,458億円。商業施設のタイプ別にみると、築古の都心型商業施設において収益力低下を懸念した売却需要が増加。投資家の属性としては、引き続き海外投資家の売り需要が旺盛だが、大半は小型取引に成約に収まっている。


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