不動産ニュース / その他

2024/4/5

“住宅弱者”を見捨てない!

 高齢者や低額所得者、障がい者といった住宅確保要配慮者(以下、「住宅弱者」)の中には、そもそも住宅の確保が難しく、さらに住宅を見つけた後もそこで安定した生活を営むためのサポートが不可欠なケースが少なくない。このような住宅弱者に対し、相談から住まいの確保、入居後の一貫したサポートを提供する不動産事業者が見られる。

 神奈川県座間市を中心に賃貸仲介、管理等を手掛ける(株)プライム(神奈川県座間市、代表取締役:石塚 恵氏)は、高齢者を「絶対に見捨てない」をモットーに活動を展開している。
 2012年に開業する以前、母親の介護をきっかけに、高齢者や生活困窮者の住まい・生活サポートを行なうNPO法人「ワンエイド」を11年に開設。住宅探しに窮する多くの高齢者に遭遇したことから、「自分で不動産会社を立ち上げ、高齢者に住まいを提供したい」と決意し、独立に至った。

 同社は、ワンエイドとの両輪で高齢者の居住支援を実施。ワンエイドが困窮する高齢者の相談窓口となり、同社が部屋探しをするというスタイルだ。家賃が払えない場合には生活保護を申請して滞納しないことを条件にオーナーから部屋を提供してもらい、同社が入居後の見守りも行なう。こうした取り組みを続ける中で、徐々にオーナーの理解が得られるように。「創業時は6戸からのスタートでしたが、高齢者の入居を拒まない管理物件が現在は250戸を超えています」(石塚氏)。

 豊島区北池袋周辺や板橋区、北区で賃貸仲介、管理を手掛けるあさがお不動産(株)(東京都豊島区、代表取締役:宇山大紀氏)は、母子生活支援施設を退所するDV被害者や生活保護受給者の親子などを支援している。
 配偶者の暴力から逃げてきた女性が直接店舗を訪れるケースも。こうしたケースに対応するため、同社は一般貨物自動車運送(トラック運送)許可を取得。着の身着のままで逃げたきた女性がすぐに生活できるよう、古物商許可も取得し、家具・家電、食器などを安く仕入れ、住戸に備え付けているそうだ。

 「新居を加害者や配偶者に知られることだけは避けなくてはならない。社名の入っていないトラックで引っ越しを行ない、子供が通う小学校には『広報紙に載せない』『親を名乗ってかかってきた電話は取り次がない』などをお願いしに出向く」(同社福祉・要介護住居斡旋専門相談員・早川伸也氏)という。また、母親には「郵便物の転送設定をしない」「住民票や戸籍の閲覧を制限する」といったことをアドバイスする。
 「地域の警察署やケースワーカーとの連携強化、そして自分たちの取り組みに賛同してくれるオーナーを1人でも多く増やし、DV被害者が安心して生活できる住環境を提供したい」(同氏)。

 詳細は、(株)不動産流通研究所が発行する「月刊不動産流通2024年5月号」の特集を参照。住宅弱者の部屋探しと生活サポートを行なっている上記2社を含めた5社の事例を紹介している。

記事のキーワード 一覧

この記事の用語

住宅確保要配慮者

高齢者、低額所得者、子育て世帯、障がい者、被災者等の住宅の確保に特に配慮を要する者をいう。外国人やドメスティック・バイオレンス被害者なども住宅確保要配慮者である。

続きはR.E.wordsへ

新着ムック本のご紹介

ハザードマップ活用 基礎知識

不動産会社が知っておくべき ハザードマップ活用 基礎知識
お客さまへの「安心」「安全」の提供に役立てよう! 900円+税(送料サービス)

2020年8月28日の宅建業法改正に合わせ情報を追加
ご購入はこちら
NEW

月刊不動産流通

月刊不動産流通 月刊誌 2024年5月号
住宅確保要配慮者を支援しつつオーナーにも配慮するには?
ご購入はこちら

ピックアップ書籍

ムックハザードマップ活用 基礎知識

自然災害に備え、いま必読の一冊!

価格: 990円(税込み・送料サービス)

お知らせ

2024/5/1

「海外トピックス」を更新しました。

サントスの「動く博物館」と中心街の再活性化【ブラジル】」を更新しました。

ブラジル・サンパウロ州のサントスでは、旧市街地2.8キロをめぐる「動く博物館」が人気となっている。1971年には一度廃止された路面電車を復活して観光路面電車としたものだが、なんと日本から贈られた車両も活躍しているという。